MOONIE'S TEA ROOM

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『クリスピン』

2014年02月04日 | BOOKS
『クリスピン』
著/アヴィ 訳/金原瑞人 
求龍堂


 舞台は、14世紀イギリス。大領主に支配されている荘園の貧しい少年が、母の死後、命を狙われるところから始まります。
 母は何者だったのか、なぜ命を狙われるのか。命からがら逃げだした少年が冒険の末に獲得するものは、良い意味で想像を裏切ってくれました。

 英語のタイトルは「Crispin: The Cross of Lead」。
 「Lead」は、「鉛」の意味のほかに「先導・導くもの」の意味も。
 鉛の十字架(Cross)に導かれながら、少年は自分の出生の秘密に近づいていきます。

 大道芸人をしながら大きな使命のために動いている不思議な人物「熊」の存在が秀逸。
 若者を導く大人として、今、この厳しさを貫ける大人がいるでしょうか。

 生まれで命の価値が決まるような社会で、奴隷のように生きてきた少年が最後の最後にする生き方の選択は、深く考えさせられます。


 私は知らなかったのですが、靴屋や製皮・皮革職人の守護聖人クリスピヌスを英語では「Crispin クリスピン」というようです。10月25日が「Saint Crispin's Day」なのですが、シェイクスピアの『ヘンリー五世』に「聖クリスピンの祭日の演説」という名場面があり、有名なのだとか。
 きっと、英語圏の方は「クリスピン」というタイトルで分かるのかもしれませんね。


<参考サイト>
クリスピヌスとクリスピニアヌス - Wikipedia
 キリスト教の聖人、クリスピヌスについて。

 
コメント
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