6月8日
その金ナイター
いつものように〇君に留守番を頼み、2時ちょっと過ぎに家を出る。
夕方から雨予報なので傘を持参。
ドミノピザ交差点のダイキン温度計は29℃表示で私の当たり。
ささやかながら吉兆を感じる。
きょうもK夫妻と500円の指定席へ。
新しく登場したこのワンコイン指定席はお手軽感100パーセントでとってもオススメです。
のんびり新聞を見ていると係りのHさんが来て、急きょ部屋へ移動することに。
なにか事情があったのだろう。
赤ペンやマークカードの束、新聞、お茶やお菓子などをアワテテかき集めてお引越し。
部屋へ入ってしばらくすると再びHさんがやって来て、Nに何事か説明している。
なんだろなーと思いながら耳をそばだてると、突然
「今からこちらに〇〇るえかさんがいらっしゃるそうで・・・」
(ハ?)
(るえか??)
(なんかの聞きまちがい?????)
思わずHさんを振り向くと視線が合った。
「あの・・」
「〇〇るえかさんって・・・」
「ええ。 きょうは〇〇るえかさんがこちらの部屋にいらっしゃるそうです」
な、な、なんだとーーーーーーー
ある日、宝塚駅構内の書店で文庫の棚をボンヤリ眺めていると、奇妙なタイトルに目が留まった。
『私はハロン棒になりたい』
(ハロン棒?)
(ハロンって一体なんだ??)
当時はまだ競馬を始めたばかりでハロンという言葉を知らなかったのだが、そのことばの響きに気持ちがゆれた。
しかも著者は「〇〇るえか」
見たことも聞いたこともない。
(なんだあ? るえかって・・・)
それが〇〇るえかとの初めての出会いであった。
あれからからもう10年以上、今日に至るまでほぼ毎日毎晩、私は彼女の本を枕元のバイブルとしている。
人生でこれほど夢中になったのは、中高時代に出会った遠藤周作のぐーたらシリーズと豊田正子ぐらいだろう。
豊田正子と〇〇るえか、一見似ても似つかぬ二人だが、その共通点はなんだろうと考えてみると、「日常を赤裸々に綴っていること」だろうか。
そして彼女の文章から浮かびあがる日々の暮らし方や趣味、体質というものがビックリするほど自分に似ていて(まるで逆な部分もいっぱいあるのだが)
「世の中でこれほど自分ソックリな人間がいるものだろうか!!」と、うれしくもありフシギでもあり、本当に何度読みかえしても飽きることがないのだ。
そして年月を重ねるうちだんだんと、(ああ、一度でいい、彼女の姿を見てみたい。 そしてできれば私のこの思いを伝えたい)とさえ考えるようになってきた。
現におととし1月17日の一門の日、「今年やってみたいこと」をひとりずつ述べる席で、名前は明かさなかったものの、「ずっと以前から会いたい人がいる」 「今年は勇気をだしてゼッタイその人に会いに行く!」と宣言したのだ。(結局実現できなかったが)
これに関しては覚えてる弟子もいる筈だが、まあほとんどの子は忘れてることだろう(というか、ハナっから聞いてない可能性もある)
・・・とまあ、こんな具合に激しく〇〇るえかに焦がれていた私なので、この時の驚きは大変なものであった。
私は奇声をあげながらHさんに掴みかかり、詰問し、これが夢ではないことを確認したあと
あらためて事の重大さに茫然とし、そしてジワリジワリと熱いものが込みあげてくるのだった。
「コーフンしすぎやで・・」と心配顔のNが視界に入るが自分でもどうしようもない。
その後しばらくは新聞をひらいたり閉じたり、赤ペンのキャップをキュッポンキュッポンと締めたり外したり
部屋の後ろのドアを何度も何度も振りかえったり、すでに始まっているレースもいつもとちがう景色に見える。
続く