もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)
年間100本の劇場鑑賞、音声ガイドもやってました。そんな話題をきままに書きます。ネタバレもありますのでご注意を。
 



タイトル:蟻の兵隊(池谷薫監督)
ジャンル:ドキュメンタリー/2005年/101分
映画館:第七芸術劇場(96席)
鑑賞日時:2005年9月24日 60人
私の満足度:80% 
オススメ度:100%この作品が多くの人に鑑賞されることを望みます。

<序>
東京では11週間のロングラン、大阪でもアンコール上映で
やっと見る機会に恵まれました。梅田(大阪)からさらに乗換て
いかなれけばならないこの映画館は、ちょっと行きにくいのですが
この日は、昭和天皇を描いたロシア映画「太陽」の2日目でもあり
連続して見ました。

<うろおぼえの冒頭>
メインタイトル。「蟻の兵隊」の手書き四文字が
蟻の足跡のように配置。

露天の並ぶ道。ひとりの老人が歩いてくる。
画面の外から監督?が声をかける。
『サングラスどうしたんですか?』
『白内障の手術でね。』
『靖国ですが、お参りは』
『しない』
『なぜですか?』
『人間は神ではありません。』
『(不明)』
『そういうごまかしは許されない。』

道端に二十歳前後の女性が5人ぐらい。
何かたべている。立ってやきぞばをたべてるひとりに
老人が声をかける。
『どうしてここに来たの』
『近いから』
『なんてお祈りするの』
『今年もよい年でありますように』
画面外から、監督?
『ここは戦争で死んだ人が祀られているの知ってる?』
『?』別の女性『知らないの?』
『このおじいさんは凄いんだよ。戦争がおわったあとも、
中国で何年間も戦ってきたの』
『ご苦労さまです。』とぎこちなくお辞儀。
『それで帰ってきたら、国はあんたはもう日本の軍人
じゃないから知らないって。勝手に残ったんだって言われちゃったの』
『えらい自分勝手ですねえ』
焼きそばを食べる手が止まり、老人を見つめる。
カメラは、老人の横から後ろに回る。
後ろ姿越しに靖国神社の鳥居。 

<ストーリー:Yahoo!JAPANの引用>
第2次世界大戦後も大陸に残り、中国の内戦に巻き込まれた
“日本軍山西省残留問題”に肉薄するドキュメンタリー。
『延安の娘』の池谷薫監督が、歴史に取り残された約2600人もの
日本兵たちの悲劇を描く。かつて中国に残留していた元日本兵の
奥村和一が、再び中国を訪れ、当時を振り返りつつ戦争とは何か
を問いかける。80歳という高齢にも関わらず真実を求める奥村の姿は、
観る者の心を揺さぶる。(シネマトゥデイ)

<感想>
「日本鬼子 リーベンクイズ」という映画がある。中国で戦った元日本兵が
こんなことしましたあんなことしましたと、数々の悪行をかたるのであるが
ひとり10分ぐらいで次々と2時間40分。気分がわるくなった。その映画で
終戦後も中国内戦を戦った日本兵がいることをはじめて知ったのですが、
お恥ずかしいことに、終戦後の日本兵がどういう気持ちで戦ったかまで
考えたこともありませんでした。
 主人公の奥村和一さんは『日本再興、天皇のため』戦い『日本はアメリカに
負けたのであって中国に負けたのではないと』戦ったと。そういう状況が
あったことにまず驚かされました。さらに中国の公文書館で残留部隊の隊長が
『皇国復興を本義とす』と書いた文書が存在しながら、国も裁判所も
認めないことにあきれました。もっとも、この文書にしても映画以前に見つけ
られたもので、私が知らなかっただけ。映画としても序盤にとりあげただけで、
裁判に対しても表面しか説明されていません。公式HPの『自身戦争の
被害者でもあり加害者でもある奥村が、“日本軍山西省残留問題”の真相を
解明しようと孤軍奮闘する姿を追った世界初のドキュメンタリーである。』の
観点からみれば、迫力不足と思いました。
 しかしながら、これらは前半の状況説明みたいなもので、映画の後半は、
「戦争とはどんなものか?」に迫る、予想外にドラマチックな展開でした。

