映画から自己実現を!

映画を通して 人間性の回復、嫌いな自分からの大脱走、自己実現まで。 命をかけて筆をとります。

③『心のままに』~「3月30日は世界双極性障害デーです」皆、行ってしまう。こんなに人をバカにした病気はない。~

2024-04-03 06:37:42 | 日記

 

17.対話

 

ジョーンズはエリザベスと面談を開始します。

 


ジョーンズ:
「親父と喧嘩して母はすすり泣いてたんだ」

「僕も眠れなかった」

「親不孝者さ」


 

家庭環境のひどさが垣間見られます。

大抵の患者は家庭環境に問題があったりして、その強いストレスで発病します。

もちろん例外もあります。何かに熱中しすぎて、夜も眠らず活動し過ぎて発病する人などです。

対人関係のストレス、睡眠・生活リズムの乱れから発症します。

 


ジョーンズ:「録画をしてるのか?」

エリザベス:
「ええ、そうよ」

「嫌?」

ジョーンズ:「いいさ」

エリザベス:
「ジョーンズさん、あなたの問題は2つあるわ」

「薬で解決できる問題は薬に任せてちょうだい」

「もう一つはあなたが心に受けた傷よ」

「それを取り除くのは容易ではないわ」

「分かってくれる?」

「力を貸してちょうだい」

「約束してくれる?」


 

その精神病院では中庭に患者を集めて、カウンセラーが精神療法を行っています。

 


カウンセラー:
「今感じている感情を身体で表してみましょう」

「自分を解き放ち、心にあるものを吐き出してね。いいわね?」

「そうよ。吐き出すのよ」

「胸に溜まっているものを全部吐き出すのよ」

「ジョーンズさん。何を考えているの?」


 

ジョーンズは自分には必要ないと言う風に答えます。

 


ジョーンズ:「勃起さ」


 

アマンダは陽気に行動療法を行っています。

とても可愛らしい患者です。

ジョーンズはうつの影響で、何もやる気が起こらない日々が続きます。

エリザベスはジョーンズの心の中にあるトラウマを発病の原因とみなして探ろうとします。

 


エリザベス:「最初に問題を起こした日はいつ?」

ジョーンズ:
「それじゃあ、話してあげよう」

「最初に問題を起こした時の事をね」

「僕は不動産会社のモデル・ハウス現場で働いてたんだ」

「腕っぷしには自信があって、よく喧嘩したよ」

「それが知れ渡って誰も手を出そうとしなくなったよ」

「その頃、エレンという素敵な恋人がいたんだ」

「そのエレンが死んだ」

「それがきっかけだった」

「物を壊したり人を殴ったり、とっ捕まってブチ込まれた」

「独房の鉄格子に登って暴れたり、キングコングのように大声で吠えた」

「そういう事が続いて病院に送り込まれた」

エリザベス:「どこの病院なの?」

ジョーンズ:「ヒューストンさ」

エリザベス:「なぜウソをつくの?」

ジョーンズ:
「ウソなんかついていないよ」

「ウソじゃないよ」

エリザベス:「ユーストンでキングコング?」


 

ジョーンズはエリザベスになまりを指摘され、言い直します。

 


ジョーンズ:「ヒューストン」

エリザベス:
「ヒューストンよ」

「続きは明日にしましょう」

ジョーンズ:
「わかった、今話すよ」

「大学で...」

エリザベス:「大学で何が?」

ジョーンズ:「アスピリンを飲んだんだ」

エリザベス:「幾つなの?」


 

エリザベスはオーバードーズの心配をします。

オーバードーズとは睡眠薬などの市販薬などを大量に一気に飲み干す、危険な行為です。

オーバードーズをすると幻覚や精神の興奮状態によって、不安やストレスから解放してくれると言われています。

 このため、学校や職場等の人間関係の悩みや、家庭の悩みを抱えている若者が、手に入りやすい市販薬でオーバードーズをする事例が多くみられます。

 ただし、不安やストレスから解放してくれるといった効果は一時的なものです。

服用を続け、薬に依存してしまうと、自力ではやめられなくなることがあります。

 オーバードーズの影響で肝障害が起こったり、最悪の場合は心肺停止で死亡したりする場合もあります。

リストカットも自傷行為の一つです。

自分の身体に傷を付けると安心するんですね。

それは人体に痛みが加わったときに、心が耐えられるように脳内から麻薬のような心地よい物質が出てきます。

終わりのない不安感から一瞬だけ抜け出せるんですね。

頭を壁に打ちつけたり、身近では頭を掻いたりするのもこのような効果があるのかもしれません。

周りの人はどうしてこんなことをするんだろうと驚くはずです。

患者にとって、不安から逃れる唯一の手段なのですね。

もし親しい人がしているのを見つけたときには、決して責めずにいっしょに辛さを共感してあげて欲しいです。

本人だってバカなことをしている自覚はあるのです。

でもどうしてもやめられないんですね。

依存症の状態です。

 


