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ダニエル書2 (7~12)旧約聖書の黙示録

2017年07月24日 | Weblog
  ダニエル書 2 (7~12章 ) 旧約聖書の黙示録
  はじめに
 第Ⅰ部では、異教の神=偶像崇拝に対する真実の神への信仰の優越性が示されました。
 第2部では、ダニエル自身に下される幻が語られます。この中でユダヤの歴史と世界の終末及び救済が語られています。
 第Ⅰ部では、他の預言者にとって不可能な夢解きをしたダニエルでしたが、自分自身に下された幻を解き明かすことが出来ませんでした。その夢解きの手助けをしたのが天使ミカエルでありガバリエルでした。
 第2部では、ユダヤに対する周辺の大国(バビロン、メディア、ペルシャ、ギリシャ、シリアのセレオコス王朝)の支配の歴史(大艱難時代)が預言されます。この大艱難時代は、神の民イスラエルが心を尽くし、精神を尽くして神を捜し当てるために、主が意図的に定めたものだったのです。大国の迫害下、異教の神に囲まれ、偶像崇拝の強制のもと、真実の神への信仰の堅持がダニエル書のテーマとなります。天使ガバリエルはダニエルに言います「あなたの民とあなたの聖なる都については70週が定められている。それは背きを止めさせ、罪を終わらせ、咎を贖い、永遠の義をもたらし、幻と預言とを確証し、至聖所に油を注ぐためである(9:24)」と。大艱難時代は、神に誠実であるなら永遠に続くものでは無いと言っているのです。
 9章には、この大艱難時代を迎えねばならなかった霊的な必然性(神に対する反抗)が語られています(9:3~15)。ダニエルは、内の不信仰と、異教の大国の侵入と云う内外の敵を前にして、気が挫けそうになります。ダニエルは叫びます「わが主よ、この幻によって、私は苦痛に襲われて力を失いました--------私には、もはや、力も失せてしまい、息も残っていないのです(10:16~17)」と。これを憐れみ、力づけたのが神からの御使い天使ミカエルやガバリエルだったのです。「神から愛されているダニエルよ、--------私は今、あなたにつかわされたのだ(10:11)」「恐れるなダニエル、安心せよ、強くあれ、強くあれ(10:19)」「私が来たのは、あなたの言葉のためだ(10:9)」「終わりの日にあなたの民に悟らせるために来たのだ。なお、その日についての幻があるのだが(10:14)」と語ります。これらの言葉を聞いてダニエルは力を得たのです(10:19)。苦悩の彼方にある神の国が描かれています。
 12章は最終章です。ここには神のご計画の完成が語られています。神の審判が語られ、義なる者と不義なる者との行くべき道が示されます。主はダニエルに言います「あなたは終わりまで歩み、休みに入れ、あなたは時の終わりに、あなたの割り当て地に立つ(12:13)」と。
 ダニエル書で、はじめて真理の啓示者として天使(ミカエル、ガバリエル)が現れます。ダニエルは神の民=イスラエルには、認罪と悔い改めを、神に対しては憐れみと恵みとを示して下さるように祈ります。

 ダニエルの見た幻
 ダニエルはバビロンの王ペルシャツァルの御代に2つの夢を見ます。一つの夢は4つの獣(獅子=バビロン、熊=メディア・ペルシャ、豹=ギリシャ、10本の角を持つ巨大の獣=ローマ)の夢(7章)であり、第二の夢は雄羊=ペルシャ、雄やぎ=ギリシャの夢(8章)です。これらの国々は、それぞれ強大でしたが、次に起こる帝国によって滅ぼされます。イスラエルも国を失い、属領に甘んじ、苦難の道を歩みます。ギリシャはアレクサンドル大王の死後、4つの王朝に分裂します。その分裂した国の中から2つの王朝(シリア、エジプト)が勢力を増し、お互いに競い合います。シリアの王アンチオコス4世は、イスラエルでユダヤ人に対し大弾圧を行います。信仰の自由を奪い、ユダヤ教の祭日や安息日を禁じ、ユダヤ教そのものを禁じ偶像礼拝を迫ったのです。11章にはこの間の事情が克明に描かれています。イスラエルはこれに反抗し、反乱(マカベアの乱)を起し独立を勝ち取っています。しかしローマによって滅ぼされます。