 以下、ネタバレを含みますがが、印象に残った2つのシーン。
ひとつは、奥村さんが初年兵教育の仕上げとして刺した中国人が、
どんな人であったかを尋ねるシーン。当時の刺した現場を見た人は、
みつからなかったが逃げて助かった人の息子さん?との対面が実現。
奥村さんの問いは、詰問調になり、そんなことをすれば殺されて当然
ではないかという感じで追い詰めてゆくのです。戸惑う中国人。
当時の日本兵の血が蘇った瞬間を、垣間見た気がしました。
 もうひとつは、日本兵に拉致され強姦・暴行をうけた女性との対面シーン。
あまりにもひどい話ですが、最後に彼女が、
奥村さんに「今のあなたは、悪人にはみえません」という言葉で
救われたような気分になりました。奥村さんの表情はかわりません
でしたが。

 私が「戦争の狂気」を強く感じた作品としては「ゆきゆきて神軍」というのが
ありますが、そのとき以来の衝撃を受けました。しかも「神軍」の主人公は、
特異な人との印象が強かったのですが今回の主人公の印象は、むしろ普通の人。  
その普通の人から全編を通じて発信されていたのは、生き証人が生き証人を追う
重みと勇気ではないかと思うようになりました。昭和19年に、20歳で
徴兵され、今年で82歳、年齢を考えると、今後この手のドキュメンタリーが
製作されることも難しいのでは?それゆえ、貴重でもあり、多くの人に
鑑賞されることを望みます。

<追伸>
私の実家に、石の彫刻がある。抽象彫刻といったらいいのであろうか?
やさしくけずられたという感じの灰色のオブジェは、妊婦のような
ふくらみがあり、船のような形をしている。父が、自殺した友人の死後
譲り受けたものである。
『首に刺した包丁は、先が突き出てたそうだ。』
『(故人は)中国で人を突かされた。剣で、みんなの見ている前で、
訓練でやるんだ。それが嫌で嫌で堪らんかったと。
結局そこから逃れられんかったんやなあ。』

1980年前後のことだったと思う。かなり前の話であるが、それでも終戦から
三十年以上。私の頭のなかは???であったが、なんだかそれ以上聞いては
いけないような気がしたのと、怖い気持ちもありそのままになった。

父の生前にもっと話ができていればと思うことは多いが、
この映画はその隙間をほんの少し埋めてくれたような気がする。

蟻の兵隊@映画生活

コメント ( 8 ) | Trackback ( 13 )



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コメント
 
 
 
丁寧な記事に感服いたしました。 (あかん隊)
2006-10-09 21:48:32
こんばんは。TBをありがとうございます。

こちらの記事を読んで、思い出しました。ありがとうございます。

お父様の貴重なお話も知ることができて、嬉しく思います。想像を絶するような辛い体験は、決して癒されることはないのですね。ともすれば、「大切な人のために」「愛する人を守る」…情緒で反戦を語る時代になりつつあるようです。今後、こうしたドキュメンタリーは、おっしゃるように制作されることが難しくなりますね。残念です。
 
 
 
おはようございます。 (元・副会長)
2006-10-10 07:02:47
 トラックバック、どうもサンキューでした。



 この映画は物議を醸しそうですが、少なくとも(監督自身も言ってましたが)観る側がこの奥村なる人物に全面的な共感を寄せるのは遠慮した方がいいようです。裁判のことだけを描くなら他の原告の中に適当な人間がいそうですから。



 福岡での映画祭では口コミで話題が広がったのか、急遽追加上映が行われました。観る価値はあると思います。



 それでは今後ともヨロシクお願いします。
 
 
 
TBありがとうございました。 (蛾遊庵徒然草)
2006-10-10 22:33:50
 TBありがとうございました。

 私の見落としたり、書き足りなかったことが、こちらには書かれており興味深く拝見しました。

 お父さまのお話も重いですね。

 

 ただ、この映画未知の特異な話題としては興味深かったのですが、映画としては、正直なところ、演出のわざとらしさがいささか気になりました。



 置き去りにした側の関係者の証言がなかったためでしょうか。

 それと、何故、今頃になってなのかという思いがしました。澄田氏ばどが生きている間に取り上げることができなかったのでしょうか?



 この事件について、検索した関係記事で同じ部隊の指揮官であった今村という方は、最後に共産軍に負け戦となった段階で、相手側と交渉し部下全員の身柄の安全の保障を取り付け、自らは自決したとありました。



 この方も、軍指令(澄田)に騙されたと言ったとのことです。



 同じ高級将校でも所詮人間性の如何によって、天と地の相違です。

 今も、高級官僚の国民への責任感、同じようなことが続いているのではないでしょうか?

