星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

七月大歌舞伎 昼の部「妹背山婦女庭訓」幕見

2010-07-19 | 観劇メモ(伝統芸能系)
観劇日    2010年7月18(日) 昼の部幕見 11:00~12:20
劇場     松竹座
座席     3階5列

日曜日は文楽観劇だった。
でも、その前に鱶七はんをひと目見てからと思い立ち、少し早めに行
き幕見に並んだ。10時発売開始の15分前についたけど、皆さんお目当
ての演目がバラバラで妹背山はスンナリ買えた。
始まるやいなや「澤瀉屋ーっ!」耳のソバで聞こえたのでビックリ。
なんとお隣りの人が大向こうさんなのだった。
この日18日から番付が舞台写真入りになったため、晴れて購入。
関西・歌舞伎を愛する会の30周年記念号で過去の舞台写真も掲載され
ていておトク感がある♪



昼の部

一、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)
三笠山御殿


杉酒屋娘お三輪:孝太郎   豆腐買おむら:翫雀
烏帽子折求女:段治郎    入鹿妹橘姫:春猿
漁師鱶七実は金輪五郎今国:愛之助


隣家に住む烏帽子折求女に思いを寄せる、大和国三輪の里の酒屋の一人
娘お三輪は、求女の着物の裾に留めつけた苧環の白糸を頼りに後を追っ
て三笠山の蘇我入鹿の御殿までやって来る。お三輪は意地悪な官女達に
散々にいじめられ、さらには求女が入鹿の妹橘姫と祝言を挙げたと知っ
て逆上する。
奥へと踏み込もうとするお三輪を制したのは漁師姿の鱶七だった。鱶七
は実は藤原鎌足の家臣金輪五郎で、求女は入鹿の横暴を阻止しようとし
ている藤原淡海だった。鱶七はお三輪を刺して、入鹿を滅ぼすには
"疑着の相"の女の生き血が必要であることを話す。それを聞いたお三輪
は求女の役に立てることを喜び、未来で添い遂げることに望みを託して
息絶えるのだった。

(歌舞伎美人公式サイトより引用)

2年前の浪花花形では「道行恋苧環 (みちゆきこいのおだまき)」の場
から通しで見られたが、今回は「三笠山御殿」だけ。
恋のトライアングルが勃発するくだりが面白いし、求女とお三輪に
とって苧環が大事なものであることを見せる場でもあるので、それが
ないのはちと残念。そういえば曽我入鹿も登場しない。
その代わり今回はお三輪の一途な気持ちがクローズアップされた感じ。
本懐を遂げた女の笑みにも似た最後の表情に、團菊祭で見た玉手御前に
通じるものを感じた。

想う相手に苧環の糸をつけて、それをたぐって追いかけるなんて、ふつ
うに考えたらバレると思うけど。
でも、男と女の一対一のつながりと距離を、目に見える糸で見せてしま
うところが歌舞伎ってステキ。

元カレ(現カレだと信じている)を追って御殿まで来てしまったお三輪。
空気を読むなんてことは一切なく、ただ好きな人に逢いたい一心で中央
突破を試み、ついに砕け散る。
お三輪役の孝太郎さん、前にもうまいなと思ったけれど、今回は儚いき
れいさが加わっていたように思う。特に死にゆく場面。
自分の死が好きな人の役に立つとわかって満足げに目を細めた表情。
もう一度苧環に頬ずりするような姿。
海老反りになって、やがて目を閉じて倒れてゆくときの顔。
血の気のない顔ににじませる儚げな笑みがとてもきれいだった。

橘姫の春猿さん、求女の段治郎さんの瀉屋屋さんコンビ。
敵同士の恋人を演じるお二人がきれいだった。

最初にお三輪をいじめるのは、豆腐買おむら。
助六の通人といい、この役といい、コメディエンヌ(コメディアン)の
センスが光ってる翫雀さん、ほんとにエエわぁ♪

いじめ役の局たちは面白いだけじゃなく、ぞっとする怖さもあった。
特に松之助さん、迫力あったわぁ~。

ここから先は鱶七について。演じるのは愛之助さん。
浪花花形ではどうも吉右衛門さんの顔がチラついたけれど、もう全然。
お腹の奥からわきあがってくるような低く重厚な声で、すっかり鱶七に
なっている。

漁師鱶七、実は金輪五郎今国。
頭に手ぬぐいをかぶり、どてらのような縞の衣装をまとい、異様に太っ
た感じで登場する鱶七はキョーレツだ。
だからこそ、この後に現れる金輪五郎とのギャップを引き立たせるため
にも、願わくは前回同様、ヘンなオッサン鱶七の登場時間をもう少し長
くしてほしかった。酒のとっくりを手にドカドカと花道をやってきて、
あの藤原鎌足のことを「カマどん」と呼んだりする無遠慮な鱶七。もう
いっかい見たかったな~。
とはいえ、物語の展開に絡む重要な役であることには違いなく、登場す
るやいきなりお三輪を刺すのだから、かなり特異な存在。
(きらびやかな衣装での派手な立ち回りも見せ場の一つだ。)
お三輪を刺した後、こんどは金輪五郎としてお三輪にすべてを話し、し
いては求女のためになるのだと説く場面では、とても礼儀正しい。
人を殺めるというミッションをクールに遂行しながら、お三輪への敬意
もちゃんと感じられる金輪五郎今国という男、なかなか好感が持てるぞ。
ヘンなオッサンの魅力に気づかせていただき、愛之助さんに感謝(笑)。
つっころばしの若旦那もこういう骨太な役もできる役者さんって、貴重
だし、すごいことだと思う。

笛に血を注ぐ場面。お三輪の体から刀をグイッと抜き、あいたその傷孔
に、袂から出した笛を再び刺して生き血を注いでいるように見えた。
そして、お三輪から離れて横に行き、笛の状態をあらためていた。
女の死は手段。あくまでも任務を淡々と進める五郎ちゃんなのだった。

昼の部は来週また観劇予定。次回はようやく1階席♪


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