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LINE「らしくない」賭け 活気づくか日本のデジタル 本社コメンテーター

2019-11-18 21:27:51 | 日記

LINE「らしくない」賭け 活気づくか日本のデジタル
本社コメンテーター 村山恵一

Yahoo LINE統合交渉
 
日本のネット業界でLINEは一味違う存在だった

日本のネット業界でLINEは一味違う存在だった

ともに国民的なインターネットサービスを担うヤフーとLINEが経営統合で合意した。世界に先駆け、勢力図を変えるような革新が生まれにくくなった日本。果たしてこの統合でこの国のデジタルは活気づくだろうか。

日本のネット業界でLINEは一味違う存在だった。ヤフー、楽天サイバーエージェント、ミクシィ、ディー・エヌ・エーグリー……。1990年代後半から2000年代初めまでに誕生した各社はパソコンやガラケー(従来型の携帯電話)向けのサービスが出発点だ。

対するLINEは設立こそ00年だが、10年にスマートフォン(スマホ)向け事業しか手がけないと決め、経営資源を集中してきた。看板アプリ「LINE」は短期間で世代を越え使われるコミュニケーション手段になった。

 

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やり取りするのはインフォメーション(情報)ではなくエモーション(感情)。そんな思想が下地にある。「ネット事業というと技術に目が行きがちだが、それだけでは主導権をとれない」(森川亮・前社長)。クマやウサギなどユニークなキャラクターが生み出され、スタンプとなってネットを行き交う。表情や動き、大きさを調整するデザイン部隊の緻密な作業の産物だ。

ITの主戦場になった人工知能(AI)の開発にも取り組み、音声で操作するスマートスピーカーの商品化へと踏み込んだ。いわばテクノロジーがわかるクリエーター集団。他の日本のネット大手とは一線を画し、周到に企業文化やブランドイメージを築いてきた。

世界市場を視野に、東京とニューヨークで株式上場を果たしたのは16年。こういう会社なら、世界にインパクトを与えられるかもしれない。そう感じた多くの企業がLINEと手を組んだ。

今年6月末、LINEの戦略発表会でも長い時間をかけて、金融・決済、エンターテインメント、AI、検索、さらには未来のテレビまで、さまざまなプロジェクトが披露され、提携相手が次々とステージに上がった。オンラインとオフラインのハブになる――。LINEを中心にしたデジタル世界の姿を訴えた。

あれから5カ月足らず。意外にもLINEはヤフーと合体する道を選んだ。

確かにグローバルな巨人がひしめくITの競争は激しく、巨額の投資が必要だ。規模が大きくなければできない思い切った挑戦があるのは間違いない。

だとしても「後ろ盾」となるパートナーがソフトバンク、ヤフーというのは、これまでのLINEの歩みを考えれば「らしくない」との印象をぬぐえない。ネット企業同士の組み合わせは無難な選択肢ではある。ただ新たな価値を生み出す化学反応の起きやすさという観点からは、むしろリスクともいえる。

あらゆるものをネットでつなぐIoTの時代だ。もはやネットはスマホのなかに閉じてはいない。デジタル経営のあり方はどんどん変わる。米グーグルは今月、ウエアラブル(身につける)機器のフィットビットを21億ドルで買収する計画を発表した。米フェイスブックもかつて買収した仮想現実(VR)ベンチャーの技術をてこに20年、新しいプラットフォームづくりを本格化する。

つまり、ネット企業とネット企業の組み合わせ以外にも再編の選択肢はある。資金が豊富で、経営のデジタル化への欲求を抱えた企業は製造業にもサービス業にも分野を問わずある。LINEにも、そういう企業との「異種交配」でこれまでにないテクノロジー企業の姿を描く選択肢があったのではないか。ネットとリアルにまたがるハブの座をねらってきたなら、なおさらだ。


AI時代、人はどう生きるか 羽生九段に東大生が聞く

2019-11-18 08:53:18 | 日記

AI時代、人はどう生きるか 羽生九段に東大生が聞く

2019/11/15

 

学生が様々な分野のトップランナーにインタビューする企画。今回は、平成の将棋界を引っ張ってきた羽生善治九段に、在学中に司法試験予備試験に合格した法律家の卵、小松詩織さん(東京大学4年)が話を聞いた。テーマは人工知能(AI)と法律、AI時代の人間の個性など多岐にわたった。

