風がヴギウギ

自由気ままな風の様に毎日を切り取っていく

親父の自作本・・・青春の詩<耳鳴り>4

2020年11月07日 | 自作本

<ある男の歌へる>1

※長いので2回に分けます※

この日 耳鳴りのはげしきを覚え

千葉へ行きました

狭い小路を入って

僕は耳鼻科の医院を見つけました

かしましく女学生の会話も耳に入らず

僕は一冊の書物を開きました・・・

船橋聖一 「徳田秋声」

”四八”といふ番号札が手の中で汗をかき始めた頃

僕の番になりました

キツ-イ薬品の臭ひを

僕の風邪引きの鼻は受付けはしませんが

鼻孔や耳へ棒を突っ込まれた時

些(いささ)かの痛みを覚えたのです

そして耳孔と鼻孔は通じてゐるんだ という事を初めての如く意識しました

何故と言って

機械を通って僕の耳の中を風がス-ス通り抜けたのですから

「痛くはないでせうね」 「ええ・・・」

こりゃ 右の耳はいけないなと思ったものです

医者は例の如く自信あり気に言ひました

「軽い中耳炎をおこしたんですね 本来なら痛むのですが・・・

あなたのは軽いですね 痕跡があるますよ

とにかくしばらく通ってごらんなさい 一日おきでも良いですから」

「一日おきにして下さい 試験で忙しいですから」

と僕は慌てて言いました

薬局の窓口で 太っちょの看護婦が 何の感動もない声で診察料を要求します

「二円三十銭です」

僕は蟇口(がまぐち)の軽くなるのを覚えました

-後半は明日-

 

※東大にいた親父が千葉に下宿をしていたのも

キャンパス迄遠いような気がするが・・・

戦争を考えれば 都心より千葉の方が安全だったのか?

いずれにしても解らない

 

船橋聖一 「徳田秋声」⇒ 調べると 舟橋と書くようです

『あらくれ会』同人になり徳田秋声の門下生となっているそうです


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1 コメント

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耳鳴り (shion)
2020-11-07 12:51:36
千葉の第二工学部に居たので船橋に住んでいたと思います。
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