森の里ホームズのブログ

非典型溶血性尿毒症症候群(指定難病109)

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 私達の体には、病原体の感染から体を守る免疫という仕組みがあります。その一つに「補体」というタンパク質があり、体内に侵入した病原体に取り付き破壊するなどの役割を持っています。通常補体の活性化は厳密にコントロールされ、不必要かつ過剰な活性化が起きないように制御されています。 aHUSは、遺伝子の変異により生まれつき補体のコントロールがつきにくい人が、感染や分娩、臓器移植などをきっかけに、補体の異常な活性化を来して発症します。その他にも、免疫の異常で補体活性化を抑制する因子の働きが低下する場合や、発症の原因がわからない場合も少なくありません。 補体の異常な活性化が起こると、本来傷害することのない、自分の体の血管内皮を傷つけるようになります。すると傷ついた血管内皮に血小板が集まり、血栓が形成されます。血栓により血液中の赤血球が壊れたり、血管をつまらせたりする事によって様々な臓器障害を引き起こします。中でも腎障害は発症の頻度が高い臓器障害です。以上の様にaHUSは血小板減少、溶血性貧血、急性腎障害を特徴とする病気です。

 【原因】
 様々な要因によって、補体の異常な活性化が引き起こされると、補体が病原体だけでなく自身の組織も攻撃します。補体により細い動脈(細小動脈)の内壁が傷害されると、血管の内側にある細胞(血管内皮細胞)が本来持っている機能が失われ、血管の中で血小板の過剰な凝集(血小板血栓)が生じ、それによって血小板が消耗されます。さらに赤血球は非常にもろいため、血小板血栓によって内腔が狭まった細小動脈を通過する際に壊れます。その結果、溶血性貧血や血小板減少が生じ、さらには細小動脈が集中している腎臓をはじめとする様々な臓器に障害が現れます。このようにしてaHUSという病気が発症すると考えられています。ただし、なぜ補体の異常な活性化が引き起こされるのかについては、完全にわかっていません。
1つの原因としてわかっているのは、補体の活性化を調節する因子(補体制御因子)の先天的、もしくは後天的な機能異常です。補体制御因子の機能異常は、補体の活性化を抑制する因子の機能が低下する例と、活性化する因子の機能が亢進する例に分けられます。抑制因子の機能が低下する例として、H因子、I因子、CD46の病的遺伝子変異、または抗H因子抗体の出現によりH因子の機能が低下する場合が挙げられます。活性化因子の機能亢進の例としては、B因子、C3の病的遺伝子変異が挙げられます。しかし、遺伝学的検査をしてもこれまで原因として報告されている遺伝子に変異の無い患者さんもおり、まだ分かっていない原因遺伝子の存在や別の要因があると考えられています。

 【症状】
 aHUSで見られる主な症状としては、血小板が減少するために起こる点状や斑状の出血斑(紫斑)などの出血症状や、溶血性貧血による全身倦怠感や息切れです。また腎臓への障害が大きい場合には、浮腫(むくみ)や尿量の減少、食欲低下などの尿毒症症状などが見られます。発熱、神経症状、消化器症状(腹痛・下血)等が見られる場合もあります。もともと遺伝的な素因のある方が、感冒や腸炎などの感染症、出産や臓器移植手術などをきっかけに発症することも多く、そういった先行する要因による症状や背景といった経過にも注意が必要です。

 【治療法】
 現在、主に用いられている治療法には血漿交換や血漿輸注という血漿療法と、補体の成分に対する抗体(抗補体薬)による治療があります。腎臓の機能が低下している場合には、透析による治療を行うこともあります。高度な腎不全に至った場合、長期的には腎移植も治療の選択肢の1つとなりますが、腎臓移植の手術を契機とした再発の恐れがあるとされています。血漿交換は、血液の中でも血漿という成分を献血による血漿と交換する治療で、血液の中にある補体を活性化させている成分も含めて取り除き、健康な人の血漿を代わりに補充する治療です。血漿輸注は、健康な人の血漿を補充する目的や、新生児や小児で血漿交換が困難な場合に行われます。また最近開発された治療薬として、抗補体薬があります。抗補体薬は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)という疾患に対して開発された治療薬ですが、補体の過剰な活性化を阻害する働きを持つことから、2013年にaHUSが適応症に追加されました。

<出典:難病情報センター>

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