さえずりや毀れしままの三輪車 鈴木要一 「滝」4月号<渓流集> 2014-04-25 04:45:03 | 日記 春到来の象徴とも言うべき鳥の囀りは、俳句に託して希望を 表現するのにぴったりの季語。配された三輪車に東日本大震災 が思われて、復興・復旧が子供達の未来の為に早急に成される こと願う作者を思いました。「こわれしまま」に三年を経た苛 立ちが込められているようですね。(H)
これ以上咲けぬとくずれシクラメン 庄子紀子 「滝」4月号<渓流集> 2014-04-24 04:19:20 | 日記 花期の長いシクラメンもとうとう力尽きたように散ってし まった。その散り際の見事な描写である。シクラメンの言葉 が聞こえるまで心を寄せて愛でてきた作者のようですね。(H)
教会のゴスペルの声流氷来 阿部風々子 「滝」4月号<渓流集> 2014-04-23 05:04:11 | 日記 北海道にお住まいの作者ならではの句。私は流氷を見たこ とがないのですが、北海道に春を告げる象徴と思います。そ してゴスペルは神様に向けた祈りの歌であり、希望を願う前 向きのメッセージが盛り込まれた曲。人間の意表をつく自然 の姿と、作者の内的世界に春を感じる句と思いました。(H)
洗礼や連翹の透く麿硝子 成田一子 「滝」4月号<瀬音集> 2014-04-22 05:39:41 | 日記 「洗礼」から教会を連想しますが磨硝子。この洗礼はキリ スト教徒となるための儀式ではなく「初めての経験をするこ と」という意味で使われたのでしょうか。磨硝子越しの黄の 不透明な明るさが、不意に眼前に現れた入室時の感動が詠ま れたかと思いますが、やっぱりそれは教会の春陽を透かすス テンドグラスに通じ、神に抱擁されているような空気感を思 わせるような気がしました。と、無理に言葉にすればそんな 感じですが、心に見えているものがうまく言えていないモヤ モヤをどうしたらいいのでしょう。(H)
パン種をねむらせ花の人となる 酒井恍山 「滝」4月号<瀬音集> 2014-04-21 05:12:23 | 日記 「ねむらせ」という、パン生地のイーストの発酵を待つ 時間は一時間弱です。地区で開催されるお花見にちょっと 顔を出す感じ?。しかし「生地」ではなく「種」と記して あります。どちらも二文字ですが微妙に何かが違うことに 思いめぐらすうちに、ホームベーカリーという、炊飯器と 同じように材料を入れて、タイマーをセットしておけば出 来たてのパンが食べられる機械を思い出しました。泊りが けで花の名所に出掛ける奥様を詠まれたのでしょう。味噌 汁や焼き魚は作れなくても、コーヒーと目玉焼きなら作れ るでしょうという配慮です。きっと冷蔵庫にはサラダが作 ってあって、バターやジャムが一つのトレーに準備してあ るのでしょう。奥様の「いってきます」に「うん」と答え るだけの作者だけれど、「ありがとう」も「気を付けて行っ てらっしゃい」も含まれるのでしょう。日常から非日常へ の導入。俳句はステキですね。(H)