小松 私は中学3年生で冤罪(えんざい)の研究を始めました。冤罪を生み出す社会の理不尽さを、自らが弁護士としていつか変えたいと思っています。法曹界はAIどころかIT化も進んでおらず、新しい視点を取り入れることで、法曹界そのものを変えてみたいとも思っています。将棋界はAIと人がすでに上手に共存している気がします。きょうは色々とヒントを得たいと思っています。

羽生 実は将棋AIはもう30年くらい前から開発されていました。急激に強くなったのは、2010年ごろに画像認識のレベルが上がったのがきっかけです。将棋ソフトに盤面をひたすら覚え込ませたのです

小松 AIに覚えさせるデータは、羽生さんをはじめ将棋がすごく強い方々のデータだと思うのですが、あえて全然将棋ができない人のデータも入れたりするんですか。

羽生 それはすばらしい質問です。AIに何かを覚えさせるときは、どんなデータをどう学習させるかがプログラマーの腕の見せどころなんですよね。微妙なチューニングをしているようなものですね。ところが、「アルファゼロ」というソフトが出てきて、そういう常識が打ち破られました。アルファゼロは将棋、囲碁、チェスのすべてで人に勝ち越したという最強ソフトなのですが、人間の打ち方のデータで学習していません。基本的なルールを覚えさせたあとは、機械自身が対戦を繰り返すなかでどんどん強くなってしまった。今はAIに覚えさせるためのビッグデータが必要だといわれているけれど、もしかするとこの先はデータも必要なくなるのかもしれないですよ

 

小松 法曹界にAIが入ってきたら、人はどう思うのでしょうか。AIに裁かれるようなことになったら、拒否反応もあると思うんです。

羽生 米国には囚人の仮釈放の判断をAIにさせている州があるらしいですよね

小松 そうなんです。

羽生 ご存じですよね。ところが、何回申請しても仮釈放されない人がいた。この人に「実はAIが判断している」と伝えたところ、ひどく怒り出したというんです

小松 そういう問題が起きますよね。

 

AIを完璧だと思い込んでは危険

羽生 人間が相手なら許せるけれど、AIだと許せないということは確かにある。論理とは別の感情の問題です。裁判官、検察官、弁護士が全てAIだったらスピード決裁できるのでしょうけれど、それで本当に間違いがないのか、そしてみんなが納得するのか。正解はないですよね。もう一つ、AIって決して完璧ではないという点も忘れてはいけない。人間って不思議で、今はまだAIにアレルギーもありますけれど、ある程度AIが実用的に運用されるようになると、完璧なものと思い込んでしまうでしょう

小松 AIも機械ですから、ミスすることもある。確かにそうです。

羽生 人間よりは間違えないかもしれないけれど、ミスをする可能性もある。たとえばATMがミスしたら怒るでしょう? でも、本当はATMだって間違えることはあるはず。人間はATMを受け入れたとたんに完全に信用してしまっているんです。これと同じで、AIだって完璧ではないんです。しかし「ミスするかもしれない」という技術は、世の中に普及しない。「完璧です」って言って普及させようとする。だからこそ、将来AIで何か深刻なトラブルが起きたときに収拾がつかなくなってしまうかもしれないなあと恐れています。

小松 AI将棋はどうでしょう。違和感を覚えることはありますか。

 

羽生 AI将棋はどこかおみくじを引いているようなところもあるんですよ。出てくる手がランダムなんです。例えば人間ならば、同じ人が時間の経過とともに「こう判断した」という部分が見えますが、AIはその時その時で点数が高い手を選んでいるから、方向性がありません。アルファゼロの棋譜も見ましたが、強いことはわかるんだけどどう強いのか説明がつかないんですよ。なんとなくブラックボックスだなあと思うこともあります。

小松 完璧じゃないとなると、AI時代も人間の出番は残ると思いますか。

 
 
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知らないからこそ将棋の世界に飛び込めた
 
 
 

AIを完璧だと思い込んでは危険

羽生 人間が相手なら許せるけれど、AIだと許せないということは確かにある。論理とは別の感情の問題です。裁判官、検察官、弁護士が全てAIだったらスピード決裁できるのでしょうけれど、それで本当に間違いがないのか、そしてみんなが納得するのか。正解はないですよね。もう一つ、AIって決して完璧ではないという点も忘れてはいけない。人間って不思議で、今はまだAIにアレルギーもありますけれど、ある程度AIが実用的に運用されるようになると、完璧なものと思い込んでしまうでしょう