ジョーンズ:
「タイレノールを73錠一度に飲んだ」

「若かったし、胃に食い物が...そして僕を友達が発見した」

「信じないだろうがそのおかげで完全に頭痛が消えたんだ」

「本当だよ」

エリザベス:「信じるわ」

 

 

 

18.見舞い

 

ハワードが閉鎖病棟にジョーンズを見舞いに来ました。

 


ハワード:「元気かい?」

ジョーンズ:
「ハワードなのかい?」

「ハワード、何してる?」

ハワード:「君に会いにきたんだ」

ジョーンズ:「君も入院かい?」


 

ジョーンズとハワードは大笑いしました。

 


ハワード:「元気そうだね」

ジョーンズ:
「まあ、なんとかね」

「あれから何ヶ月たった?」

ハワード:「一ヶ月さ」

ジョーンズ:
「もう一ヶ月?」

「驚いたな」


 

別の患者がハワードに話しかけてきました。

 


ハワード:「医者かと思ったよ...」

ジョーンズ:
「見分けが難しいんだ」

「あそこの3人を見て」

「あのうちの誰が患者だと思う?」

ハワード:「悲しげな顔の女性かな」

ジョーンズ:
「彼女が僕の担当医だよ」

「あの3人は?」

ハワード:「若い娘さんかな」

ジョーンズ:
「彼女は自殺未遂3回だ」

「あそこの太った女性も...」


 

ハワードはジョーンズを案じてネガティブな会話を止めさせました。

ぐっと来るいいシーンです。

 


ハワード:
「連中の話はあとでいいよ」

「君に会いにきたんだ」

「本当に会えてよかったよ」


 

二人はしっかりとハグし合いました。

 


ハワード:「退院はできるのかい?」

ジョーンズ:
「さあね、分からないよ」

「分からない...」


 

そして二人は頭をつき合わせます。

 


ハワード:「うちの電話番号だ。いつでも掛けてくれ」

ジョーンズ:「これは何なんだ?」


 

ハワードは電話番号を書いた100ドル札をジョーンズの胸のポケットに入れていました。

 


ハワード:
「話しても君はきっと信じないよ」

「昨日町を歩いていたら、突然空が開いて天から声が聞こえたんだ...」


 

ジョーンズは大笑いしました。

 


ハワード:「『これをミスター・ジョーンズに与えよ』と」


 

初めて出会ったときのお返しをハワードはジョーンズにしました。

 

 

 

19.去られるということ

 

建物の廊下で、エリザベスはある患者が一人、悲しげな表情をしているのを見つけます。

 


エリザベス:「どうしたのですか?」


 

話しかけても応答がありません。

どうやら何か悲しんでいるようです。

エリザベスはもっと近づきました。

 


エリザベス:「オルトマンさん、病室を抜け出してきたの?」

オルトマン:「女房が..」

エリザベス:「奥さんが何かあったの?」

オルトマン:「来なかったんだ...」

エリザベス:
「面会に来なかったのね?」

「そうなの?」

オルトマン:「女房が来なかった」

エリザベス:
「それはがっかりね」

「わかったわ。部屋に戻って奥さんに電話してみましょう」


 

オルトマンは涙を浮かべ、思い詰めて中庭をじっと見つめていました。

 


エリザベス:「オルトマンさん?」


 

エリザベスはオルトマンの背中に触れた瞬間、両腕を掴まれました。

エリザベスは逃げることが出来ない状態になります。

 


オルトマン:
「男をつくったんだ」

「きっとそうだ。男と寝てやがる」

エリザベス:
「戻って電話をしましょう」

「いいわね?」


 

オルトマンはエリザベスに平手打ちをします。

オルトマンはもう誰が誰だか分からない状態に混乱していました。

その様子を中庭の向こうからジョーンズが見ていました。

オルトマンはエリザベスの首をつかみ、絞めはじめました。

ジョーンズはドアを蹴破り、エリザベスを全速力で助けに行きます。

エリザベスは涙を浮かべながら、すでに意識がもうろうとしていました。

かけつけたジョーンズはオルトマンを止めさせました。

 


