キネマな日々

ちょっとマイナーな映画三昧

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浮草(その3)

2005-09-24 | 小津安二郎
近頃は愛煙家にとって住み難くなっているようですが、昔の映画を見ていると洋画も邦画もあちこちでスパスパ吸っていますな。しぜん喫煙の名シーンも多く、ジャン・ギャバンやボギーに憧れたり「第三の男」のラストシーンも印象的。邦画では、この「浮草」のラストシーンが秀逸。
一座が解散して駒十郎(中村鴈治郎)とすみ子(京マチ子)が喧嘩別れをしたあと、ひとり駒十郎が夜汽車に乗るため駅舎にあらわれるシーン。ベンチに腰かけ一服しようとタバコをくわえると、待合室の奥にすみ子がいる。駒十郎はマッチをさがすが見つからない。すみ子が歩み寄りマッチの火を差し出すが無視する駒十郎。1本目が消え2本目のマッチの火を差し出すすみ子。駒十郎は観念したようにその火をつけ、横に座るすみ子。「親方どこ行くの?」と聞くが答えない駒十郎。すみ子もタバコを取り出し、「ちょっと貸して」と駒十郎のくわえているタバコを取り、それで火をつけるすみ子。そんなやりとりのあと和解をして物語が終わる。

「浮草」(1959年 大映)

浮草(その2)

2005-09-23 | 小津安二郎
「浮草」の芝居小屋の歌謡ショーで、若尾文子の踊りのBGMにペギー葉山の唄う「南国土佐を後にして」が使われています。芝居の興行で一座とチンドン屋が練り歩くシ-ンでの演奏もこの曲でした。「浮草」の2年後に公開される「小早川家の秋」の中で、浪花千栄子の娘の団令子が連れてくるアメリカ人がふく口笛の曲も「南国土佐を後にして」です。
小林旭主演の「南国土佐を後にして」の公開が1959年(昭和34)の8月、「浮草」の公開が同年の11月、ペギー葉山がキングレコードから出した同曲が100万枚を超える大ヒットとなったのも同じ年ですから、小津監督は最新のヒット曲を使ったことになります。
「南国土佐を後にして」の監督の斎藤武市は、この作品のあと小林旭主演で渡り鳥シリーズを撮っていきますが、助監督時代に小津監督の「晩春」についたことがあります。小津作品にこの曲が使われたのは、斎藤武市監督にエールを贈る気持ちがあったのかもしれません。

「浮草」(1959年 大映)

浮草

2005-09-22 | 小津安二郎
溝口健二監督とともに数々の名作を撮り続けた宮川一夫キャメラマンは、黒澤明とは「羅生門」「用心棒」「影武者」などを撮っていますが、小津作品では唯一「浮草」に参加しています。それだけに「浮草」は他の小津作品にくらべて異色であり面白さでもあるようです。小津作品では珍しい俯瞰のシーンは宮川一夫のアイデアだそうで、軒先の路地をはさんで中村鴈治郎 と京マチ子が言い争うシ-ンでの大雨は黒澤作品を思わせますが、それぞれに小津超に調和して味わいを出しています。
小津のカラー作品は赤の発色がきれいなアグファ社のフィルムを使っていて、画面のどこかに赤色の小道具を置いて、それが画面全体の安定感を出しています。この作品でも庭先の赤いハゲイトウや夜汽車の赤いテ-ルランプが印象的です。色調についていえば、「浮草」は全体に青みかかった印象をうけます。物語後半で芝居小屋の内装などやけに濃緑なのは美術の下河原友雄の意図したものだそうですが、前半は青空や紺の着物など濃い青色が画面を占めます。これは物語の展開にあわせて色調をかえたのではないでしょうか。

「浮草」(1959年 大映)

山の音

2005-09-08 | 邦画
成瀬巳喜男監督作品の特集をやってることを聞き、「山の音」を観ました。成瀬作品に出演した原節子の役は夫婦生活に疲れた妻の役というのが多いのですが、「山の音」の原節子は美しい。公開年月日で見ると小津の「東京物語」とほぼ同時期です。原節子の代表作というと小津作品がよくあげられますが、私は成瀬作品のほうが原節子の味が生かされていると思います。その比較でいうと原節子が出演した6本の小津作品のうち現役の妻役というのは「東京暮色」だけなんですよね。しかも離婚寸前(笑)。「晩春(未婚/紀子)」「麦秋(未婚/紀子)」「東京物語(未亡人/紀子)」「東京暮色(妻/孝子)」「秋日和(未亡人/秋子)」「小早川家の秋(未亡人/秋子)」この役柄上の扱いは何なんだろうと思います。しかも同じ役名を使うのですが、そこにもパターンがある。
小津作品に親しんだ人が原節子出演の成瀬作品を観たら「これって小津作品?」思うかもしれない。この「山の音」でも、上原謙、山村聡、長岡輝子画小津作品に出ている。映画の内容も小市民的で似通っている。成瀬巳喜男は松竹出身の監督ですが、作風が小津安二郎に似ていて、昭和7年に松竹撮影所の所長だった城戸四郎に「ふたりの小津はいらない」と宣告されます。監督業にとって事実上のリストラ宣言であり 、そのことで成瀬作品の理解者である小津と銀座の「ルパン」で飲み明かしたりしましたが、PCL(東宝の前身)の引き抜きがあり、結局移籍します。けれども成瀬監督にとっては水を得た魚のように数々の秀作を生み出します。

「山の音」(1954/東宝)

