「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

雪解のひかりの中の遊子かな 田口啓子 「滝」4月号<滝集>

2012-04-19 05:25:19 | 日記
 字面から雪解光の中で遊んでいる子供かと思ったが違って
いた。「遊子」は家を離れて他郷にある人。津波で家を失っ
たか、原発事故で故郷を離れてきた家族を思った。春日の中
に、微笑ましく目をとめた家族の会話に聞き慣れない方言を
聞きとめたとしたら、そんな想像も成り立つ。春の兆しが悉
く震災と結ばれてしまうが、素直に「遊子」を旅人と解せば、
雪解光によって広がってくる春のまばゆさは、雪に埋もれて
いた地方の解放感と、旅という日常の束縛から逃れ来たのび
のびとした心地と良く響きあうのだなとも思った。(H)