「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

信長塀太閤塀や月涼し 平川みどり 「滝」7月号<渓流集>

2014-07-09 05:20:45 | 日記
 秋に入って身体に感じる涼しさとは違い、心理的精神的な
涼しさの色が濃い「涼し」。月に視線のあることから、めぐ
る想いのある事が想像される。戦国時代に限らず、数多の戦
の果てにある今の日本の平和の象徴として配された二つの築
地塀(ついじべい)であるのだろう。集団的自衛権で揺れる
憲法第9条。『望まない戦争に巻き込まれることへの懸念へ、
その想いは向いたのかもしれない』と鑑賞すれば、季語の趣
を損ねることに成りかねないが、「伊勢」と題された五句は、
夏衣で万緑のなかを歩き、小休止に甘酒をいただき、夏蝶に
会った吟行の一日を掲句で締め括っている。明け易い夏の空
に夏月の明るい時間は短い。旅の高揚に眠れない中にそんな
事も過るかと、勝手な鑑賞だが、二つの塀と月はそんなこと
を私の心に運んできた。(H)