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BTS問題のヘイト的本質とファンダムの新しい力(後編)

2018年11月17日 | 社会・経済

BTSファン「ARMY」がスゴイ! ネトウヨの差別攻撃にもメディアの嫌韓にも負けず、国境を超える連帯と勇気

  リテラ 2018.11.13.

 

  BTSバッシングがエスカレートし、ネトウヨたちは「原爆」「ナチス」と次々と新しいバッシングを展開しているが、その多くが歪曲やでっち上げで、バッシングの本質は「韓国ヘイト」であることは前編でお伝えした。

 しかし、メディアではこうした冷静な議論、検証は一切なく、ネトウヨと一緒になって、BTSバッシング・韓国バッシングをエスカレートさせている。そして、少しBTSに好意的なことを語っただけで、炎上し、総攻撃を受ける状況が起きているのだ。

 たとえば、昨日の『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ)でトレンディエンジェルの斎藤司が「パフォーマンスとか歌とかもすばらしいし、世界に向けた今までの人たちと違うような感じのパフォーマンスをしている。個人個人も、若いし、人なつっこいし、日本語も上手だし、すごい好きなんだな日本のこと、みたいに僕は個人的には感じた」「だから、いまいちTシャツ云々が何故こういうことになってしまったのかということがいまいち僕も分からないし、音楽と政治みたいなものが一緒になってしまうというのがもったいないなと思う」とBTSと共演した素直な印象を語ったのだが、ネットではそれだけで「トレエン斎藤が反日というのがよく分かりました」「反日芸人発見」などと、大炎上した。

 また、今日の『グッディ!』では、北村晴男弁護士が事務所ぐるみでの確信犯的な反日行為だと陰謀論を主張した際、サバンナの高橋茂雄が「意図があってやるならもっとわかりやすくやると思う。ただのファッション雑誌に帽子1回かぶっただけ。ツアーグッズとして出してるんやったら意図あると思うけど。謝罪して削除してるっていうのは意図的じゃない」「これ彼らがデザインしたものじゃないと思うんです」などと冷静に反論。すると、高橋に対してさっそく「サバンナ高橋、貴様もやな」「サバンナ高橋、今すぐ日本から消えろ」などと、攻撃が浴びせられている。

 ようするに、BTS問題は徴用工問題以降、急速に悪化する日韓の分断に利用され、擁護どころか冷静な議論すらタブーとなってしまっているのだ。

 しかし、そんな絶望的な状況のなかで、一筋の希望のようなものもある。それは、「ARMY」と呼ばれるBTSのファンたちがこうした動きに臆することなく、敢然と声を上げていることだ。

 「原爆Tシャツ」問題が持ち上がった当初から、BTSのファンたちは原爆Tシャツのデザインの悪趣味さや軽率さを指摘しつつも、Tシャツの主題は「原爆」ではなく、「光復節」(日本の植民地支配から解放された8月15日のこと)に関するものであり、決して「原爆万歳」と賞賛するものではないとの正しい情報を広めようとしていた。ツイッター上では「#LiberationTshirtNotBombTshirt」(光復節Tシャツは原爆Tシャツではない)というハッシュタグを用いて、盛んに反論ツイートを行ってきた。

 その後、ネトウヨたちが次々と新しいバッシングを始めても、あきらめることなくそのデマや歪曲にこうして逐一反論し続けている。

〈これ原爆って言ってる人いるけど完全に飛行船だよね。それにユニセフの動画見てからツイートしましたか? 司会の方が『飛行船の模型持って撮ります』と言ってましたよ?〉

 〈この写真には写っていない下のほうにANTIとかかれています。ANTIというのは日本語で反対という意味です。このブルゾンは原子爆弾反対という意味を持っています〉

 〈(RUN Japanese ver.)のpvが3月11日に出て、ワンシーンに水に溺れるシーンがある→東日本大震災を揶揄みたいなのもありますが、完全に根も葉もないイチャモンです。溺れるシーンはこの曲も含む《花様年華》シリーズの一貫したテーマの1つです〉

 〈これは花様年華シリーズのコンセプトであり、韓国版のMVにも水に沈むシーンはあります。東日本大震災をネタにしたものではありません〉

 〈帽子は完全にアウトですけど、2014年の出来事で、用意した雑誌社が削除、謝罪済み〉

 「ソテジさんのコンサートで、「教室イデア」の曲の時にコンセプトが不良だから長ラン着てるのになぜこれがナチスの親衛隊だと言われてるの?」

 K-POPグループを支えるファンダムの力

 また、彼らはBTSのひとつひとつの言動を擁護するだけでなく、このBTSバッシングの本質が「韓国差別」であることも喝破し、それにも抗議の声をあげている。

 〈原爆弄りは本当にしてはいけないことです。だからあのTシャツを着てしまったBTSのメンバーは軽率だったと私も思っています。しかし高須さんは「それは韓国では解放の日かもしれないが、日本では悲劇の日なんだ」ということを“教える”のではなく、「原爆少年団」と弄り、晒しあげ、20代の若者の未来を“潰す”行動をしている。これは虐めと同じだと思います。その姿が大変不快です。〉