ジョーンズ:「アーニー!聞けよ。話がある!いい気分かい?」


 

オルトマンはエリザベスの首を離しました。

 


ジョーンズ:
「かみさんじゃない、先生だぞ」

「次の面会には必ず来るよ」

「気分はよくなったか?」

オルトマン:「女房はどこだ?」


 

警備が駆けつけました。

警備員は近くに居たジョーンズを間違えて取り押さえます。

 


ジョーンズ:「こっちだよ」

エリザベス:「その人じゃないのよ」


 

精神障がい者の方々は病気と闘うと同時に、親しい人が離れていく不安や孤独とも闘っています。

それはなによりも辛いことです。

生きることの希望と呼べる人たちが離れていくわけですから。

病気と闘っているのは本人だけではありません。

それは家族や親しい人も戦っています。

カサンドラ症候群という言葉があります。

主に発達障害の人とのコミュニケーションの疲れから、近親者がやがてうつ病になる現象です。

発達障害にかぎらず、アルコール依存症や認知症、その他の精神疾患にも当てはまると思います。

近親者たちは患者の問題を自分の問題として、四六時中悩んでしまうんですね。

そしてやがて親近者は心を病んでしまいます。

これは誰も責めることができません。

一人で悩まず、たくさんの人の力を借りて立ち向かうことが大切だと思います。

 

 

 

20.恋心

 

エリザベス:
「あなたにお礼を言わなければ」

「命の恩人には一体どんなお礼をしたらいい?」

ジョーンズ:「礼なんかいいよ」

エリザベス:「でも命を助けてもらったのよ」

ジョーンズ:
「話の種にすればいい」

「キャンプで子供たちに聞かせて怖がらせる」

「気をつけた方がいいよ、バレリーナの先生」

エリザベス:「そうね」


 

ある日、エリザベスはピアノを弾いているジョーンズを遠くから見つめます。

エリザベスはジョーンズを段々と意識しはじめるんですね。

ジョーンズはアマンダに卓球を誘われました。

老人の患者が勝手に審判をしたり、ボールを隠して逃げたりします。

めちゃくちゃなゲームとなりました。

ジョーンズはテレビを見ている最中に看護婦から薬を飲むように言われます。

ジョーンズは苛立ち、薬をぶちまけてしまいました。

ジョーンズの心のバランスが危ういのがとても分かるシーンです。

躁の快感が忘れられず、うつの状態に絶望を感じるジョーンズはもう限界に来ていました。

再びエリザベスと面談します。

 


ジョーンズ:
「やはりだめだ」

「無駄だ」

「努力してくれた事は分かるけど...」

「ここから出してくれ」

エリザベス:「薬のせいなの?」

ジョーンズ:
「エリザベス、僕は中毒患者だ」

「躁状態が必要なんだ」


 

患者さんは躁や軽躁状態を欲するようになるんですね。

それだけ、気分のいい全能感です。

この病気の恐ろしさです。

 


ョーンズ:「あの状態がないと生きていけないんだ」

エリザベス:「鬱が次に必ずくるわ」

ジョーンズ:「あれは覚悟の上だ」

エリザベス:
「もう忘れたの?」

「この病院へ来た時、ほっとけば自殺していたわ」

ジョーンズ:
「病院に来たんじゃない」

「君の所へ来たんだ」

「僕の命を助けてくれた女性だから」

エリザベス:
「じゃあ、私たちはおあいこね」

「もう一度言わせて」

「この間のお礼を」

「あの時のあなた、本当に感心したわ」

「あなたは人の扱い方を心得てるわ」

「羨ましいわ」

「あなたは才能のある人よ」

ジョーンズ:
「僕は3歳でモーツァルトを弾いた」

「12歳であらゆる本を読んだ」

「18歳の時は全世界が我が物だった」

「ある日目覚めたら病院だった」

「正常じゃない、昔からだ」

「お願いだ、もう我慢できない。ここから出してくれ」

「僕の力だけではもうどうにもならない」

エリザベス:「そうね、分かるわ」


 

絶望に苦しむジョーンズにエリザベスの瞳から涙が流れ、暗闇に光るライトで輝きました。

 


ジョーンズ:「苦しい...」


 

苦しむジョーンズの姿にエリザベスはいたたまれなくなり、彼の頭に恐る恐る手を伸ばします。

二人の心が触れた瞬間でした。

 

 

