余桃之罪、もしくは電光朝露

関西フィル、日本センチュリー、京都市交響楽団、大阪フィルの定期会員です。アイドルやら声優やら。妄想8割、信憑性皆無。

京都市交響楽団スプリング・コンサート

2010年04月11日 | 京都市交響楽団
10.4.11(日)14:00 京都コンサートホール 大ホール
指揮/広上淳一
独唱/馬場菜穂子(龍馬伝独唱/京都市立芸術大学大学院生)
司会/豊田瑠衣
曲目:
第1部NHK大河ドラマのヒーローたち
「龍馬伝」(佐藤直紀)H22年第49作
「赤穂浪士」(芥川也寸志)S39年第2作
「元禄太平記」(湯浅譲二)S50年第13作
「花神」(林 光)S52年第15作
「翔ぶが如く」(一柳 慧)H2年第28作
「利家とまつ」(渡辺俊幸)H14年第41作
「篤姫」(吉俣 良)H20年第47作
「天地人」(大島ミチル)H21年第48作
第2部クラシック音楽界のヒーロー、ベートーヴェン!
ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調op.68「田園」
J・ウィリアムス/「スーパーマン」より主題曲(アンコール)

昨年から始まったスプリングコンサート
今年も完売です。
前半は大河ドラマ主題曲演奏を京響の特徴に加えてみようという広上さんの考えからそれらのセレクション、後半はバキッと田園1曲をお聴きいただこうという趣向です。

龍馬伝。なんといいましても現在絶賛放映中の龍馬伝OPは広上さんの指揮なわけです。
http://www.viddler.com/explore/maizi1962/videos/14/
TVで見ても躍動感のある曲ですが実際聴いてもなかなか激しい、馬場さんはマイクありでアエアエオエオエ歌います。エスニックな感じがする。北条時宗(H13年第40作)系?大泉さんが出てるのでなんとなく見てますがね。
フリーアナウンサーの豊田さん登場、九州の局アナからフリーになった方だそうです。広上さんからコンサートの趣旨説明「4月に新入生になる、社会に出られる、はたまた3月で学業を終えられたり定年となられて第2の人生、新しい生活を始められる方へのお祝いのようなものです」
「前半はNHK大河ドラマのヒーローたちということですが」と振られて「NHKの回し者ではないですが、司馬遼太郎先生の作品などを通じて歴史が好きになりまして、年号とかは覚えられませんが、人物が好きなんですね」
「福山さんはお好きですか」と何故か瑠衣に質問する広上さん「え?はい好きです」「そうですか、私は岩崎弥太郎が好きです・・・福山さんと香川さんだったらどちらが好きですか?」
一体何のコンサートなんだ(笑)
続いての赤穂浪士について。広上さんの父上はNHKにお勤めだったそうで、はっきりとはおっしゃられなかったが、大河にも関わっていたことがあるっぽい。最高視聴率53.0%という大河史上最高記録の名作です。広上さんは当時5歳だけども覚えているそうで放送時間が今の日曜8時ではなかったことなどをコンマスの穣さんを巻き込んで披露。しかし赤穂浪士を知ってる人のほとんどが長谷川一夫扮する大石内蔵助の「おのおのがた・・・」の真似をするわけですが、広上さんも当然のようにご披露。おぢさんの父も12月になると必ずやります。
赤穂浪士
狭い音域で動く旋律を繰り返しつつゆるやかに重ねられ増えてゆく音量、チェンバロとギターが隠し味になっている素晴らしい作品。大河のために書いたわけではなく使いまわしだというのが信じられん。
視覚的にも音響的にも印象的な楽器が使われていたのでその話題に。「木の板2枚をちょうつがいで繋いでパチンと叩く楽器なのですが、むちの音がするので『むち』と言います。実際に縄を使う楽器もあるのですが、それも『むち』と呼ぶのだそうで・・・」
「元禄というとどんな印象ですか?」と訊いたのは何故か広上さん。言いよどんで「いや、私が質問する立場ですので」と瑠衣。そらそうだ。「元禄は太平の世、人心も安定した時代で、平成の今の世にも似ています。ただそういう表面上の平和の底でふつふつと沸き立つ、蠢くものも出てくるわけです」
元禄太平記。この曲の冒頭や歌舞伎のような打楽器の部分は華麗な江戸時代を表現するSEとしていまやTVで多用されているので聴いた人もいるはず。武満と並ぶ世界的作曲家にして理論家、湯浅譲二らしい緻密に計算されて、なお作品世界に即した良い作品。湯浅譲二は徳川慶喜(H10年第37作)も担当していて、こちらも幕末の不穏な空気から新たな時代の輝きを見出そうと苦闘する素晴らしい主題曲になっているので聴いてください。
「はなのかみと書いて花神(かしん)と読みます。中国では花咲か爺さんをこう呼ぶんですね。時代のための花を咲かせていくが、自分は報われず死んでゆく、というような司馬先生の作品です。大村益次郎と高杉晋作が主人公の。曲は林光先生の作品です、明るく聴いていて心地よいと思います」
花神。きいてすぐに歌えないような音楽は音楽とはいえないし、音楽はだれもがわかるような音楽であるべきなんです。なぜかはわかりませんが、ぼくはそのようなことを思いながらききました。
「西田敏行は好きですか?」と訊く広上さん。西郷隆盛役だったからですね。「鹿賀丈史さんは?」これは大久保利通。「あの方は歌がお上手でしょう、ミュージカルもおやりになるし・・・料理の鉄人で知られてるのかな、あの妖しい主宰ね。今週は!・・・ピーマン。みたいな」
翔ぶがごとく。西郷と大久保の絡み合い対立してゆく運命の悲しさを表現する作品、怪しい雰囲気ではこれと信長(H4年第30作)が双璧ですな。演奏はこれが一番難しそうだった。実際合ってなかったし。
続いての曲は本放送ではオーケストラ・アンサンブル金沢が担当したもの。金沢での最終回視聴率が80%だったらしい。「金沢は(京響の)音楽監督だった井上(道義)先生が今指揮者をしてらして、是非皆様も金沢へ行かれてお聴きください」
利家とまつ。戦国と言うと大名メインのゲームばかりだったのがこの時期になると全武将プレイ可能なものが出てきたわけ。それだけ多様な人生を追体験したいという向きも増えたのだろうし、また大名や有名武将以外の情報が広く知られるようになったとも言える。これはそうした時代を受けての初めての試みだった作品。ただ前田利家で数字が取れるかという不安の表れか、近作以降、数字が取れるからと民放のドラマと大差ない役者が増えてゆく。作曲家の渡辺俊幸は毛利元就(H9年第36作)に続いての登板だけど、元就のほうが良いと思う。
篤姫。広上さんのところも「家内と娘がファンで。大河はその性質上、殺戮や血みどろの場面があるわけですが、日曜のゴールデンタイムでは敬遠されるになりましたし、女性の視聴者を意識した番組を作っていくとこういうものが人気になると・・・NHKの回し者ではありませんが」「来年はお江の方。茶々、初、江の浅井三姉妹の。しかも篤姫と同じ田渕久美子さんの脚本に吉俣良さんの作曲ですからご期待いただけるんではないかなと」
この曲は終始緩やかなテンポで叙情美たっぷり。案外こういう作品が大河の主題曲には無かったので、最初聞いたときはやられたなと思ったね。
本放送では小泉さんの指揮だった天地人。上杉謙信が好きな広上さん、「上杉景勝(北村一輝)と直江兼続(妻夫木聡)どちらがお好きですか?」「妻夫木さんで・・・」広上さんは作曲者の大島ミチルに会ったことがあるそうで「作品のスケールと違って華奢で小柄な方なんですよ」とのこと。おぢさん的には大島ミチルといえばワーズワースの庭の大島ミチルであり、風の大陸の大島ミチルであり、そしてあの傑作サントラ「NHKスペシャル大英博物館」の式部のメンバーだっちうところなのでスケールデカいのは重々承知。
龍馬伝もそうだけど、こういうアグレッシブでダイナミックな作品は広上さんに合うね。
小泉さんと先日放映された秋山先生とN響のライブと三者聞き比べると面白い。秋山先生の整然とした音作りの見事さ。この指揮を来週ここで見れる。嬉しい。

