菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

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2163年宇宙の惑星ソラリス行きのちょっと前の旅 『イカリエ-XB1』

2018年06月11日 00時00分56秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1314回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『イカリエ-XB1』

 

 

 

地球がユートピアとなった2163年、地球型惑星を目指した植民宇宙船を襲うトラブルを描くSFアドベンチャー。

 

スタニスワフ・レムの小説『マゼラン星雲』を基に、『スター・トレック』や『2001年宇宙の旅』に先立つ1963年に社会主義のチェコスロバキアで製作され、後のSF映画にも影響を与えたと言われる、映画史的にも重要なSF作品。

2018年5月、<デジタル・リマスター版>にて本邦初劇場公開が実現。

 

監督は、インドゥジヒ・ポラーク。

 

 

 

物語。

2163年、地球。
宇宙船イカリエ-XBが世界初の生命探査の旅へと出た。高速で移動する乗組員にとって2年間という長旅だが、それは地球ではおよそ15年が過ぎてしまう。

船内では様々な年齢の男女40人が共同生活を送っており、人間関係のもつれも次第に表面化していく。

そんなある日、船は正体不明の宇宙船に遭遇する。

原作は、スタニスワフ・レムの小説『マゼラン星雲』(ただし、クレジットなし)

脚本は、インドゥジヒ・ポラーク、パヴェル・ユラーチェク。

 

 

 

出演。
ズデニェク・シュチェパーネクが、アバイェフ艦長。

フランチシェク・スモリークが、アントニー。
ダナ・メドジツカーが、ニナ。

イレナ・カチールコヴァーが、ブリジタ。
ラドヴァン・ルカフスキーが、マクドナルド副艦長。
オットー・ラツコヴィチが、ミハル。

 

 

 

スタッフ。

撮影は、ヤン・カリシュ。


衣装は、エステル・クルンバホヴァー。

音楽は、ズデニェク・リシュカ。

 

 

 

2163年、地球型惑星を目指した植民宇宙船を襲うトラブルを描くSFアドベンチャー。
1963年にチェコスロヴァキアで生まれたSF映画のエポックメイキング的作品。
これ以前にも近いSFはすでにあるが、東欧的な思想が反映された社会派でもある上、現在でも通用するセンス・オブ・ワンダーに溢れている。独特の未来文化描写が新鮮。
大きな世界観を小さな生活描写で見せる革新性は社会主義圏らしく、今も新鮮。現在、リメイクしても面白そうなのだが、この作品のチルドレンをいくつも思いつくので、逆に難しいかも。
キャラクターが多めで途中まで見分けがつきにくい。意外といい道具立てを使い捨てて驚く。
シンメトリーと近代的で清潔感あふれるメカは確実に後世に強い影響を与えている。
現代的映画の時間感覚を試される遮作。
 
 

  

 
 
 
 

おまけ。

原題は、『IKARIE XB 1』。
イカリエは、イカロスのことらしい。

イカロスは、ギリシア神話の、蝋で鳥の羽根を固めてつくった翼で、警告を忘れて、太陽に近づき過ぎて、蝋が溶け墜落死する。 こんな不吉な名前をつける東欧的文化は好み。

 

英語題は、『VOYAGE TO THE END OF THE UNIVERSE』。
『世界の終わりへの旅』。ただ、このインターナショナル版は編集されていて、内容がかなり違うらしい。

 

 

渋谷のヒカリエとは関係ないです。ちなみにヒカリエは「光へ」という意味らしい。

 

 

 


上映時間は、88分。
製作国は、チェコスロヴァキア。

 

 

 

キャッチコピーは、「人類はやがて遭う」。

ややネタバレでありますが、半世紀たっての今作との出会いも意味していて、ちょっとグッときます。

 

 

 

 

 

 

ややネタバレ。 


原作は、スタニスワフ・レムの『『マゼラン星雲 (Obłok Magellana)』 (1956)で有名作『エデン』の前でもある。だが、かなり脚色されているようだ。
今作の前に、『金星応答なし』(1951)の映画化『金星ロケット発進す』(1960)がある。
見ると『2001年宇宙の旅』(1968)は今作も研究した可能性は高い。もちろん、原作のスタニスワフ・レムを研究した結果かもしれない。
ジョー・ダンテはスタンリー・キューブリックは今作を見ているはずと言っている。『エイリアン』でいろんな作品を寄せ集めた目がそう言わせるのか。
ちなみのちなみに『惑星ソラリス』は1972年作。
『イベント・ホライゾン』も思い出したね。

余計な知識としては、『ストーカー』や『神々のたそがれ』の原作は、ストルガツキー兄弟。

 

スタニワフ・レムの『マゼラン星雲』は、30世紀の社会主義のユートピアを舞台にしている。
人類は太陽系惑星を植民地化し、ついに、ケンタウルス座アルファ星系に向け、初の恒星間飛行を試みる。宇宙船ゲアに約200名の男女が乗り込み、8年間航行。プロキシマ・ケンタウリの惑星のひとつで生命反応を発見する。30世紀から2163年の22世紀に変更
パトリックではなくアトラントスというヒューマノイドが出てくるそう。冷戦下のアメリカと北大西洋条約機構を象徴させているそう。
映画は小説とは物語をかなり変えており、レムも映画化には乗り気ではなかったそう。

 

 

ジョー・ダンテが寄せたコメントの抜粋。「キューブリックがこの映画を見逃していたとは言わせない……。」

 

 

 

残り10分あたりで「え、この映画ちゃんと終わるの? 未完?」と不安になれます。でも、ちゃんとオチます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

『2001年宇宙の旅』におけるスター・チャイルドにあたる宇宙生まれの赤子の誕生、地球外知的生命体とのコンタクトの祝祭感が素晴らしい。

 

途中の20世紀の宇宙船が『イベント・ホライゾン』の元ネタとも思えたり。

 

 

 

 

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