 

21.主治医と患者

 

アマンダの両親が転院を希望していました。

 


アマンダの父親:「お世話になりましたが、娘は引き取る事にします」

アマンダの母親:「温かい家庭もありますし...」


 

アマンダには出て行きたくないという気持ちや不安が顔の表情に出ていました。

そこには両親に言いたいことが言えない家族関係だということが想像できます。

 


Dr. キャサリン:「先生の意見は?」

エリザベス:
「もう学校へ行けるわ」

「精神的にも強くなった」

「感じるでしょ?」

「でも治療はやはり続けなくてはいけません」

「次は火曜の朝だったはね」

「いいわね?」

アマンダ:
「実はうちの両親が別の治療師を知っていて、そっちに行くようにと...」


 

別れ際にアマンダは振り返り走ってきて、泣きながらエリザベスとハグしました。

ここで皆さんに、このいつまで続くか分からない、辛い不安な世界に住む患者にとって、主治医や心理士、訪問看護士がどれほど大切な存在かを知って欲しいと思います。

毎週、隔週の診察の日まではどうにか生き延びようと、その奪われた活力の中で、それでも振り絞って耐え忍ぶ患者さんがほとんどだということを知って欲しいのです。

それほどまでに患者と主治医や心理士は密接な関係です。

精神科は予約しなくてはならないほど、混み合っています。

その中で主治医が患者の話を聞けるのは5分〜10分と短い時間です。

中には1分という病院もあるようです。

精神疾患は服薬治療と心理療法と2つに分けることができます。

服薬治療をベースとしていますが、心理療法はそれと同じくらいの治療効果があるとエビデンスがあります。

保険治療が可能な心理療法もあります。

毎年22000人の自死される方の多くが精神疾患です。

3337人が家庭問題、11014人が健康問題(うち精神疾患は7587人)。

自死者の多くは突発的で一時の衝動で行うことが多いです。

うつの希死念慮で頭がいっぱいの患者ならば、必ず服薬や心理療法で改善できます。

考えて考えた末の結論ならともかく、誰かの理解と助けがあれば、死なずに住んだ命が毎年たくさん消えていっている現状です。

双極症にかぎらず、こういった心理療法への人材とその待遇をよくすることで、救われる命がたくさんあります。

 


エリザベス:「いつでも電話してきてね」

Dr. キャサリン:「彼女の無事を祈りましょう」

エリザベス:「今、時間がありますか?」

Dr. キャサリン:
「これから会議なの」

「でも、いいわ」

エリザベス:「いいえ、じゃあ明日ご相談が...」

Dr. キャサリン:「じゃあ、明日ね」

 

 

 

22.もっと知りたい

 

スーザンが病棟まで訪ねてきました。

スーザンはジョーンズとのひと時を楽しそうにエリザベスに話します。

 


スーザン:

「彼のような人は初めてよ」

「言うこと、なすことが驚きで...」

「クレイジーだけど楽しかったわ」

エリザベス:「クレイジーって?」


 

エリザベスは少し差別的な言葉にムッとします。

女としての嫉妬が伝わります。

 


スーザン:
「例えば2人でホテルへ入ったの」

「サービス係がシャンパンを運んで来たら、彼を浴室へ呼び込んだのよ」

「私たちはお風呂に入ってて、彼ったらまっ裸のまま立ち上がるの」

「信じられる?」

エリザベス:「彼がどこにいるかは、医師と患者の秘密でお教えできないの」

スーザン:「じゃあ、私の電話番号を...」

エリザベス:「伺っておくわ」

スーザン:
「彼は独身だと思うわ」

「恋人の話はしたけど、エレン...何とか」

「音楽の勉強をしていたとか」

エリザベス:「名字は分かる?」

スーザン:
「エレン...何とか...」

「でも彼女は死んだと言っていたわ」

「私はホッとしたけどね」


 

エリザベスはエレンを知り合いに調査してもらいます。

発症の原因を突き止めようという精神科医としての心と、彼をもっと知りたいという女性としての心とが同居しているんですね。

 

 

 

23.トラウマ

 

そしてジョーンズと再び面談をします。

 


ジョーンズ:「何の話をする?」

エリザベス:「何でもいいわ」

ジョーンズ:「じゃあ、君の事を話そう」


 

エリザベスは無言になり、反応しませんでした。

 


