「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

でで虫に出合はぬままに星ひとつ 小林邦子

2021-09-19 04:32:56 | 日記
気が付けば一番星が出ている。雨催いの中、たくさんの用事を抱えて出掛けたのでしょう。動くか動かないのかわからないほどに、じいっとしている「かたつむり」の「静」に作者の「動」が思われた。「出合わぬまま」にと、雨を免れ、今は晴れた夜空という時間経過。帰路のゆっくりとした歩みに達成感の象徴のように「星ひとつ」、かな、と・・・。足元ででで虫も目を伸ばして同じ星を見ているかも知れませんね。忙しくてもバタバタ感がない「出来る人」。清楚で穏やかな印象の作者を知っているからかもしれないけれど、誕生日が同じなのに、私はガサツなのはどうしてなんでしょう。血液型かなぁ。(博子)

麦笛や本家分家の子の揃ふ 鎌形清司

2021-09-17 03:39:01 | 日記
麦笛を吹いたことはないけれど聴いたことはある。幼い頃、父の実家にいた奉公人が吹いてくれた。「本家分家の子の揃ふ」は、結婚式か、法事か、百歳のお祝いかと想いを巡らせてみた。集まる理由が何でもそれは懐かしく昔を語る賑やかさなのだけれど、今はコロナ禍では集まることはできないですね。暖かいような淋しいような麦笛は郷愁を呼び覚まします。麦笛によって、揃った顔は「心の中に」なのかも知れませんね。(博子)

星涼しポテトチップの反り具合 及川源作

2021-09-15 04:50:04 | 日記
塩釜市在住の作者にはわざわざ出かけなくても「星涼し」の海が間近にあって、家で星を見ながらビールかと、ポテトチップスの袋を開ける音や噛む音が聞こえて来るようだ。「反り具合」という手元の描写が、蠍座、射手座、天の川etcの広い視野と行ったり来たりする視線を詠んで楽しい。(博子)

うたた寝の額にひと声夏雲雀 池添怜子

2021-09-14 04:44:06 | 日記
寝るつもりはなく横になっているうちに眠ってしまったのだろう。ソファーだろうか。夏の雲雀は地面近くをひっそり飛ぶという。同じような高さの二平面の取り合わせだろうか。元気のない声ではあるが雲雀の囀りに目覚めて、起き上がり、疲れの感覚も夏雲雀に寄せてある。そんな句だろうか。「夏雲雀」は例句が少なく、鑑賞が難しかった。勉強不足で申し訳ない事でございます。(博子)

銀河濃しあんなところに千社札 石母田星人

2021-09-09 05:38:01 | 日記
銀河からはじまる夜の景。視線は銀河をはなれず、「あんなところに」と千社札を見つけた。千社札は世の中安泰と家内安全を願う千社参りの札。お参りに来た証拠として、名前や出身地などを書いた紙札を、鳥居や札所などに貼るようになり、江戸時代にはブームもあったという。天上や柱の上の方など、手の届かないところにも、たくさんの千社札が貼られているそうで、無数の「願い札」は銀河にも・・・。天然痘やコレラなどの感染症が相次いだ江戸時代も思われた。今、人類の願いはコロナ感染の終息。銀河に終息に向けた対処へのもやもやを感じてもいいのかもしれない。心から離れない感染症の恐怖。医療逼迫のなか、身を粉にして治療にあたってくださっている方々に感謝と敬意を持ち、予防に努めたい。(博子)