小松 AIも機械ですから、ミスすることもある。確かにそうです。

羽生 人間よりは間違えないかもしれないけれど、ミスをする可能性もある。たとえばATMがミスしたら怒るでしょう? でも、本当はATMだって間違えることはあるはず。人間はATMを受け入れたとたんに完全に信用してしまっているんです。これと同じで、AIだって完璧ではないんです。しかし「ミスするかもしれない」という技術は、世の中に普及しない。「完璧です」って言って普及させようとする。だからこそ、将来AIで何か深刻なトラブルが起きたときに収拾がつかなくなってしまうかもしれないなあと恐れています。

小松 AI将棋はどうでしょう。違和感を覚えることはありますか。

 

羽生 AI将棋はどこかおみくじを引いているようなところもあるんですよ。出てくる手がランダムなんです。例えば人間ならば、同じ人が時間の経過とともに「こう判断した」という部分が見えますが、AIはその時その時で点数が高い手を選んでいるから、方向性がありません。アルファゼロの棋譜も見ましたが、強いことはわかるんだけどどう強いのか説明がつかないんですよ。なんとなくブラックボックスだなあと思うこともあります。

小松 完璧じゃないとなると、AI時代も人間の出番は残ると思いますか。

 
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AIを完璧だと思い込んでは危険
 

羽生 AIが奪う職業に弁護士も挙がりますが、私は人間がやらなければいけないことがあると思っています。AIは問題を解かせたらすごいけれど、正しい問題設定ができるわけではありません。法曹の世界でいえば、法律相談には法律上はどうにもならない相談もきますよね。でも、「法律ではどうにもならなくても、そこをなんとかしてほしい」という人間の気持ちの問題も存在する。

知らないからこそ将棋の世界に飛び込めた

小松 そうなんです。判決文をデータとしてAIに覚えさせるのは簡単です。しかし、実際に裁判官が判決文を書くまでには、検察官が起訴した理由や裁判官の判断の経緯など、いろいろなことがあって判決文ができあがる。そういう経緯をAIは把握できないので、人間との差はまだ大きいと思っています。

羽生 人間かAIか、どちらかだけになるのではなく、AIと人間がうまく分担していく制度ができれば、片方ずつでやるより精度が上がるはずです。人間が苦手なところと、AIの死角とか盲点を、お互いに補完し合う社会になるといいんじゃないかと思っています。

小松 AIネーティブな棋士がこれから増えたら、将棋界も変わりますか。

羽生 将棋の世界でも、最後は一人ひとりの個性がカギを握るのかなと思うことがあります。いま将棋を学んでいる小学生の世代は、AI将棋を使って強くなっていっています。この子たちが10年後に棋士になってどんな将棋を指すのか、とても興味深いです。同じような環境で同じソフトを使って研究したら、結局同じことしか覚えられない。結局はその人の独自性や個性みたいなものが勝負の分かれ目になるのかな。

小松 今は弁護士志望ですが、以前は競泳に打ち込んでいました。小学5年のときにわずかの差でジュニアオリンピック出場を逃すという悔しい経験をして、6年生で競泳をやめてしまったんです。羽生さんは15歳でプロになって以来、将棋一筋ですが、どう心を決めたのですか。

羽生 2年前に引退なさった加藤一二三先生は現役生活が67年でした。私はそれと比較するとやっと折り返し地点にたどり着いたくらい。その果てしない道の長さを感じることはありますが、あまり考えないようにしているんです。トライアスロンに挑もうとするときに、「これからマラソン40キロメートル、次は自転車100キロメートル」とか言われたら嫌じゃないですか。急にやる気がなくなっちゃいますから。だから、目の前の1キロメートルをがんばろうかな、とか。そういうふうに考えていかないと、ずっと長く続けていくのは難しいです。

 

小松 長い道のりは覚悟なさっていましたか。

羽生 わからないままだったからこの世界に飛び込めたという面はあるように思います。谷川浩司九段にあこがれて将棋の世界に入ったのですが、最初に抱いた夢とかあこがれと、実際に入ってからの景色は全然違いました。1段ずつ階段を上がっていかなければいけない険しさとか大変さを、何も知りませんでした。当時はインターネットもなく、どれくらい大変なのか、どんな努力が必要なのか情報がなかったからです。今はいろいろ調べられる時代ですが、競争が大変そうだとか10年くらいかかるらしいなんてことを先に知ってしまうと、前に踏み出せないということはあるのではないかなと思いますね。若い人の強みは、リスクがありそうでも、大胆な選択にみえても、可能性を信じて前に進んでいけることだと思っています。

(文・構成 藤原仁美)


