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食品ロス 減らさないのが「損」

2020年01月13日 | 食・レシピ

 東京新聞社説 2020年1月11日
 
 年末年始の宴会シーズンが終わると「恵方巻き」。食品ロスの季節は続く。国連に「減らしましょう」と言われるまでもなく、食べないものを買うなんて、家計簿的にも、もったいない。
 外食チェーン「ワタミ」のSDGs(持続可能な開発目標)推進本部長、百瀬則子さんは、昨年春の就任早々、全店からの食品ロスを、二〇三〇年までに半減する方針を打ち出した。
 食品ロスとは、食品廃棄物のうち、まだ食べられるのに捨てられてしまったものをいう。
 百瀬さんは以前、大手スーパーの環境・社会貢献担当執行役員として、生ごみのリサイクルに取り組んだ。
◆ジャガ芋に教えられ
 毎日、大量の食品ロスを出してきた。品質や味とは関係なく、その日焼いたばかりのパンや、おいしそうな弁当などが、閉店と同時に売り場の棚から、ごみ袋へ直行するのを見ていたからだ。
 「食品」と言っても、元は生き物、命をむだにしていることや、作り手の苦労を思うと、心が痛む日々だった。
 三年前、海外援助の非政府組織(NGO)の一員として、エチオピアの貧しい村を視察した。
 村人の家に招かれ、おもてなしを受けた。コーヒーの葉っぱでわかしたお茶と、ふかしたジャガ芋を一つ。その日の一家の糧を削って供してくれたのだった。 
 食べ物の貴さが、あらためて身に染みた。
 国内で発生する食品ロスは年間約六百五十万トン。東京都民が一年間に消費するのとほぼ同量が、ごみになる。
 温暖化による異常気象が世界を覆い、農業や漁業にも悪影響が広がっている。
 食料危機はもはや、途上国だけの問題ではなくなった。
◆「半減」が世界の目標に
 例えばフランス政府は、二五年までに一三年比で50%削減する目標を掲げている。
 農業省と食品企業との間で削減のための協定を結び、食べ残し食品の持ち帰りが可能なレストランをウェブ上に登録、紹介するなど具体策を進めている。
 日本でも昨年十月、「(三〇年までに)世界全体で一人当たりの食品廃棄を半減」というSDGsの目標を踏まえた「食品ロス削減推進法」が施行され、国民や企業、自治体などに、取り組みを求めている。
 外食産業における食品ロス削減のキーワードは「食べきり」だ。
 ワタミでは昨年の秋から全店で、宴会客に「30・10運動の声掛け」を試みている。
 「30・10運動」は、東日本大震災の年に長野県松本市で始まり、全国に広がった。宴会の乾杯後三十分と、お開き前の十分間は、食べることに集中するよう、幹事から呼び掛けるという取り組みだ。この取り組みを店の方から宴会客へ積極的に勧めることにした。
 持ち帰りも推奨する。プラスチックごみ削減の意味も込め、パックの素材を100%植物由来のものに切り替えた。
 「食品ロスの削減は、お客さまとのコミュニケーションから」と百瀬さんは、考える。
 もちろん外食産業の取り組みだけで、食品ロスはなくせない。
 日本全体で発生する食品ロスの約半分を家庭系が占めている。
 京都大地球環境学堂准教授、浅利美鈴さんらの食品ロス調査(一四年)によると、七千二百人以上の回答者のうち、魚介・肉類や豆腐・納豆類では二割以上、野菜・果物類については約四割が「ほとんど手付かずのまま廃棄したことがある」と答えている。
 「消費者の意識改革が結果に直結する希少な分野。私たち一人一人にできることが非常に大きいということは、間違いありません」と、浅利さんは断言する。
 消費者庁は家庭でできる食品ロス対策として、買い物の前に冷蔵庫をチェックする▽使い切れる分だけ買う▽「在庫一掃の日」をつくる▽余剰在庫をフードバンクに提供する-などを挙げている。
◆食品ロスは家計ロス
 ただ、「宴会の作法や冷蔵庫の中のことまで、とやかく言うな」という反発の声もある。
 だが、考えてみれば、食品ロスとは、膨大な経済ロスではないのだろうか。
 みずほ総研の試算では、スーパーと外食産業から出る事業系食品ロスのコストは、年間約七千五百億円にも上るという。廃棄費用も含め、結局は消費者負担ということになる。
 同様に、各家庭の冷蔵庫や食品棚の「不良在庫」は、不要な出費。食品ロス対策は、環境にやさしいだけではなく、家計にもやさしい行動なのだ。
 減らさないのが損(ロス)ではないか。



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