「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

さえずりや毀れしままの三輪車 鈴木要一 「滝」4月号<渓流集>

2014-04-25 04:45:03 | 日記
 春到来の象徴とも言うべき鳥の囀りは、俳句に託して希望を
表現するのにぴったりの季語。配された三輪車に東日本大震災
が思われて、復興・復旧が子供達の未来の為に早急に成される
こと願う作者を思いました。「こわれしまま」に三年を経た苛
立ちが込められているようですね。(H)

教会のゴスペルの声流氷来 阿部風々子 「滝」4月号<渓流集>

2014-04-23 05:04:11 | 日記
北海道にお住まいの作者ならではの句。私は流氷を見たこ
とがないのですが、北海道に春を告げる象徴と思います。そ
してゴスペルは神様に向けた祈りの歌であり、希望を願う前
向きのメッセージが盛り込まれた曲。人間の意表をつく自然
の姿と、作者の内的世界に春を感じる句と思いました。(H)

洗礼や連翹の透く麿硝子 成田一子 「滝」4月号<瀬音集>

2014-04-22 05:39:41 | 日記
 「洗礼」から教会を連想しますが磨硝子。この洗礼はキリ
スト教徒となるための儀式ではなく「初めての経験をするこ
と」という意味で使われたのでしょうか。磨硝子越しの黄の
不透明な明るさが、不意に眼前に現れた入室時の感動が詠ま
れたかと思いますが、やっぱりそれは教会の春陽を透かすス
テンドグラスに通じ、神に抱擁されているような空気感を思
わせるような気がしました。と、無理に言葉にすればそんな
感じですが、心に見えているものがうまく言えていないモヤ
モヤをどうしたらいいのでしょう。(H)

パン種をねむらせ花の人となる 酒井恍山 「滝」4月号<瀬音集>

2014-04-21 05:12:23 | 日記
 「ねむらせ」という、パン生地のイーストの発酵を待つ
時間は一時間弱です。地区で開催されるお花見にちょっと
顔を出す感じ?。しかし「生地」ではなく「種」と記して
あります。どちらも二文字ですが微妙に何かが違うことに
思いめぐらすうちに、ホームベーカリーという、炊飯器と
同じように材料を入れて、タイマーをセットしておけば出
来たてのパンが食べられる機械を思い出しました。泊りが
けで花の名所に出掛ける奥様を詠まれたのでしょう。味噌
汁や焼き魚は作れなくても、コーヒーと目玉焼きなら作れ
るでしょうという配慮です。きっと冷蔵庫にはサラダが作
ってあって、バターやジャムが一つのトレーに準備してあ
るのでしょう。奥様の「いってきます」に「うん」と答え
るだけの作者だけれど、「ありがとう」も「気を付けて行っ
てらっしゃい」も含まれるのでしょう。日常から非日常へ
の導入。俳句はステキですね。(H)