MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『家と庭と犬とねこ』『みがけば光る』

2014年02月12日 | BOOKS
『家と庭と犬とねこ』
石井 桃子 著
河出書房新社

『みがけば光る』
石井 桃子 著
河出書房新社


 私の大好きなバートンの絵本や「うさこちゃん」シリーズの翻訳者、石井桃子さんの随筆集。
 石井さんは、1907年生まれ、2008年逝去。
と、いうことは、ドラマ「ごちそうさん」のめ以子ちゃんと同じぐらいの世代だったのですね。(め以子ちゃんは、1911年に小学校1年生でしたので
 私の祖父母世代よりは少し上になるようです。

 この2冊の随筆集は、古いものは戦後すぐ・1940年代後半、新しいものは2002年に書かれたエッセイで構成されています。
エッセイの多くが1950年代~1960年代のもので、私にとっては父と母の子どもの頃といった時代です。それでも、決して古い文章ではなく、びっくりするほど読みやすい!子どものための本に関わっていた方だからでしょうか?
 いろいろな新聞・雑誌に載せたものをまとめた随筆集ですので、同じエピソードが何度も形を変えて出てきたりもしますが、それが作者にとって、とても大切で心に残る出来事だったことが伝わってきます。 

 内容はというと、まさに自立している女性の随筆で、非常にさばさばと、それでいて温かくその当時の世の中を切り取っています。
しかし、半世紀という時間が間に横たわっているせいで、なんと世の中の変わったことか。
 一番、衝撃的だったのは、『みがけば光る』の中の「はるかなものをもって」という恋愛についてのエッセイの中の、「戦争中の北京の夕ぐれでした。中国は、空気がすんでいる国です。」で始まる、北京の美しい夕暮れと星空を思い出した一文でした。本の中には、東京の空気が汚れていることについて書かれているエッセイもいくつかあって、最近の「PM2.5」のニュースに接している私にとっては「北京の澄んだ空気・東京の汚れた空気」という過ぎ去った時代の中で息をしていた人なのだと、あらためて時の流れを感じたのでした。

 それにしても、「昔は良かった」「何で今はこうなっちゃったのかしら?」と、半世紀も前から嘆いているなんて不思議です。
 「仏頂面は不道徳」や「みがけば光る」というエッセイは、今でも「そうだ、そうだ」と頷きながら読む方が多いのじゃないでしょうか。世の中が忙しくなって、「躾(しつけ)」や「美しい言葉」が消えていったのは、私たちの世代に始まったことじゃないのですね。
 そう思うと「良いものは今でも残ってるんだから、案外簡単に消えちゃったりしないんだ」と、嬉しいような気もします。
 
 2冊はそれぞれ英語でもタイトルがついていて、
『家と庭と犬とねこ』は、「A HOUSE, THE GARDEN, A DOG AND A CAT」。
『みがけば光る』は、「POLISH, AND IT WILL SHINE」となっています。
 庭(THE GARDEN)の冠詞が「THE」なのは、エッセイの中に登場する庭が「ほかのどこでもない、まさにその庭」だからなんでしょうね。


<追記>
 最近、『プーと私』も出版されていて、こちらはプーさんの色=黄色い表紙です。(2014年1月21日発売)
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