せっかくピアノが編成に入っているし、京都なんだから大河史上、記録に残る作品である花の乱(H6年第33作)をやって欲しかった。まあ応仁の乱で京都が焼け焦げる勢いの内容では縁起が悪くてやりようもないが・・・。

休憩挟んで後半は田園。
先日のワイルドで大人しさをかなぐり捨てたようなベト4に比べると、前半のプログラムに時間を割かれたのか中途半端な出来。広上らしいリズムの異様な扱いがときおり出てくるけども、全体としては平凡に流れてしまった。前半2楽章の終わりごとに拍手が起きる。
あら、一見さんはお断りどす、とは言わないの。どっちかといえば通い詰めてる連中こそ来てはいけない企画だから。一見さんで埋めたいの。京響楽しかったね、8月の定期は楽しそうだから今度家みんなで行ってみようか、ぐらいの反応が欲しいのよ。
だからここぞとばかり拍手に混じってやった。帰り際に「いやー、生の演奏は10年ぶりなんですがやはりいいですなあ」なんてウソまでつく始末だ。←

広上さんから「昨年から沢山のお客様にお越しいただけるようになって嬉しい、京都市交響楽団高い能力は私が保証します、レストランで食事をするように、月に一度京響の演奏会に来て気持ちよくなってください」

・・・やおら舞台袖から顔の濃いおっさんが登場、ヌッツォ、ヌッツォじゃないか!執行猶予が付いたから今年から活動を再開したと聞いていたが・・・そうか、新撰組!(H16年第43作)か。あれも広上さんの指揮だったし京都ゆかりの作品だからアンコールにはもってこいだよな。
というおぢさんの妄想はさておき。
アンコールはヒーローということでスーパーマンでした。アメコミヒーローって日本ではあまりウケないんだけど、このスーパーマン(とスパイダーマン)は例外的に日本でも人気が出た作品。妥当な選曲かな。

でもあれよ、大河ドラマ主題曲の音楽的な傑作は池辺晋一郎の元禄繚乱(H11年第38作)と信じてるけどね。
映像との総合的なものは新・平家物語(S47年第10作)ほどのものはないです。冨田勲がもう。
琉球の風(H5年第31作)の飛び道具っぷりも捨てがたいが。
あと、橋田壽賀子三部作のおんな太閤記(S56年第19作)いのち(S61年第24作)春日局(S64~H1年第27作)の坂田晃一の旋律美。










広上さんは来る4月25日に東フィルと今回の企画に武満&芥川の弦楽作品を合わせた企画をおやりになられます。
第44回午後のコンサート「大河の源流」
http://www.tpo.or.jp/concert/detail-1414.html
東京ですけど行ける方は是非。


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