で、ロードショーでは、どうでしょう? 第52回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『チョコレート・ファイター』
『マッハ!』『トムヤムクン』のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の最新作。
トニー・ジャーとともに世界を席巻し、各党映画の新時代の旗手であり、アクションを数年がかりで作るこだわりの人。
今回は新人ジージャーことヤーニン・ウィサミタナンも、右腕パンナー・リットグライ(アクション監督)が鍛え上げること4年。
『マッハ!』『トムヤムクン』の頃のスタント・ショーの感じから、今回はなかなかにストーリーもよく、ジージャーの演技もあいまって、ついに格闘映画新時代を築き上げことが分かる。
一人では難しい波だが、リットグライも『七人のマッハ!』(題材の割りにかなりストイックなアクションで見せてくれます)で監督してるし、トニー・ジャーも『マッハ!2』(『トムヤムクン2』だったかも・・・)で監督に挑み、トニー・ジャー、ジージャーの二人のスターを排出して、ムエタイ・アクションを世界の歴史にまで上げている。
カンフー物と同じように、ムエタイ物と呼ばれる日も近いのではないか。
で、『チョコレート・ファイター』は、2年がかりで作った、波をつなげるべく作られた作品。
美少女(役がそうなだけど、本人は当時22歳ぐらい)による本気の格闘映画になってます。
なにしろ、14歳で、テコンドーの黒帯で師範代までなったジージャーだが、生活苦のために受けた『七人のマッハ!』のオーデョションで、見初められ、そこから4年の訓練をし、ムエタイと映画のアクションを体得。
彼女のためのプロジェクトとして作られた映画でもある。
嬉しいのは、補任よりも映画の中の彼女が可愛いこと。
やっぱ女優はそうじゃなくっちゃ。
主役のゼンの得意技が、技を目で見て覚えるので、最初は、ややパロディのブルース・リー、ジャッキー・チェン、サモハン・キンポー的アクションだったのが、じょじょにトニー・ジャーになり、最後にはまさにオリジナルなジージャー・スタイルになっていくというのもわくわくさせてくれる。
しかも、新たな格闘スタイルを持たせた相手も用意して、目の肥えた観客をも楽しませようという気合がたまらない。
しかもそれが空回りになっていないのが凄い。
そのブレイクダンスとカポエラとカンフーが混じったスタイルはかなり怖い。
演じるダン・チューポンは、トニージャーの弟弟子で、トニー・ジャーとの共演も多い。
主演作品もあり、これもなかなか凄いんです。
ジージャーの設定が知的障害者(自閉症)なのだけど、ファンタジー色をやや強めているが、その設定ゆえに隠れた傑作となっている『ファースト・ミッション』に連なるといっていいと思う。
タイというか仏教国は性的なものにはうるさいけど、暴力には結構許容度が高いので、今回も残酷風味は強め。
実際は、たぶん、女性相手なので、タックルとか有効だと思うのだけど、それは少なめにしているのは愛嬌としても手加減抜きのバトルを繰り広げてくれます。
実際言ってしまば、かなり凄いのは凄いんだけど、野暮ったさは感じてしまうのも事実。
でも、見ているうちにその凄さがそんなもの凌駕してしまうのよね。
設定も活かしきれてないし、唐突な登場にもちょっと苦笑しちゃうし、単純明快すぎるベタナ台詞の恥ずかしさ・・・けど、それは今後の課題というか、徐々に越えるべき壁と作り手側が理解(インタビューで監督自ら答えている)していて、とにかく世界レベルのアクションを見せるんだという気概が気持ちよいのよ。
特に、クライマックスの屋上バトルと壁面バトルは拳握りっぱなこと請け合いです。
トニー・ジャーに続いて、映画観終わった後、ジージャー風に体を動かしたくてしょうがなくなったもの。
映画におけるバレエとも言うべき格闘ジャンルは、香港からハリウッドに輸出されたけど、そこに飽き足らないアジア・パワーがを体感出来ます。
アクションは主役だけじゃなくて、周りの力こそが重要なんだもの。
当然、監督とアクション・チームを支えているプロデューサーの存在があって、それがソムサック・チャラタナプラスート。
長い名前も誇らしげに見えてくるから不思議だ。
タイ映画人の向上心、世界と自分たちを見る目に、拍手を送りたい。
あ、阿部さんもその気概を受けて、本気で取り組んで、グッドなアクションを披露しています。(撮影一年後に撮り直しをしたらしいですよ)
加えて、日本版用に新たに声も当て直ししていて、その本気度はタイの映画人の本気が乗り移ったんでしょうなぁ。
いやぁ、いいもの見せてもらった。
こういう活力をもらえる映画を見れるのはホントに嬉しい。
子どもの頃、母親の友人の方が名付けたもので、タガログ語でバイオリンの意味があるそうです。
ですので、トニー・ジャーさんの名前とは一切関係ないです。
ヤーニンという名前は、女優になってからつけられたもので、もともとは、ジージャー・ニチャリー・ウィサミタナンさんです。
すごい偶然。
直しておきます。
私としては、はやくダン・チューポンに決打の作品が出るのを願ってるのです。