MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『お江戸あやかし物語 つくろいものや はじめます』『あやかしの店のお客さま』

2013年10月08日 | BOOKS
『お江戸あやかし物語 つくろいものやはじめます』
『お江戸あやかし物語 あやかしの店のお客さま』
作:水沢いおり / 絵:石橋富士子
偕成社

 小学生が時代物を初めて読むときにおススメしたいシリーズです。
「小学5・6年生から」と書いてありますが、素敵な挿絵もたっぷりですし、ふりがなも全部の漢字についていますから低学年からでも読めるんじゃないでしょうか?
 時代物特有の言葉には、ちゃんとページの下に分かりやすい説明がついているので、辞書がなくても読めますよ。
 1冊に短編が4つ。読み聞かせでも、朝の読書タイムでも、一話完結ですからいいですね。
 それぞれのお話の幕間に、江戸時代の暮らしやつくろいものやに関係する図説コラムがあります。江戸の豆知識がイラスト入りで紹介されていて、江戸時代の暮らしを想像しながら読むのに役立ちます。
(第1作には「江戸の長屋」「江戸の装い」「江戸の時間」「江戸の立ち売り」。第2作には「江戸の文様」「着物の文様」「長屋の道具たち」。どれも分かりやすいです!)
 おじいちゃん・おばあちゃんの横で時代劇を見ていた私たちは子どもの頃から知っていたようなことも、今の子どもたちは知らないでしょうから、このシリーズで「へぇ!」と時代物に興味を持ってくれると嬉しいですね。

 お話のテンポの良さと、面白さ、あたたかさも素晴らしいですし、なんといっても絵が上等。
 開くページ開くページに絵があるのにも感激しましたし、表情の良さ、画面の配置、日本画のような微妙な色合いと柔らかい線の描き方が本当に贅沢。
 この作品は絵も物語の一部、切っても切れない完成度です。

 まだまだ続くかな?続編も期待したいところです。
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『差分』

2013年10月06日 | BOOKS
『差分』
著者:佐藤雅彦 菅俊一 石川将也
美術出版社


 「2枚の絵の差をとることで、新しい何かが生まれる」という、脳の働きを考える新しい研究です。
 
 2枚の絵の「差分」、つまり2枚の絵の違いを見比べる・違いを感じることで2枚の絵の間にある(かもしれない)絵(動き)が頭の中に生じるということに注目して、いろいろな角度から研究しています。
 この1冊を読むと「なんで今まで、こういうことを考えずにきたのかな?」と思うほど、面白い「認知科学」研究です。

 著者である佐藤雅彦氏が監修している番組「ピタゴラスイッチ」(NHK)を見ている子どもたちの方が、上手に「差分」を見つけられるかもしれません。
 (「なにしてるてん」というコーナーに似ています。)
 すぐ分かる「差分」もあれば、時間がかかってやっと分かる(感じる)「差分」もあります。
 一度見つけてしまうと、もう見つける前には戻れないというのも面白い感覚です。

 「表象(Vorstellung)」という言葉も、今まで意識していなかった言葉でした。
 頭の中に思い描くイメージ、目の前にある物や過去の記憶・想像によって思い起こるイメージ。

 一度も見たこともないものを頭の中に何かを思い浮かべることが、人間にはできるんですね。
 私もファンタジーを読むときなど、頭の中で想像することがありますが、これも「表象」なのでしょう。

 脳科学者・茂木健一郎との対談も非常に興味深いです。
 一人一人が違う時間をかけて、それぞれの違う記憶・違う感覚から、それぞれの「差分」を感じ取るのだということ。
 アニメーションとは違う、それぞれの時間で脳が認識するというところが面白いと思いました。
(実際、私と夫では感じ取る「差分」が微妙に違う絵もありましたし、分かるために要する時間も違いました。)

 研究だと思わずに、パラパラとめくって「差分」を感じるだけでも面白い本です。
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『福家警部補』シリーズ

2013年10月04日 | BOOKS
 1.『福家警部補の挨拶』(単行本版)(2006)
      (文庫版)(2008)
 2.『福家警部補の再訪』(単行本版)(2009)
      (文庫版)(2013)
 3.『福家警部補の報告』(2013)

 犯人が犯行を犯すところの描写から始まるミステリー。
 「古畑任三郎」シリーズや「刑事コロンボ」シリーズでもおなじみの「倒叙形式」ですが、こちらのシリーズは謎を解く主人公がまったく異色。
 小柄な若い(若く見える)女性なのです。

 相手が油断してしまうほどの見た目と、水も漏らさぬ推理力、何事にも動じない落ち着きと、忘れ物・探し物ばかりしているウッカリ具合、徹夜が続いても眼力が衰えない体力と、ウォッカを一気にあおっても尋問できちゃうお酒の強さ、映像・造形・漫画などへの深い愛情と知識。
 本当にとらえどころのない、不思議なギャップにあふれた女性なんです。
 一人の女性の中に、いろいろとキャラクターを詰め込み過ぎたんじゃないかと思うぐらい。


 冒頭で犯行シーンが描かれるにもかかわらず、警部補がどう解決していくかは読まないと分からないというのが、なんとも面白いのです。徐々に犯人に迫っていく、その過程を読みながら「えぇ?これって?」と犯行シーンを読み直すことも度々。

 1冊に3~4編収められているので、一つの事件はあまり長い時間をかけずに読むことができるのも魅力的です。

<関連ページ>
「福家警部補は今日も徹夜で捜査する。 大倉崇裕『福家警部補の挨拶』」 - 東京創元社
 作者のメッセージがあります。
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『バリスタ少女の恋占い』

2013年10月01日 | BOOKS
 10月1日は「コーヒーの日」だそうです。

温かいコーヒーと一緒に楽しみたい、ガールズトークのような物語です。

『バリスタ少女の恋占い』
作/クリスティーナ・スプリンガー
小学館 SUPER! YA


 コーヒーショップのアルバイトの女の子が主人公。
 「バリスタ」というのはイタリア語で、エスプレッソやラテなどのコーヒーを入れる専門職。
 注文する飲み物と、注文した人のタイプを分析して、ノートにメモするのが趣味という主人公は、コーヒーの知識はピカイチ。でも、自分には自信がなくて小心者のどこにでもいそうな女の子です。

 いろいろなコーヒーの名前が出てきますが、私にはちょっと難しい。
 シアトル系などのコーヒーショップに行く機会が多い女の子なら、分かるんじゃないでしょうか?

 自分ではなかなか気づかない自分の魅力や、自分の本当の気持ちに気づいていく主人公がとっても可愛い物語です。

 それにしても、飲み物の相性で恋占いしてカップルを作れるなんて、ぜひ日本にもお知恵を拝借したいところです。
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