五高の歴史・落穂拾い

旧制第五高等学校の六十年にわたる想い出の歴史のエピソードを集めている。

戦後の阿蘇道場で青年学級が行われる

2013-07-12 04:22:18 | 五高の歴史
阿蘇道場は戦後熊本大学阿蘇研修所になったが昭和二十六年に青年学級の研修会が開催されている。九重・阿蘇には現在では国立・県立・民間の研修施設が出来ている。この時代まではそのような研修施設がなかったので阿蘇道場を利用したのであろう。その時の 阿蘇夏季青年学校趣意書を転載し眺めてみることにした。
 今や正義と愛による新しき世界史創造の一大転機に当り、わが祖国は率先剣を打ちかえて鍬となし、新しき平和文化国家建設を完成すべき先駆者的一大使命を与えられた。此の困難極めて多き使命達成の方途は、先ず道義的文化の確立に出発せねばならない。敗戦による堪え難き幾多の苦難と煩悩の試練を通じて、新生せんとする母国の陣痛は、亦われ等国民の凡てが等しく堪え抜かねばならぬ深刻なる痛みである。然も此の重大なる使命を完うする明日の希望は、一に以て祖国の礎石たるべき日本青年の双肩にかかっている。
寡ってプロシアとの戦に敗れたかの北欧デンマーク国が、その失える凡てを外に求めず之を内に求めて、不毛の国土を沃野たらしめると共に、先覚者グルントヰ、コル等の愛国的指導による国民的自覚的教育に培われ、遂に世界屈指の高度農業国として又道義的平和国家として特異の存在となるに至った其の復興精神は、更めて今日の我が祖国への激励であり希望である。我等は、興国新生の基礎工事にしての、デンマーク国民高等学校の果せし此の偉大なる使命に感激し、昭和二十一年一月財団法人英世学園を創設して、デンマーク国民高等学校の精神に基く青年教育事業を開始した。特に高松宮殿下の御厚意により福島県磐梯山の麓、猪苗代湖畔に於ける御別邸内に日本国民学舎の開設を許され、同年の冬、積雪深く寒風吹きすさむ厳冬の冬四ヶ月間、昼夜相継ぎ男女青年五十余名と寝食を共にし、寒気を外にして熱心なる研学にいそしんだのであった。今また時局内外の情勢不安を極むるの此の時、郷土阿蘇高原地域に於て、英世学園夏季学校を開設し、国を省み世界を省み手偽りなき現実を認識し現下の重大なる歴史的課題と、吾等に課せられたる重き使命を自覚し、朝夕大阿蘇連峰の雄姿を仰ぎつゝ、広き世界的観点に立って、冷静なる科学精神と奮躍する道義的実践とが結び合わされた健全かつ新鮮なる建設的態度の形成に努め、以て祖国復活に献身する誓いを固めたく願う次第である。   
                                            主催 財団法人  英世学園  後援熊本地方科学と政治の会

要     項
一、期 間   昭和二十六年七月二十五日(日)より八月五日(日)迄の八日間
二、場 所   熊本県阿蘇郡内牧三久保 元阿蘇道場(豊肥線内牧駅下車途中までバス便あり)
三、入学資格  左記に該当する青年男女で、研学の熱意あるもの
   資   格  学歴は問わない、但し聴講の実力があると認めたもの
   年   齢  満十八歳以上で身体強健なもの
四、編成人数 男女共学 男子四十名   女子二十名
五、教育要旨  校生は学校内に在って全員起居を共にし、二四時間の生活一切を教育訓練に当て、凡て自律的精神をもって意義ある共同の研学生活をなすを旨とする。
           但し事情により特に通学聴講を許すことがある。
六、教授法   学科、講話、研究討論会、懇談会等により綜合的教導をなし、堅実なる世界観の把握と歴史的現実の正しき認識に立つ道義的実践の意気を固め、心身の鍛錬発揚に務める。 
七、主な学科目 一、歴史の哲学(歴史とは?) 一、政治の哲学 一、日本社会の文化景観一、政治と経済 一、科学と政治 一、産業革命と精神革命 一、協同組合論
           一、生活改善の科学 一、理性と振興、 一、体操の生理学  一、丁抹体操ラジオ体操指導 一、産業革命史論 一、近世史の展開、
一、アジア人としての反省 一、労働運動の歴史 一、基督教的世界観 一、振興国論 一、国際情勢の解剖 一、婦人問題と解決
一、フォークダンス指導、フォークソング指導、一、音楽 其の他 科外講話、研究討論会、懇談会、読書指導、リエクリエション等
八、学科時間表、日課表  (別添)省略する
九、講 師     松前重義、泉三郎外五名 熊本大学、女子大、九大、YMCAから招聘予定
十、受講料、宿泊費等  1,200円、主食(白米)三升、調味料(砂糖)三十匁持参の事

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