 〈BTSが日本で活動して何が悪いの? 韓国人だからって差別とかよっぽど叩いてる人の方が許せないんだけど。同じ人間として嫌になるわ。〉

 〈BTSがMステ出演無くなるのはおかしい、そもそも日本人が、韓国に対して慰安婦問題とか、そもそも戦争を起こした事が悪い

BTSは何も悪く無いじゃん

反日の人への悪口とか文句ってもう日本では、差別みたいになってる〉

 また、本サイトは9日の記事で、BTSが「韓国バッシング」の道具にされていることを指摘したが、この記事も、ARMYたちの手によって、英語や韓国語はもちろん、スペイン語やアラビア語にまで翻訳され、世界中に拡散している。

 これまで芸能人やアーティストがネトウヨから激しい攻撃にさらされるとそのファンたちも沈黙。結果的に芸能人やアーティストが孤立し、謝罪に追い込まれるということが繰り返されてきたが、ARMYたちはネトウヨたちのデマ攻撃や差別攻撃に必死で抵抗し、少しでも問題の本質を知らせようと地道に活動を続けているのだ。

 いったいなぜ、彼らはBTSのためにここまで真摯に向き合い、闘えるのか。そこにはK-POPならではのファンダム文化が大きく関係している。「ファンダム」と呼ばれる熱心なファンの存在感やコミュニティの連帯感、影響力の大きさは、とりわけK-POPでよく見られるものだ。

「ユリイカ」(青土社)2018年11月号のなかで北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授の金成玟氏はこのように記している。

〈たびたび韓国政府をK-POPの立役者として取り上げるのを耳にするが、もし立役者を選ばなければならないのなら、その答えはファンダムになるべきである。H.O.T.からBTSまで、数々のアーティストを支えてきた献身的なファンダムこそ、K-POPが築きたかった、そして築かなければならなかった「ソーシャルメディア的想像力」の音楽空間を可能にした存在だからだ〉

 こうしたファンダム文化のなかでも、BTSを支えるファンであるARMYはとくに連帯が強いと言われている。sMエンターテインメント、YG エンターテインメント、JYPエンターテインメントといった大手芸能事務所ではなく、Big Hitエンターテインメントという新興の事務所から生まれたBTSが「ビルボード総合アルバムチャート2作連続1位」という東アジアのグループが歴史上誰もなし得なかった偉業を(しかも、英語ではなく韓国語で歌ったアルバムで)達成した背景には、最強のファンダムであるARMYの存在がある。

 秋元康コラボ、女性蔑視歌詞…ARMYの声がBTSを変えた

 しかも、ARMYはたんに、BTSの活動を支えるだけでなく、その表現をブラッシュアップする役割も果たしてきた。BTSの向かう方向性にARMYが疑問を感じたときは遠慮なくその不満をぶつけ、そういったファンの行動がBTSの動きを変えてきたのだ。

 その典型が2015年末から2016年の夏にかけて起きた炎上だろう。「ホルモン戦争」の〈女は最高の贈り物だ〉や、「Can You Turn Off Your Phone」の〈食事を目で食べるっていうのか? 女みたいに〉といった歌詞が女性蔑視的であるとして、ファンからSNSなどを通じて異論が噴出したのだ。

 これを受け、事務所は謝罪に加えて〈今回自主検討と論議を通じて、音楽創作活動は個人の成長過程と経験、そして社会から見て学んだことの影響を受けるため、どのような社会の偏見や間違いでも自由にはなれないことを学ぶこととなりました。また社会での女性の役割や価値を男性的な観点にて定義しようとすることも正しくない可能性があることを知りました。(中略)今後も継続して防弾少年団の成長を見守っていただき、不足している点について指摘していただければ、より努力する姿でファンと社会の助言に耳を傾けます〉(2016年7月6日付ニュースサイト「もっと!コリア」)とコメントを出した。

 ただテンプレートの謝罪を出すだけにとどまらず、騒動を受けてミソジニーへの真摯な反省を自分たちなりの言葉で発信する対応は、多くの人々を驚かせた。「アイドル」と「ファン」の間で完璧に意見の交換が成り立っている関係性は、他のグループではなかなかつくれるものではない。