日米欧の自動車大手、7万人削減 リーマン時に迫る

2019-11-18 02:12:23 | 日記

日米欧の自動車大手、7万人削減 リーマン時に迫る

自動車・機械
2019/11/16 22:24
日本経済新聞 
 
日米欧の自動車大手が人員削減を始めた(米テネシー州にあるゼネラル・モーターズの工場)=ロイター

日米欧の自動車大手が人員削減を始めた(米テネシー州にあるゼネラル・モーターズの工場)=ロイター

 

米ゼネラル・モーターズ(GM)など日米欧の自動車大手が人員削減を始めた。削減策の合計人数は7万人超となり、リーマン・ショック直後の10万人超に迫る。景気の減速感などによる新車販売台数の減少に加え、電動自動車(EV)など次世代車に転じていく構造変革に動きつつある。部品メーカーなど裾野が広い自動車業界の人員削減は雇用環境の改善に影を落とす。

GMは米国内の3工場を閉鎖する。世界で7工場の閉鎖と1万4千人の削減を進めている。米フォード・モーターも工場の作業員を1万2千人削減することを発表し、日産自動車は生産部門で1万2500人の削減策を公表した。

 

日米欧の主要メーカーの従業員数は2009年以降、増加を続けて約240万人になったが、18年は微減に転じた。削減する7万人超は今回、人員削減をする企業の従業員数の約4%にあたる。

削減策をとる背景には足元の新車販売の変調がある。18年の世界の新車販売台数は、前年比0.5%減の9581万台だった。日米欧の先進国では新車販売台数が頭打ちで、19年は米国では前年を3%下回り、欧州も1%減とみられる。中国やインドでの販売台数も5%超の減少になり、18年を下回る見通しだ。

金融危機の影響で09年に新車販売台数が前年を下回った際は、自動車各社は「新興国の市場は拡大する」との見方を崩さなかった。実際、危機後に相次いで新興国への投資をし、車の世界生産台数は10~17年まで増え続けた。

 

だが18年は生産台数も前年比1.1%減の9563万台と、09年以来の減少に転じた。伊藤忠総研の深尾三四郎主任研究員は「従来の大量生産モデルが限界を迎え、今回は生産能力の削減を前提にリストラへ動く企業が増えた」と話す。

新車と既存車を合わせた車の総台数は16年に13億台と、過去10年で5割増えた。PwCは車の総台数は30年に17億台弱、50年には20億台になり飽和すると予測する。

EVなど次世代車への転換も、生産体制の構造改革に拍車をかける。内燃機関のないEVは部品点数がガソリン車より3割少なく、内燃機関を持つ車の組み立てもより少人数で済む。

30年に世界販売の40%をEVにする目標を掲げる独フォルクスワーゲン(VW)は、独国内の工場でEV生産を始めるのに伴い、23年までに7千~8千人を削減する。フォードも19年6月には欧州で内燃機や変速機などガソリン車関連の5工場の閉鎖を決めた。

厳しさを増す環境規制や次世代技術への投資を捻出する必要もある。独ダイムラーでは電動化に対応する費用が、同社の利益率を毎年1%押し下げるという。

GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は「顧客の嗜好の変化に対応した生産能力を確保する」とし、リストラの一方で傘下の自動運転の開発会社には11億ドル以上を追加出資した。日産も効率化で3千億円の固定費を減らしながら、開発費は1割増やす。

米アリックスパートナーズは、自動車業界は23年までの5年間で電動化に2250億ドル、自動運転へ500億ドルの投資を迫られると試算する。

しかも投資のかさむEVが利益を生み出すとは限らない。仏ルノーなどは20年前半にも最低価格が100万円台と現在のおよそ3分の1という廉価版を投入する計画だ。普及を優先させるためにはコストの回収を先送りせざるを得ない。自動車業界は試練の時を迎えている。


GoogleとIBMの量子競争 日本突き放す知のコラボ

2019-11-18 01:56:33 | 日記

GoogleとIBMの量子競争 日本突き放す知のコラボ

本社コメンテーター 村山恵一

最先端のスーパーコンピューターをしのぐ性能を量子コンピューターで実証したと、米グーグルが英ネイチャー誌で発表した。日本の第一人者、東京工業大学の西森秀稔教授が驚き、注目したのは論文の著者リストに並んだ研究メンバー約80人の顔ぶれだった。

米航空宇宙局(NASA)、スパコンで有名な米オークリッジ国立研究所、欧州を代表するユーリヒ総合研究機構……。2014年に研究室ごと引き抜いた米カリフォルニア大学の人材に加え、さまざまな組織の研究者が集まった。グーグル社内に閉じず、広範。量子オールスターズだ。