 薬害エイズの被害者、石綿問題、BSE輸入米国牛肉等々です。
 
 
 
Unknown (あずーる)
2006-10-13 03:21:03
はじめまして♪TBありがとうございます。丁寧なレビューで、しっかり鑑賞されていたのがよくわかります。



>日本兵に拉致され強姦・暴行をうけた女性との対面シーン。

最後に彼女が、奥村さんに「今のあなたは、悪人にはみえません」という言葉で救われたような気分になりました



私も人を許せる彼女がすごいなぁと思いました。やっぱり大陸的な中国だからでしょうか。



満蒙開拓団で中国に残った人も、敵だった中国人に助けられたんですものね。
 
 
 
あかん隊さんへ (もっきぃ)
2006-10-14 01:29:23
>お父様の貴重なお話も知ることができて、

>嬉しく思います。

ありがとうございます。書こうかどうしようかと迷ったところですが、「刺突訓練」の話が出る度に父の話を思い出します。



>想像を絶するような辛い体験は、決して癒さ

>れることはないのですね。ともすれば、

>「大切な人のために」「愛する人を守る」…

>情緒で反戦を語る時代になりつつ

>あるようです。

確かに、大作にその手の映画が多いような

気がします。スポンサーがつきやすいのかも。



>今後、こうしたドキュメンタリーは、

>おっしゃるように制作されることが

>難しくなりますね。残念です。

でも、この作品にしても、主人公の帰国直後は生活自体が大変だったでしょうし、残り時間との戦いのなかで、今しかないというタイミングで、できたともいえるかと思います。

少しでもそういう作品を探して

見続けたいです。







 
 
 
元・副会長さんへ (もっきぃ)
2006-10-14 02:05:15
>この映画は物議を醸しそうですが、

>少なくとも(監督自身も言ってましたが)

>観る側がこの奥村なる人物に全面的な共感を

>寄せるのは遠慮した方がいいようです。



監督がそう言ってましたか。

全面的共感は、ともかく、共感できる部分はあります。

一方で、共産軍に破れてからうけた教育についても言及してほしかったと思いました。



>裁判のことだけを描くなら他の原告の中に

>適当な人間がいそうですから。



裁判に関しては、まともに描いてませんでしたね。宣伝とは違いますが、映画としては

それでよかったと思いました。

 
 
 
蛾遊庵徒然草さんへ (もっきぃ)
2006-10-14 02:47:15
詳しいブログみせていただきました。



>ただ、この映画未知の特異な話題としては

>興味深かったのですが、映画としては、

>正直なところ、演出のわざとらしさが

>いささか気になりました。



この映画のなかで新事実が発見されたわけでは

ないのでしかたがない部分もあるかと思います。ラストの靖国や、アポなし訪問も、

監督の演出でしょうか?



> それと、何故、今頃になってなのかという

>思いがしました。澄田氏ばどが生きている間

>に取り上げることができなかったのでしょう

>か?

奥村さんは、1989年の元残留の書いた本を読んだのがきっかけで調べだしたと言っています。

※私は「蟻の兵隊」だった-岩波ジュニア新書



> この事件について、検索した関係記事で

>同じ部隊の指揮官であった今村という方は、

>最後に共産軍に負け戦となった段階で、

>相手側と交渉し部下全員の身柄の安全の

>保障を取り付け、自らは

>自決したとありました。



偉い人もいるものですね。そういう人だから

残留の目的を、明確にした文書を残したのかも

しれませんね。





 
 
 
あずーるさんへ (もっきぃ)
2006-10-14 02:58:05
>はじめまして♪TBありがとうございます。

>丁寧なレビューで、しっかり鑑賞

>されていたのがよくわかります。

ありがとうございます。局部的に詳しく

書くのが好きなんです。





>>日本兵に拉致され強姦・暴行をうけた女性との対面シーン。

>>最後に彼女が、奥村さんに「今のあなたは、>>悪人にはみえません」という言葉で救われた>>ような気分になりました



>私も人を許せる彼女がすごいなぁと思いまし

>た。やっぱり大陸的な中国だからでしょう

>か。



理由は想像がつきませんが、ただありがとうと

いいたいです、





 
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