 これは少し前の秋元康とのコラボ中止騒動においても同様だ。ファンはインターネット上で意見を述べるばかりではなく、事務所のビルにコラボ中止を要請する付箋を貼り付けるなどの見事な非暴力抵抗行動を起こした。

 今回の「原爆Tシャツ」問題をめぐるバッシングに対してARMYたちが堂々と反論、抵抗しているのは、自分たちがBTSを盲信してきたのでなく、「いけないことはいけない」と声を上げてきたという自負があるからだろう。だからこそ、BTSの軽率さについては諌めながらも、問題の本質を見抜き、バッシングに「NO」の声を上げることができるのだ。

 しかも、ファンダムはただ、バッシングに「NO」を叫んでいるだけではない。ヘイトを乗り越える新たな“連帯”の芽になろうとしている。

 徴用工問題などをめぐって、激しい憎悪と差別が飛び交い、これまでにない分断が進行しているネットにあって、日韓のARMYの周囲には180度ちがった光景が広がり始めているのだ。

 たとえば、BTSが「韓国バッシング」の道具にされていることを指摘した本サイトの記事を翻訳した韓国のファンに対して、日本のファンが〈韓国語に翻訳してくれてありがとうございます 日本のarmyもくやしいです。もっとひろめてください。BTSをまもりたい〉とリプライし、そのリプライを見たまた別の韓国のファンが〈日本のarmyですか? あなたはとても優しいんですね。私たちはあなたを愛しています。いつもBTSの側にいてくださってありがとうございます〉(編集部訳。原文は英語で書かれている)と返信するというやりとりがあった。

 韓国差別も日韓関係悪化も超えて世界中で連帯するARMYは希望だ

 また、韓国のファンによる〈日本のarmyの皆さん、最近の日韓関係には摩擦があるのにも関わらず、少年たち(BTS)に愛を示していただきありがとうございます〉(編集部訳。原文は英語)というツイートもみることができたし、日本語でこのようにツイートしている人たちもいた。

 〈日本語ができないので翻訳機を使います。すまないと思わないでください。 J-armyの過ちではありません。少年たちを一緒に大切にしてくれる人じゃないですか。心を慰めて,今は安らかな寝床に入ったことをお祈りします。ありがとう〉

 〈こんにちは。韓国のarmyです。韓国は日本の行動に腹が立ちました。でも,私は韓国を理解しようとするarmyを愛しています。韓国を理解してくださって,ありがとうございました〉

 〈外国ARMY代表として一言。

 今までの問題のせいで全世界のARMY達が不安になってしまったが、

イルアミの皆さんを責めたりするツイートを見たので、イルアミさん達に謝りたいと思います

 バンタンのことを愛してくれてありがとうございます

 そして、ご苦労様でした。

#BTSの日本活動を永遠に応援します〉

 (編集部注:「イルアミ」とは「日本のARMY」の略語で、「バンタン」はBTSのことを指す)。

 

 日韓だけではない。BTSは世界中にファンのコミュニティがあり、そういった多くの国のファンからも、バッシングと闘っている日韓のARMYを励ます声が届いている。その励ましに対して、ある日本のファンはこのようにツイートして感謝を示していた。

 〈心痛い中、バンタンで検索すると色んな国のarmyがjarmy頑張れって言ってくれて、“世界のarmyは一つ”て日本語でハッシュタグつけてくれてて嬉しくてまた涙。ほんとarmyでよかった。BTSだからこそ国境越えてこんな素敵なファンで溢れてるんだよ。

#BTS

 #バンタン

#世界のARMYは一つ〉

 日韓関係が悪化し嫌韓感情が極まっているなか、このように若者たちが草の根で友情を育んでいる姿は数少ない「希望」だ。本サイトは9日の記事で、「K-POPは人々の分断を煽る道具ではない」「ポップミュージックなどの文化を通して交流することは、国際親善のきっかけのひとつとして大きく機能するもの」と書いたが、まさにそれが現実となっている。

 ネトウヨたちは、ARMYたちにも心ない言葉を投げつけ、映画やCMにも電話攻撃、ライブ会場などでの抗議行動も始めた。そうした差別主義者たちの卑劣な行為を批判してくれるメディアも皆無だ。そんな状況のもと、恐怖や不安を感じているARMYは少なくないだろう。

 しかし、それでも屈することなく声を上げ、国を超えて連帯するARMYを見ていると、「原爆少年団は日本に来るな」「韓国とは国交断絶」などとわめき散らすネトウヨが幅を利かす時代はきっと終わる、そんな一縷の希望を抱かずにはいられないのだ。(編集部)