 メディア国の王ダリヨスの治世の第1年、ダニエルに主のみ言葉がありエルサレムの荒廃の終わるまでの年数が70年であることをダニエルはエレミヤの文章によって知ります(7:1~2)。この70年はイスラエルの民が心を尽くし、精神を尽くして、これまでイスラエルの民が犯してきた数々の罪を認め(認罪)悔い改めて神に立ち返るための期間でした(9:4~15)。これが大艱難時代を終えるための条件だったのです。
ダニエルは顔を主に向け、断食をして、荒布を纏い、灰を被って(その実現を)主に祈ります。そして言います「私たちが御前に伏して願いを捧げるのは、私たちの正しい行いによるのではなく、あなたの大いなる、あわれみによるのです(9:18)」と。
人はもともと罪ある存在です。キリスト・イエスの十字架上の贖いによってのみ、人は救われるのです。
ダニエルが罪の町エルサレムの救いを願い、祈っているとき、天使ガバリエルが現れて言います「ダニエルよ、私は今、あなたに悟りを授けるために出て来た(悟りを授けるとは迷いを脱して真理を会得することを意味します)(9:22)」「主の み言葉を聞きわけ、その幻を悟れ(7:23)」と、いわゆる70週預言を伝えます。70週預言とはイスラエルの民がその間にそむきを止め、罪を終わらせ、咎を贖うだけでなく、その上に、永遠の義をもたらし、幻と預言とを確証し、至誠所に油を注ぐことが必要なのです。前半の3つは、背きの民イスラエルの必須事項であり、後半の3つはやがて再臨されるメシアによってのみ実現するものです。70週預言とはイスラエルの完全な回復を意味しており、終わりのときを前提としています。
この後、終末論が語られ、悪が一時的に栄えても、神によって滅ぼされ、神の御国が現れると云う預言で9章は終わっています。
「ペルシャの王クロスの第3年にダニエルに一つの言葉が啓示された。そのことばは真実で大きないくさのことであった。かれはその言葉を理解し、その幻を悟っていた(10:1)」。大きな戦いとは霊的戦いのことです。神とサタンとの戦いです。しかし、神もサタンも共に目に見えない存在です。天上における戦いは必ず、地上における戦いの中に現れるのです。4つの世界帝国(バビロン、ペルシャ、ギリシャ、ローマ)と神の民イスラエルの戦いを指します。
 小国イスラエルは帝国の前では決して勝つことは出来ません。しかし、帝国に無い最大唯一の強みはイスラエルには主が味方して、決して見捨てることが無いと云う事です。確かにイスラエルは大艱難時代を迎えました。しかし、それも70週と定められています。それは背きの民イスラエルが神に立ち返る期間なのです。天使ミカエルはダニエルに言います。「終わりの日にあなたの民に起こることを悟らせるために来たのだ。その日については幻があるのだが(10:14)」と。更に云います「真理の書にかかれていることをあなたに知らせよう。あなた方の君ミカエルの他にはわたしと共にふるい立って、彼らに立ち向かうものは一人もいない」と。100万人が敵にまわろうと神はあなたと共にある、と言っているのです。

 ダニエル書は旧約聖書の黙示録
 ダニエル書は「ヨセフの黙示録」とならんで黙示文学の一つとといわれています。黙示文学とは象徴、シンボル、サイン、啓示、例え話などを使って、暗黙のうちに作者の意図を表現する文学です。表現の自由の奪われた国ではよく使われる手法です。ダニエル書では7章8章でこの手法が使われています。バビロン、ペルシャ、ギリシャ、ローマを現すのに獅子、熊、豹、10本の角を持った獣、あるいは雄羊でペルシャを、雄やぎでギリシャを現しています。11章でも具体的な人の名は出てきません。ユダヤ人には評判の悪い、シリア人のアンティオコス4世は「一人の卑劣な者」、「横柄で狡猾なひとりの王」、イスラエルは「麗しい国」、ギリシャのアレクサンドル大王は「勇敢な王」と表現されています。それ故、黙示文学は難解だと言われています。歴史を知らない人には、その象徴の意味か分からないからです。暗号を解く気持ちになります。

 アンティオコス4世
 アレクサンドル大王の死後ギリシャは4つの王朝に分裂します。この分裂した4つの王朝の中から勢力を伸ばして来たのが、北のシリアと南のエジプトだったのです。彼らは互いに競い合い、戦います。アンティオコス4世はシリアのセレウコス王朝の王様です。彼は王位を簒奪します。肥沃な土地に侵入し彼の父も父の父たちもしなかった事を行います。彼は、そのかすめ取った物、分捕りもの、財宝を仲間たちで分け合います。まさに悪王の典型です。エジプトに侵入しようとしてローマの海軍に阻まれ撤退を余議なくされます。腹いせにエルサレムに戻り、その城壁を破壊し家々に火を放ち、多くのユダヤ人を殺害し、捕囚し、奴隷にするなど暴虐の限りを尽くします。彼は反抗するユダヤ人を徹底的に弾圧し、ユダヤ人の神殿での犠牲の奉献、安息日の遵守、割礼の執行、律法の書の所持等全てを禁止し、命令に背くものには死罪を持って報いたのです。エルサレムの神殿に「ゼウス神」を祭り、これを礼拝するようユダヤ人に強要したのです。アンティオコス4世は神聖な神殿を踏みにじった悪王として今日まで伝えられています。
 この王は、思いのままにふるまい、全ての神よりも自分を高め、大いなる者として、神の神に対してあきれ果てるようなことを語ったのです。こんな彼を主が許すわけは無く、ついに彼の終わりが来て、彼を助ける者は一人もいない。
平成29年7月11日(火)報告者  守武 戢 楽庵会

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