隣の八重ちゃん

2005-08-16 | 外国映画
この映画の公開は昭和9年。中流家庭の家族の、ほのぼのとしたホームドラマに仕上がっている。226事件があったのが昭和11年で不穏な政情が漂い始める時期だけど、そんな雰囲気はこのドラマには微塵もない。戦争を知らない世代にとって、戦争の前の庶民の生活など知る由もないけれど、案外こんなドラマに描かれた日常だったのだと思う。キャッチボールをする青年や、その青年に心を寄せる出戻りの女性と、そのことに複雑な想いをする妹、八重ちゃんなどの登場人物によって、大きな事件がおきるわけでもなく物語がすすんでいきます。むしろ戦後の浅春ドラマなどイデオロギー臭さがぷんぷんとするふん、昭和9年の小市民ドラマが新鮮だったりします。

「隣の八重ちゃん」(1934/松竹蒲田)

日本のいちばん長い日

2005-08-15 | 邦画
昭和20年8月15日の天皇の終戦の詔勅をめぐって、政府部内の緊張した駆け引きや、終戦をを阻止しようと宮城(皇居)でクーデターを企てる若手将校などの動きを、史実に基づいて描かれたドキュメンタリー風なドラマです。

「日本のいちばん長い日」(1967/東宝)

桃太郎 海の神兵

2005-08-14 | 邦画
戦争映画というジャンルがあって、そのなかに反戦映画があります。アクション映画とちがって、戦争の残虐さや悲哀さを強調して戦争の無意味さを主張するものですが、大きな戦争のうねりに巻き込まれるとき世論の同調は不可欠で、本当に反戦を考えるうえでネガティブさが強調されすぎてる傾向ががあります。一方、国策映画というのがあって、国家が映画会社に依頼して作らせるもので、とくに戦争中の場合、厭戦気分を抑えて戦機高揚を図るねらいがあります。毒があることを承知の上で資料として見るなら、逆説的に反戦映画といえます。潤沢な制作費と優秀なスタッフで作られることが多く、作品の質の高いものもあります。ナチスにとっての「オリンピア」もこれに含まれるし、子供のために作られたアニメ作品の「桃太郎 海の神兵」もそうです。

戦局が逼迫した昭和20年の4月に公開され、戦後焼失したと思われていたら、昭和59年(1984)になってンrガが見つかって、翌年再公開されました。高校生の頃の手塚治虫が、これを観て感動したという逸話があって、アニメ作品として当時のディズニーに匹敵するような技術で作られています。音楽監督の古関裕而は「モスラの歌」「六甲おろし」「君の名は」など数々の耳に親しんだ作曲家として知られる。

「桃太郎 海の神兵」(1945/松竹)

春香伝

2005-08-09 | 外国映画
イム・グォンテク監督は韓国の溝口健二とよばれているそうだけど、この「春香伝」は篠田正浩の美意識に近いように思えます。春香伝は、日本の竹取物語のような朝鮮では誰でも知っている物語だそうで、パンソリをはじめ、何度も舞台や映画になっているのだそうです。イム監督の春香伝が出色なのは、パンソリの語りをそのまま使ったことで、独特な雰囲気が醸し出されていることです。たとえば歌舞伎の「忠臣蔵」や浪曲の次郎長ものの音曲に、時代劇の映像をかぶせるようなもの。

「風の丘を越えて」の中ではたびたび春香歌が歌われ、劇中劇として春香伝が出てきます。オー・ジョンヘは南原(ナムウォン)でのミス春香に選ばれたことが女優にデビューするきっかけだったそうで、イム監督の「春香伝」と「風の丘を越えて」は合わせて観た方が興味が増しますね。

「春香伝」(2000/韓国)

風の丘を越えて

2005-08-07 | 外国映画
今から10年ほど前に銀座にこの映画を観に行ったときは、今のような韓流ブームはなくて作品についての情報もあまりなかったけど、最近イム・グォンテク(林權澤)監督のDVD-BOXがあることを知り、「春香伝」「祝祭」も観たかったので、つい衝動買いしてしまいました(笑)。

日本の演歌の歌唱法のルーツはパンソリと言われていて、朝鮮の民俗芸能であるパンソリを歌う家族の旅芸人の物語が「風の丘を越えて」です。パンソリは、中国の音楽に比べれば違和感がなく聞けて、ダイレクトに心に響くものがあります。あらためてこの作品を観ていて、オー・ジョンヘのパンソリの実力に圧倒されるとともに、いくつかの名場面があります。寒村の広々とした畑をロングショットで固定したままアリランを歌いながら徐々に近づいてくるのをワンカットで撮っているのも印象的。

「風の丘を越えて(西便制)」(1993/韓国)

隠し砦の三悪人

2005-08-06 | 外国映画
最近TSUTAYAではDVDを借りることが多くて、古い邦画のソフトもそれなりに増えてきました。先年、黒澤明全作品のデジタルリマスター版が発売されて、今回「隠し砦の三悪人」を観てみました。1秒に24コマあるフィルムの映像を、電気信号に変える作業をテレシネといいますが、VHSに変換してた頃は色が滲んだり画質がシャープでありませんでしたが、DVDになって、可能な修復も加えられて音質も画質もとてもクリアになってます。東宝のフィルムの保管はPCL時代のも含めて同時代の他社より保管状態はいいほうですが、それでもVHSとDVDを比べると数段の差があります。黒澤作品は娯楽時代劇といえども何でもない背景の細かなディテールや時代考証に非常に凝ってるので、画質がシャープになるほど見ごたえがあります。「隠し砦の三悪人」は雑兵の千秋実、藤原釜足の二人と、身分を隠した武士の三船敏郎が主人公の物語。千秋、藤原の軽妙な駆け引きは「スターウォーズ」のC3POとR2D2のモデルになったといわれます。「用心棒」「椿三十郎」とならぶ娯楽時代劇で、物語のテンポが小気味好く、ぐいぐいとひきつけられます。

「隠し砦の三悪人」(1958/東宝)