最後の闘いじゃけん

　高尾駅の南口から、山の方に進んでいくと、しだいに道は狭うなって、リッパなお寺さんに突き当たるけん。

高乗寺は由緒ある禅寺だけど、座禅や写経、それに手芸とか、カルチャースクールっぽい親しみやすさがあるけん。

このお寺さんの一画にのう、小さな家族たちを火葬してくれるトコロがあるけん……。

深い緑の中に立っとる２本のエントツの片方から、ゆらゆら熱気が上がってのう、その最後にかすかに煙が立ちのぼったけん……。

「ホントに空に昇ってくんじゃのう……」




１週間前には想像もできんかったのう……。

なんとのう、けだるそうにはしとったけど、４８時間サイクルで活動的な日と寝とる日が交互にくる彼の、その寝る日だったしのう……。

でも、翌日になってもしんどそうだったけん、とにかく病院に連れていったけん。

この時、やけに耳が冷たいんが気になったけん……。

もう何年もお世話になっとる獣医の先生が、レントゲンを見せるなりこう言うたけん……。

「重症です……」

肺に水がたまって、呼吸がままならない状態だったけん……。

ジツはこの時、ひそかに最後の闘いに挑む覚悟はできとったけん。

あの耳の冷たさは、４年前ミミゾウくんが亡くなる数日前によう似とったけん……。