ジョーンズ:「なら君が話題をくれよ」

エリザベス:「エレンのことは?」

ジョーンズ:「どのエレン?」

エリザベス:「あなたのエレンよ」

ジョーンズ:
「僕のエレンか。分かった」

「エレンか...」

「エレンだけが本当に僕を愛してくれた」

「あの美しい赤毛...」

「僕を第二のモーツァルト、シェークスピア、ピカソ、ニジンスキーだと言った」

「なのに彼女は死んでしまった」

エリザベス:「どうして亡くなったの?」

ジョーンズ:
「空中ブランコから落ちたんだ」

「いや違ったよ」

「セメント・ミキサーで...」

「...今さら関係ない!」

エリザベス:
「そうね」

「名字は?」

ジョーンズ:「忘れたよ」

エリザベス:
「ライアンでは?」

「エレン・ライアン?」


 

それを聞いたジョーンズは寝そべっていたソファから起き上がり、顔つきが変わります。

エレンのことを無理やり思い出させたエリザベスの残酷な行為に怒ります。

 


ジョーンズ:
「あんたはビョーキのクソ女だ!」

「僕のスパイをしたのか」

「ミスFBIか?」

エリザベス:
「彼女と話をしたわ」

「今はエレン・ノートン夫人よ」

「アイオワに住み、子供が2人いるわ」

「『あなたが治療を受けてよかった』と言ってたわ」

「昔のあなたは医者に行く事を拒否して、彼女は去った」

ジョーンズ:「違うよ、彼女は死んだ」

エリザベス:
「いいえ、生きてるわ」

「あなたのご両親もいるの?」

ジョーンズ:
「両親は最初からいないよ!」

「クソッ!」

「自分を何だと思ってるんだ!」

「医者だって?」

「自分こそビョーキだ!」

「人を病人扱いして、自分はスパイのマネか!」

エリザベス:「病気を治そうとしてるのよ...」

ジョーンズ:「ビョーキなのはあんただ!」

エリザベス:「落ち着いて。病気は治るのよ」

ジョーンズ:
「友達だと思ったのに!」

「ひどい女だ。僕を裏切ったんだ」

「あんたを信用した僕がバカだったよ」

「もう出ていくよ」

「これきりだ、友達!」


 

人にとって、耐えられない悲しみの過去。

それは心の平静のために、無意識に心の奥底に隠されます。

これがトラウマというものです。

無理に思い出そうとすると身体が動悸に襲われたり、フラッシュバックします。

とても危険な行為です。

 

 

 

24.土砂降りな心

 

夜の土砂降りの雨の中、ジョーンズは怒り叫びながら病院のゲートから出ていこうとします。

 


ジョーンズ:
「お前は何てバカだ!」

「二度とするな!」

「バカヤロー!」

「病院なんかに行ったからだ」

「バカだ。お前はバカだ!」


 

エリザベスが車で追いかけて来ました。

 


エリザベス:「お願い、車に乗って」

ジョーンズ:「消えろ!」

エリザベス:「お願い、乗って」

ジョーンズは車を蹴り飛ばします。

エリザベス:「話をさせて」

ジョーンズ:
「断る」

「ビョーキ女に用はない。行ってくれ」

エリザベス:「お願い。私の話を聞いて」


 

エリザベスは車を止めてジョーンズの元に駆け寄ります。

 


ジョーンズ:
「何だよ」

「話せ」

「勝手にしろ」


 

エリザベスは黙って後ろから付いていきました。

 


ジョーンズ:
「分かった。許してやる」

「いいだろ?だからもう行ってくれ」

エリザベス:「謝るわ。患者のプライバシーを...」

ジョーンズ:
「待ってくれ。僕は患者じゃないぞ」

「自発的に入院して、退院したんだ」

「友達を求めてね。だがバカだったよ」

エリザベス:
「エレンはレコード店や音楽会に行く度にあなたの名前を探すって...」

「なぜ死んだなどと言ったの?」

「なぜそんな事を言ったの?」

ジョーンズ:
「本当に死んだからさ。君も同じさ!」

「『僕の名を探す?』じゃあ、なぜ僕を捨てたんだ?」

「知りたいね!」

「僕が面倒を起こすから、誰も彼も逃げていく...」

「僕と関わった人間は皆逃げる」

「突き放され、自分一人になっちまう」

「いつもそうだ」

エリザベス:「自分が可哀想?」

ジョーンズ:
「だから死んだ事にして諦める」

「金魚と同じさ。1匹死ねば次を買えばいい」


 

