夏らしい暑さが続いて、季節に追い越されがちに毎日を過ごしてます。
今年もほとんどの海水浴場が海開きをせず。
確かに、あんな出来事の後じゃ海で泳ぐ気になるヒトは少ないんだろう。
毎年デパートの片隅に開設されるはずの水着コーナーが見当たらないのもうなづける。
せっかく新しい水着買っちゃおうと思ってたのに。
だけど本当は海で泳ぎたい。
海水浴場としてお店があったり更衣室やシャワーが用意されてる浜じゃなくたって、泳ぐことはできるんだもの。
あの白い大理石が輝く浜で、もう一度泳ぎたいなぁ。
そんなことを考えていたら、先日、ふとしたきっかけで思い出した幼い頃の記憶。
牛は小さいころ、スイミングスクールに通ってました。
喘息だった兄に水泳が良いとかそういう話でスイミングスクールへ行ったのだと思うけど、つまり兄が始める事は妹の牛にもついでに適用されるものです。
で、通い始めた「ベビーコース」。
普通のプールよりは水深の浅いところで、未就学児を対象としたコースだったと思う。
もちろん自分で選ぶ余地なんてありません。
あれって幼稚園入ってからだったのかな?
すくなくとも5歳以下だったのは確か。
小さいとはいえ全く足が着かないプールに入るのはとても怖くて、腰や腕につける浮きがたよりで、水の感触は好きだけど泳げる気なんてしませんでした。
もちろん、泳ぎを身につけるというよりは水に親しむことが主眼なので、浮をつけたままでここまで進んでみましょうとか、プールサイドに腰掛けてバタ足の練習をしましょうとか、そんなものでした。
人見知りな牛は、ベビーコースのほかの子と仲良くなれるわけでもなく、嫌ともいえず。
それでも通い続けてたんですが、やっぱりいるんですよね。いたずらっ子。
他の子が泳いでプールのふちに近づいてくるやいなや、頭を押して沈めるんですよ。
年齢からしてその深刻さになんて気づいちゃいない。
やられた子も大泣きです。
それを発見した牛も涙目です。
戦々恐々としていた牛に、さらなる試練が待っていました。
「あなた、小学生じゃないの?ベビーコースじゃなくてあっちのプールでしょう。」
一人のコーチが、そう言って牛の手を引いて、牛は深いほうのプールへと連れて行かれました。
後年、母に言わせれば「あんたは背が高かったから間違えられたんだね」だそうです。
深いプール。
まわりでは小学生達がビート板でバタ足して泳いでます。
牛は全く泳げない。全く。
ビート板につかまってもバランスがとれなくて沈むレベルです。
そして、ただ立って待っている事もできなかった。
足がつかないんだもの。
自分の気持ちを表現できず、オトナにいわれた事に逆らえず、黙って耐えるしか知らなかった頃。
ビート板とはぐれて沈みそうになって、必死にコースロープにしがみつきました。
あの時のコースロープの感触を今でも思い出せる。
思っていた事も。
苦しい。泳げない。怖い。誰か助けて。
「誰か泳ぎ方を教えて」。
やがて誰か別のコーチに気づいてもらったのだと思います。
「・・・泳げない。」
それだけが、口に出せたたった一つの言葉でした。
ようやく元のプールに戻してもらえて、その後牛が浮き無しで泳げるようになったのは、さらに数年後だったと記憶しています。
さらに何年かして、淡々とノルマのようにスイミングスクール通いを続けて、送迎バスでの激しい車酔いに悩まされながらも、牛はやがて泳ぐ事が大好きになるのでした。
足の着かないプールに投げ込まれるようなことは、オトナになってからもたくさんありました。
仕事でもプライベートでも。
必要に迫られたり、自ら望んだり、誤解だったりして投げ込まれるプールで、牛はいつももがき続けてきたように思います。
上手になんてできない。
みんなはできるの?
牛はそんなにダメなのか。
教えてくれる人なんていない。
だったら自分で覚えるしかない。
だけどもしも、教えてくれる人がいるのならそんなに嬉しい事は無い。
浮いたり沈んだり忙しい毎日のなかで、牛は泳ぎ続けてます。
足がつくとき、つかないときがある。
泳ぎ方さえ知ってしまえば、足がつかなくても大丈夫なはず。
いつか力尽きるその時まで、泳ぎ続けるんだと思います。
でも、できることなら、たまにはどこかの砂浜でのんびり過ごしたいなぁ。
ヤドカリと戯れて、カニにちょっかい出して、大好きな陽の光と風にさらされたい。
何もいえず黙ったままで砂山を作る牛を、見かけたらぜひ参加してくださいね、負けてばっかりの棒倒しに。
意識するしないにかかわらず。その方法が正しいかもわからず。
彼らはその体からして生得的に飛び方を知ってるんだろうけど、上手に長く飛べるようになるまではきっとヨロヨロ飛ぶんでしょうね。
牛はいつもヨロヨロ歩いてるけどがんばります。
めざせかもめのジョナサン。
・・・正直、高速飛行を目指したのが白鳥じゃなくて良かったと思う。
そしてwikipediaの「かもめのジョナサン」の一部でうかつにも笑ってしまった。。。