春望・別館「子どもの本」

「春望」の別館です。子どもの本を中心に紹介しております。お気軽にお立ち寄りください。

ディア ノーバディ

2006-12-28 18:34:20 | タ・ダ~

バーリー・ドハティ著:新潮文庫

新潮文庫の『ディア ノーバディ』はすでに絶版になっているそうです。最近、「14歳の母」とかいうドラマが話題を呼んでいました。一度も観たことがないので、あれこれ言うのははばかられますが、
「14歳の子どもが子どもを産んでどうするんだろうなぁ・・・」
と思っていました。新聞でも酷評されているようでしたが・・・
で、以前読んだこの本を思い出し、また読み返しました。イギリス、カーネギー賞受賞作だけあって、秀逸です。
18歳のヘレンとクリスの恋人同士に突然命が誕生します。戸惑うヘレンと何もできないクリス・・・愛し合っているのに、いつしか、二人の間には溝ができてしまいます。ヘレンの妊娠をきっかけに二人は互いに自分の母(もしくは祖母)について考えるようになります。
解説の河合隼雄氏は「身体性を失った現代人はいかに生きるべきか、本書の投げかける問いは、実に重いものがある。」と締めくくっていらっしゃいますが、何度でも読み返し、繰り返し考えたいテーマでした。

シュクラーンぼくの友だち

2006-12-27 00:01:52 | サ・ザ~

ドリッド・オルガッド著:すずき出版

アルゼンチンからイスラエルに移民としてやってきた少年は友達がいません。移民ということで、周りの友だちから無視され、いじめられています。
アルゼンチンにいた時は、アラブ人として意地悪されていたのです。どこでも行き場のないガブリエルはある日、アラブ人のハミッドに出会い、彼と友達になります。
世界中のどこでも、いじめはあり、民族のいがみ合いはあります。それはもうずっと解決できないことなのでしょうか?
イスラエル周辺はますます困難な状況になりつつあります。この世から争いがなくなるといいですね・・・
夢物語でしょうか・・・

Doors

2006-12-22 14:21:34 | タ・ダ~

ジャネット・リー・ケアリー著:理論社

ゾーイのお父さんは、リストラにあい、、おまけに共同経営していた本屋が倒産して、家を出なければならなくなりました。
ゾーイはおばあちゃんからもらったガラスのドアノブを持って家を出ます。このドアノブはゾーイの夢の一部であるクローゼットに取り付けられていたものでした。そして、一家の放浪の旅が始まりました。
お父さんは職を見つけることができましたが、一家は相変わらず古ぼけたワンボックスカーで暮らしています。家を借りるだけのお金がないからです。
ゾーイと弟のジュークは森のはずれに停めたワンボックスカーから学校に通うことになりました。
まもなく、イスラム教徒のアーリヤと親しくなりますが、彼女を家に呼ぶことも家の話をすることもできません。
先ごろ、中2の少年たちがホームレスの女性を襲って彼女の人生を終わりにしてしまいました。どのような理由で彼女が家を失ったかはわかりませんが、十分つらい思いをしている彼女をめった打ちにする、その神経がわかりません。

戦争で死んだ兵士のこと

2006-12-22 14:11:19 | サ・ザ~

小泉吉宏著:メディアファクトリー

わずか20ページほどの短編絵本ですが、その中に兵士の一生が凝縮されています。昨日まで元気で友達と話していた人、さっきまで笑っていた人・・・命が絶たれるときはあっという間で、あっけないものですね。
死は戦場で戦っている兵士だけに訪れるものではないとは思いますが、戦争がなければ兵士の命も失われることはなかったのでしょう。
彼の思いはどこに行くのでしょう。

タランと角の王

2006-12-19 11:04:56 | タ・ダ~

ロイド・アリグザンダー著:評論社

ベルガリアード物語(1~5)を読んだら、どうしてもまた読みたくなって読み直しています。
ロイド・アリグザンダーを読んだのは『人間になりたがった猫』が最初でした。人間になりたいと望んだ猫のライオネルが主人の魔法使いに頼んで人間にしてもらうのですが、町に出てきて人間の醜さ、傲慢さを目にします。
二作目の『木の中の魔法使い』も非常に楽しく読めました。そして、手に取ったのが「プリデイン物語①~⑤」の『タランと角の王』でした。
両親の顔も知らない孤児のタランは農場で育てられています。彼の夢はいつか英雄になること。それなのに、彼の日常は飼ってもいない馬の蹄鉄を作ることで無為に過ぎています。
そんなある日、農場で飼っていた予言をする豚『ヘン・ウェン』が何かに怯えて逃げ出してしまいます。前日に「豚飼育補佐」の役に任命されたばかりのタランは豚を追って農場を出ます。
これがタランの冒険の始まりでした。冒険の同行者はけむくじゃらの人とも獣ともつかぬ『ガーギ』、魔法が使える王女『エイロヌイ』、大言壮語すると弦が切れる竪琴の奏者で元王様の『フルダー・フラム』そしてギディオン王子の馬『メリンガー』
斬ったはったの派手な立ち回りはないけれど、心に残る物語です。

ナゲキバト

2006-12-18 19:44:08 | ナ~

ラリー・バークダル著:あすなろ書房

ひろのしんさんのブログで話題になっていた『ナゲキバト』が図書館にあったので、借りてきました。
両親を交通事故で失ったハニバルと彼を引き取った祖父との心温まる交流を描いたものです。祖父のハニバルに語る珠玉の言葉に心を打たれます。
『嘘に命をやるのはその嘘を言った人間・・・ほんとうのことにはそれ自身命がある。』
人生を誠実に生きた人間だけが語れる言葉です。それを語った祖父の人生が決して平たんではなかったことを思うと感慨深いものがありました。

勝負の終り

2006-12-10 10:19:16 | サ・ザ~

ディヴィッド・エディングス著:ハヤカワ文庫

なんか、みもふたもないタイトルですが、まさに「勝負の終り(学校では、終わりって教わりましたが?)」でした。
ガリオンと仲間の王様たちは二手に分かれて行動します。善と悪との図式はできていますが、戦いで死ぬのはやはり、名もなき兵士が圧倒的多数です。
ついに、<予言>は実現しますが、細部まではわかっているのに、結果だけがわからないのが<予言>のようです。
結果は終わってみるまでわからないもののようです。しかし、本当にものには終わりがあるのでしょうか?

魔術師の城塞

2006-12-07 13:19:50 | マ~

ディヴィッド・エディングス著:ハヤカワ文庫

ついに、ガリオンは<珠>を手にし、真の名前にたどり着きました。しかし、それは邪神トラクを目覚めさせる、新たな戦いの始まりを意味していました。
ガリオンを取り巻く人々は、欠点が多いのですが、それも魅力の一つとなっています。完全無欠な人間なんてこの世には存在しないということなのですね。だからこそ、人生はおもしろいともいえるのでしょう。

竜神の高僧

2006-12-04 23:20:51 | ラ~

デイヴィッド・エディングス著:ハヤカワ文庫

秘められたガリオンの力が徐々に明らかになっていきます。<珠>にたどり着く旅は困難を極めます。
新たな随行者も見つかり、物語は新局面を迎えます。最後の方は読みながら心臓がバクバクしてきました。
ガリオンの心の中に響く声の持ち主はいったい誰なのでしょう?謎は深まるばかりです。