重ねて言いますが、患者は本心ではない病状のせいで、愛情を持って接してくれる親しい人々とのコミュニケーションが絶たれて、残酷な言葉を発してしまいます。

患者にとっての「重要な他者」もまた孤独になります。

そしてその苦しさから当人と離れる決断をします。

良心の呵責でその後も苦しむ人達もいるでしょう。

人にはその人だけの人生がそれぞれあります。

離れずにいることを誰にも強制はできません。

残された患者は去っていかれた孤独とそれを引き起こした言動への自責の念で、ずっと心は切り裂かれたままです。

こうしたことの繰り返しから、やがては患者を絶望に追いやり、世をあきらめて自死してしまうのだと思います。

 


エリザベス:
「私はあなたを気づかってる人間よ」

「ほっとけばあなたは絶望して自殺するわ」

「そうでしょ?」

ジョーンズ:「ほっといてくれ!」

エリザベス:
「あなたのすばらしさ...」

「あなたの才能は永遠に失われる」

「私に何が残るの?」

「医者の立場を忘れた女の切り裂かれたハート」

「私はどうしたらいいの?」


 

去られる気持ちを痛いほど知っているジョーンズ。

自分の自死で取り残されるエリザベスの気持ちが分かります。

ジョーンズはエリザベスの手を強く握りました。

 


ジョーンズ:「先生。僕らはここで何をしたらいい?」

エリザベス:「分からないわ」


 

”心のままに” 唇を重ね合わせました。

そして二人は関係を持ちます。

 

 

 

25.医師として

 

ジョーンズは病棟に戻り、元の生活に戻ります。

 


ジョーンズ:
「おはよう。笑顔が素敵だ」

「挨拶をしたくてね」


 

ジョーンズはエリザベスを気遣い、会話は最小限にして立ち去ります。

エリザベスは患者と関係を持った医師としての後悔に堪えることができませんでした。

そしてパトリックに打ち明けます。

パトリックはエリザベスの医師としてのキャリアを考え、ジョーンズを追い出します。

結果としてジョーンズはエリザベスと引き裂かれることになりました。

ジョーンズは別の病院に移されることになります。

ジョーンズは必死に説明を求めてエリザベスに会おうとしました。

エリザベスは自室のドアを閉めて、彼を遠ざけます。

 


ジョーンズ:「エリザベス、エリザベス!」


 

ジョーンズはドアを何度もノックします。

 


パトリック:
「待てよ。君は別の病院へ移るんだ」

「それまではローゼン先生が君の治療をする」

ジョーンズ:「病院を移るならエリザベスの口から聞きたい」


 

ジョーンズはドアを何度も何度もノックしました。

警備員が来て彼を取り押さえました。

エリザベスはジョーンズの声を聞きながら必死に堪えていました。

ジョーンズはまたもや絶望のどん底に突き落とされます。

ジョーンズは病院を移されましたが、退院したとエリザベスは聞かされます。

 


パトリック:「きっと彼は会いに来る」

エリザベス:「いいえ、来ないわ。彼にとって私は死んだ女よ」


 

夜中にエリザベスに電話が入り、アマンダが自死したと告げられます。

エリザベスは心あらずで、彼女の面談の映像を何度も見返していました。

 


アマンダ:
「死なんか平気よ」

「大抵の人は死というものを怖がってるけど、わたしは平気よ」

「死んだら安らぎが得られる」

「死は温かい。ボーエン先生、あたしはうつくしい?」


 

そしてジョーンズの映像を見返します。

 


ジョーンズ:
「桟橋の手すりに登った時、バカな奴だと思った?」

「今でもそう思ってるんだろ?」

「『ケガして何になるんだ?』と」

「だがあそこに登るって事が大事なんだ」

「そのためにすべてを賭ける」

「エリザベス、すべてを賭けるほど大事なものが君にある?」

「このテープはためになるよ。消さずに保存をしておいて」


 

涙を浮かべながら、その映像を見ていました。

エリザベスは医師としての自信を完全に失っていました。

患者のためになにが自分はできるのか。

本当に助けることができるのか。

エリザベスはジョーンズをこの世から失ってしまう恐れを懐き始めました。

上司の精神科医に辞表を出しに行きます。

 


Dr.キャサリン:「どうしたの?」

エリザベス:「辞表です...」

Dr.キャサリン:「誰かを殺したの?」

エリザベス:
「過ちを...」

「許されない事をしたのです」

Dr.キャサリン:「ジョーンズね?」


 

エリザベスはジョーンズを必死に探しました。

 

 

 

~PART④へ続く~

 

 



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