 

求心力の源はグーグルの資金力だけではない。個性的な才能を束ねて方向づけるリーダーシップもいる。量子のような大テーマで、スピード感をもって突破口を開くための研究モデルのひな型を示した――。西森氏はそうみる。オープンな体制で多様な人材を生かすところがポイントといえる。

グーグルと競う米IBM。ネイチャー論文に異議を唱え、対抗心を隠さないが、自らの研究所に閉じこもっていない点は同じだ。

量子コンピューターは誰がどんな用途で使うのか。それを理解するのも研究の一部と考え、発展途上の量子コンピューターを公開し、世界で15万人の登録利用者を抱える。プログラム開発者が交流するソーシャルメディア的なしくみがあり、IBMとともに利用法を探るコミュニティーには80近くの企業や大学が参加する。

社内で秘密裏に研究し、世の中に届けられる段階になってはじめて提供するかつてのIBMの流儀から様変わりだ。コンピューター科学や物理、数学、化学、ソフト開発、デザインなど多分野の学生をインターンに誘う。研究者のつながりを外へ外へと伸ばす。

量子コンピューターの実用化には長い時間を要し、暗号破りのリスクも指摘される。一方で気候変動やエネルギー、ヘルスケアの難問を解く潜在力を秘めている。限られた場所と人で研究していては大事な芽を見落としかねない。

日本は大丈夫だろうか。

量子コンピューター研究の歩みを振り返れば、目を引く日本発の成果があったが、ひょっとするとチャンスを逃したかもしれない。

東工大の西森氏らが土台となる理論「量子アニーリング」を提唱したのは1998年。同じころNECは超電導による量子ビットを世界で初めて実現した。先頭を走る専門家同士がそばにいた。

もしもそこに対話が生まれ、知識が交じり合えば、世界をリードできるような研究の進展がみられた可能性があるが、双方が連絡をとり合うことはなかった。

時は流れ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の案件で両者の連携が決まったのは昨年だ。NECもIBMに似たコミュニティーづくりをめざすが、具体化はこれから。海外のダイナミックなうねりと差がある。

研究のあり方が刷新を迫られているのは量子の領域に限らない。人工知能(AI)やアルゴリズムの時代だ。テクノロジーを創出するにも、暴走を防ぎながら駆使するにも、いろいろな発想やアイデア、価値観の融合が欠かせない。

トランジスタや太陽電池、パソコンの原型の開発など技術史に残る結果を出した米国のベル研究所、ゼロックスのパロアルト研究所は多士済々が活気のもとだった。さらにいま、組織の壁を越え、大きなスケールで人と人が化学反応を起こす研究環境をコーディネートできるところが優位に立つ。

日本の研究者は67万人と米国や中国の半分以下。研究費も両国の3分の1ほどだ。問題はそうした資源が無駄なく生かされているかどうか。論文数や特許出願の推移をたどると、日本の存在感はじわじわ縮んでいる。よその国以上に知のコラボレーションが必要なはずが、そうはなっていない。

人材の流動性を高め、大学と企業をまたいで研究者が活躍できるようにと国が整えたクロスアポイントメント制度。だが大学から企業に動いたのは17年度でわずか7人。聞けば大学と企業の給与体系の違いなどイノベーションとかけ離れた事柄が障害だ。専門性を携えて研究者が産官学をわたり歩く米国とは景色が異なる。

望みがないわけではない。

AIスタートアップのカラクリ(東京・中央)でデータサイエンティストをつとめる吉田雄紀氏。機械学習を研究する東京大学の大学院生、内科の医師でもある。量子コンピューターを使いこなすコンテストで優勝経験があり、能力を縦横に発揮している。

ひとつだけに打ち込めばときに行き詰まるが、「3足のわらじ」なら新たな問題意識が芽生え、知見が高まるという。柔軟な研究スタイルを欲する若者は日本にも少なくない。うまく環境をつくれば組織間の人の流れも太くできる。

VALUENEX(バリューネックス)という情報解析ベンチャーがある。大量の特許文書を分析し、企業がもつ研究の強み、弱みを浮き彫りにするサービスを手がける。大手を中心に日本でも導入する会社が増えている。

自社の研究の実力を知れば、どんな企業と手を組むべきか、スタートアップを買収すべきか見極めやすい。内向き色が濃い伝統的な研究体制から脱するひとつのきっかけになりうる。

グーグルやIBMの動きを遠巻きに眺めているだけでは、日本の研究力が細るばかりだ。