曾根崎キッドの日々

現実の街、大阪「曽根崎デッドエンドストリート」。そこで蠢く半架空の人物たちによる半現実小説、他ばか短編の数々。

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曾根崎キッド地上げレジスタンス  1

2008-07-02 15:04:38 | 続き物お話

 2006年晩秋のある月の綺麗な夜、曾根崎キッドが「ふんふんふん」とロ・ボルゲスを鼻歌で歌いながらトドムンドのドアを開けたら、社長が二番テーブルに壁を背にして座っていた。
 曾根崎キッドはカウンターに座り、新しく出たミーツを見つけ、ページをぺらぺらめくり、ひさうちさんのエロねたでも読もうかと思ったその時、
「キッド、お前トドムンド好きか?」
と、後ろから声をかけられた。「おれのこと好きか?」じゃなくてほんとによかった、と内心ほっとした。
「うん、好きやで。ていうか、ないと困るってレヴェル」
「あ・そう」
「どうかした?」
「いや」
 話はそれで終わる。社長は赤ワインを飲んでいた。
 曾根崎キッドはいきなり、「は?」なことを訊かれ、そんな空気を社長が発しているときはこれまであまりいいことがなかったので、席を立ち「ミーツ持っていっていい?」と言い残し、ナチュラリーへ向かう。

 おみつのカラオケがうるさかったが、階段を上るともっとうるさかった。ミタキンが録音をしていた。「ヘタなベースやなあ」と思ったが、そんな印象は全部消して、
「お客なんですがー」とドアから中を覗くと、「はいはい」とベースを置き、横歩きしてカウンターの中へ入る。
「何しましょう」
「ラガー」
「はいよ」
「ヒマ?」
「見たまんま」
「はは」
「パチンコどう?」
「ぼちぼちかな」
「今日は?」
「一万円ぐらい」
「勝った?」
「負けた」
「ナガイが最近競艇凝ってんねん。一緒に行こか、今度」
「競艇かぁ。たまにはええかな」
「今はちょっと寒いかもしらんけど」
「夏とかよさそうやんな。涼しげで」
「そうそう。なんかリクエストある?」
「特に思いつかんけどね」
「では好きにさせていただきます」
 缶のままラガーを飲んでいると、かかったのはディヴィッド・バーンだった。
「ああ、そんな感じっす」
「今度ミーツの取材あんねん」
「ああそう、ナチュラリー?」
「いや、デッドエンドストリート全体かな。ていうてもトドムンド中心やろけど」
「いいやん」
「いいんかな。いいんやろけど、ここ紹介されてもあんまり客関係ないねんな」
「なるほど」
「まあ、なんもないよりましやけど」
「まいどー」
「もうサボりにきた?」
「ちゃうねん、今日はヒマ。それに社長なんか様子おかしいやんか。空気がどんよりしてんねん」
「アオミちゃん、髪の毛いつ空いてる」
「いつでもオッケーっすよ」
「明日でもいい?」
「昼間やんな」
「トドムンド」
「3時ぐらい?」
「切るだけやろ。じゃあ5時ぐらいでいい?」
「オッケー」
「あたしにズブロッカちょうだい」

 翌日曾根崎キッドはアオミから社長の陰鬱そうな顔の原因を聴いた。トドムンドに地上げ屋が来たのだった。                      <つづく>
 
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