経済社会コラム#12

2005年12月11日 | 経済問題
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。

銀行の好決算が意味するもの
 11月下旬に、大手銀行の9月期中間決算がまとまった。今年4月から9月までの半年間の連結最終利益は、三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそな、三井トラスト、住友信託の6グループ合計で、1兆7300億円となった。これは、前年同期の実に21倍という高水準だ。なかでも新聞各紙が大きく伝えたのは、三菱UFJの最終利益が7118億円と、トヨタを抜いて日本一になったことだ。しかし、実はもっと興味深い事実が中間決算からは浮かび上がる。それはUFJの利益だ。三菱UFJの中間決算を三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスを分けてみると、三菱東京の当期利益が3006億円であるのに対して、UFJは4110億円となっている。UFJの当期利益は三菱東京を上回るだけでなく、6グループのなかで最大になっているのだ。
 UFJが最大の利益をたたき出していることに違和感を覚えないだろうか。昨年、経営が立ち行かなくなったUFJは、三菱東京に事実上の救済合併を求めた。それからわずか1年で、なぜUFJが最大の利益をあげることになったのか。
 原因は一つしかない。不良債権費用が繰り戻しになったのだ。今回の中間決算では、三菱東京とUFJ以外は不良債権処理費用がすべてプラスになっている。つまり不良債権処理で損を出している。ところがUFJは、不良債権処理費用が3164億円ものマイナスなのだ。どういうことかと言うと、融資の焦げ付きに備えて積んでいた引当金が、不要になって繰り戻されたということだ。新聞報道では、取引先の経営状態が景気回復で改善したために、引当金の所要額が減ったということになっている。しかし、それはおかしい。もし本当にそうなら、ほかの銀行グループの不良債権処理費用もマイナスになるはずだ。そうなっていない以上、結論はひとつだ。引当金を積み過ぎていたのだ。
 中間決算発表の記者会見で三菱東京フィナンシャル・グループの畔柳社長は、引当金を積み過ぎていたのではないかという記者の指摘に対して、「検査や監査を受け、適正なプロセスでやっている。後から考えてどうこう言うのは難しい」と答えた。
 これは一体どういう意味だろう。その疑問を紐解く可能性を秘めているデータがある。要管理債権(要注意先に対する債権のうち3ヶ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権)に対する引当率(担保・保証等を加えた保全率)だ。
 UFJ銀行の03年9月期の引当率は、29.2%だった。他のメガバンクは、東京三菱が30.6%、三井住友が30.5%、みずほが35.2%と、メガバンクは共通して3割の引当金を積んでいた。ところが、UFJ銀行に金融庁が03年秋に特別検査に入った。そこでUFJ銀行が融資先の資料を隠して金融庁の検査を妨害したという検査忌避事件が発生する。その特別検査後の04年3月期には、UFJの」引当率が51.4%となり、04年9月期には54.9%まで高まった。それは、要管理債権の55%が返ってこないと見込んだ決算をしたということだ。当然、そうした膨大な引当金を積ませたのは金融庁だ。
 常識的に考えて、街金ではないのだから、担保で保全されていない融資の半分以上が返ってこないということが、銀行融資のでありうるだろうか。そんなことがあるはずがない。その証拠に、金融庁の圧力がなくなった今回の中間決算では、前期までと同じベースの資料が公表されていないので、あくまでも推定だが、UFJ銀行の要管理債権に対する引当率は36%前後にまで下がっている。要は、要管理債権に対する引当率が普通の状態に戻ったのだ。このことは、金融庁がUFJ銀行に過大な引当金を積ませてきた可能性を強く示唆していると考えてよいだろう。
大胆に推理すれば、金融庁は検査を忌避したUFJ銀行を、引当金を積み増しさせることで、追い詰めにいったのではないだろうか。
 それは善意に解釈すれば、金融再生プログラムで掲げた不良債権半減を確実に推し進めるため、悪意で解釈すれば、銀行の不良債権を二束三文で買い取りたいとするハゲタカたちと金融庁が結託して、UFJ銀行の融資先に狙いをつけたということだろう。
 いずれにせよ、UFJ銀行の「作られた」経営危機の一番の被害者は、三菱東京との統合時に不良債権処理の対象とされたダイエーに代表されるUFJの大口融資先とその従業員たちだろう。もちろん、金融庁の暴走で景気回復が遅れ、1~2年長く不況を我慢しなければならなかった国民も被害者の一人だ。
goo | コメント ( 4 ) | トラックバック ( 0 )
 
コメント
 
 
 
バブルの頃 (イズコ)
2005-12-11 16:14:25
バブルの頃、銀行は支店長自ら、顔を出し、「いくらでも、貸せるから、ビルを買え、ゴルフ会員権は、どうか」と、勧めていた。幸い貸し工場で、済ませて終わったが、家を担保の零細経営者は、中国に仕事取られて、辞めたくても辞められない。大企業の好調の裏に泣いている下請けがどれだけ多いか、でも、あの頃大金をつかんでそのままの人はあまりいない、やりすぎて身を滅ぼしたり、健康損ねたり、財産残せば相続で苦しんでいる。何より、健康が大切、先生、夢が有るのだから、気をつけてください。
 
 
 
売国の本丸 金融庁・財務省 (奇兵隊)
2005-12-11 21:12:48
>大胆に推理すれば、金融庁は検査を忌避したUFJ銀行を、引当金を積み増しさせることで、追い詰めにいったのではないだろうか。

 それは善意に解釈すれば、金融再生プログラムで掲げた不良債権半減を確実に推し進めるため、悪意で解釈すれば、銀行の不良債権を二束三文で買い取りたいとするハゲタカたちと金融庁が結託して、UFJ銀行の融資先に狙いをつけたということだろう。



 これは、間違いなく後者です。金融庁は、恣意的検査でUFJを追い込み、保有債権を二束三文で吐き出させられたと云う事になる。

 他にも金融庁は、証券取引法の解釈において、「投資ファンド」は上場企業の株式を議決権ベースで10%以上保有しても主要株主と看做されず(投資ファンドは窓口にすぎず、議決権は出資割合に応じて保有されているとの判断で)、6か月以内の短期間で売り抜けは可能との見解を示している。

 しかしながら、村上ファンドなどは議決権は一任されており、積極的に経営に介入し、高配当などの条件を飲ませて、株価が上昇するのを見計らって高値で売り抜けし、暴利を貪っている。

 TBSの株式では、さっさと売り抜けて100億円以上の鞘を抜いたと報じられている。金融庁の想定の範囲外で(実際には想定していただろうが、確信犯的に想定せずと云うところだろう)、ファンド筋は暴利を貪り、ファンド以外は短期売却の規制の網が掛かる「ダブル・スタンダード」状態を演出した。

 この様に、恣意的行政により、ハゲタカ優遇を実現する金融庁・財務省は売国の本丸である。また、日銀も同じ穴の狢である。



 
 
 
訂正 (奇兵隊)
2005-12-11 21:16:39
 訂正です。

 誤

>金融庁は、恣意的検査でUFJを追い込み、保有債権を二束三文で吐き出させられたと云う事になる。

 正

>金融庁は、恣意的検査でUFJを追い込み、保有債権を二束三文で吐き出させたと云う事になる。



 
 
 
村上ファンドについて (奇兵隊)
2005-12-11 21:24:53
 村上ファンドについて。



 nikaidou.com 経済犯科帳

 村上ファンドが仕手筋総会屋の正体現す【12/4(日)17:30】

http://www.nikaidou.com/column04.html

 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。