もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)
年間100本の劇場鑑賞、音声ガイドもやってました。そんな話題をきままに書きます。ネタバレもありますのでご注意を。
 



今年の鑑賞1本目は、元町映画館で2回目の「おだやかな日常」。
昨年の同所上映3日目(24日・祝日)で10人足らずだったのが、
3週目(5日土曜)で30人以上というのは、かなり評判がいいという
ことか。新聞等での露出も年末年始に多かったことも影響している
のだろうが、できることならもっと多くの映画館で上映して、もっと
多くの人にみてもらいたい映画だというのが私の感想のひとつ。

以下、大ネタバレありで、主な8人の俳優さんひとりずつについて
言及しながら感想を書いていきま~す。映画見た人向きです。

ユカコ:篠原友希子(主人公の一人)
小泉今日子似の32歳。印象に残ったシーンは”お願いするところ”。
宅急便のお兄さんに、明日までに着くようにと、笑顔でお願いする
という、ある意味単純なシーン。そこで、自分が綺麗で(美人で)、
本人もそれをわかっていて、まわりからもそのうように扱われてきた
というような、その役の「育ち」を感じさせてくれる演技。私の書いた
ことが当っているかどうかは、わからないが、そういう厚みを感じた
だけに、これからもまた見たいと思わせる役者さんだ。夏には、
芥川賞受賞時の「もらっといてやる」発言で話題となった、
田中慎弥『共食い』で、主人公の父親の愛人役をやるという。
どんなに変わってでてくるか楽しみだ。

タツヤ:山本剛史(ユカコの夫)
綺麗な奥さんをもつと大変だなあ。弱い立場で、がんばる姿は、
男性陣としては応援したくなります。それにしても、なんだか、
可笑しくて、でも、そういうのあるあると、納得したり。シリアスな
なかでの、コメディセンスが光ってました。3・11直後のスーパーで
ものがほとんどないときに、悩んでいる妻の横で、空の棚を携帯で
写真とったり、ヘルシアを手にして「これでご飯たける?」という
シーンは、二人のコントラストが鮮明にあらわれる名場面でした。
それでいて、妻とよく話し、重大な決断をするという、ある意味
理想的な夫像かも。でも、今の時期、仕事やめるっていうのは
ちょとできないなぁ。たいていの人、できないのでは?

サエコ:杉野希妃(もう一人の主人公)
何かの記事で、『美人女優・杉野希妃』と書いてあって、正直
この映画しかみてなかった私は、???と思ったのでありました。
ところが、あとから他の映画の予告や、映画祭での写真をみると。
確かに『美人女優』の看板に偽りなしでした。それだけ、この映画で
美人女優の顔を捨て、園児の娘の母親として一生懸命生きる姿を
みせてくれたということでしょう。朝日新聞だったかのインタビューで
泣きながら娘を返してくれと土下座して、鼻水がドローンと落ちてゆく
シーンについて、「プロデューサーとしては使いたいけど、女優として
は見せたくないということはありませんでしたか」と聞かれ「いいえ、
むしろあざといと思いました」と答えていた。これぞ、役者。

ノボル:小柳友(サエコの夫)
先月見た「カラスの親指」の役でもそうなのですが、この方の演技を
見ていると、「最近の若者はわけわからんなあ」と言ってしまいそうに
なります。それは、それだけ私がおじんになったということで、しかも
十代でなく、24歳の役者さんに対して思うわけで、ますます
年をとってしまったと感じてしまうのでありました。唯一の同情は、
サエコが、「電話切っているときと、でないのとは違うでしょう」
みたいな、論理的にも追込んでくるようなのは、ちょっときついね。
でも、慰謝料はどうなっているんだろう。離婚届に印=慰謝料なし
だとすると、うまくやりすぎじゃない?

清美:渡辺杏実(サエコの娘)
朝の駐輪場の場面、マスクを手にややぎこちなくスキップする姿。
ママに「マスクつけないと風邪よりもっと怖い病気になっちゃうよ」
といわれて「は~い」という姿が可愛かった。このセリフ、ここだけで
は終わらずに、後半の幼稚園で、誰が言ったか「来月になったら
大きな地震が来て多くの人が死ぬ」という"デマ"と微妙につながる
ところが、よくできたいるなあと思う。こういう人によって伏線ととるか
とらないかが取り方によってわかれる"仕込み"が、私の気づかない
ところも含めて一杯入っているだろうところも、この映画の凄い所。

つづいて、幼稚園で、サエコとむきだしのバトルを続ける三人組。

典子:渡辺真起子(3人組のリーダー的存在)
怖ぇ~!!「愛のむきだし」では、主人公の父の愛人で、強烈なキャラを
演じていたが、本作ではさらに強烈。怒鳴るは、キレルは、こんな人
がいたら幼稚園に行きたくなくなりそうな嫌な役だ。他のママよりも、
一回り年配ということもあり威圧感もある、まるで神取忍だ。
一方で、旦那は電力関係の下請けで、被災地原発へ転勤??、
スーパーでは外国産の魚がなくなったことにとまどう場面もあり。
『あなた(放射能におびえるサエコ)のそういう姿が、まわりの不安を
あおってると考えたりしないわけ』というセリフは、自分自身の不安
のあらわれでもある。幼稚園のバトルのあと、3人組の他の二人を
背景に、帰ってゆくサエコを見つめる涙目のシーンはみごと。

美加:山田真歩(3人組の知将)
私も小柄なんですが、小柄ゆえの発言のきつさというのは、
特徴としてあるような気がします。本作でも放射能への不安を全く
みせません。リーダ典子の発言を、どんどん増長しいく様は、
いわば”相乗効果”。「どうせあんた働いてないんでしょ。」のセリフ、
きつすぎます。また、ユカコが幼稚園に来たとき、バトルの後ろで
電話して、警官を入口で迎え入れたのもこの人。きっと警察に
電話してたのでしょう。
ところでこの方の映画出演暦をみると「かぞくのくに」があった。
見たのだが・・・いたかなあ・・・ひょっとして・・・。主人公の井浦新ら
治療目的で北朝鮮からの帰国者が登場する大使館(総連?)での
シーンで、顔面大やけどしていた女性。きっとこの人でしょう。
また、『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』で主演。
『サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』では、
おかっぱで前髪を切りそろえてめがね姿で主演。さらに、PV
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています』では一人舞台。
かなり、マニアックでカルト的なかおりが漂っていで、ちょっと注目。

洋子:西山真来(3人組の離れ島)
3人組の強烈なイメージのなかで、ほとんど発言をせず。ユカコ
とのスーパーのシーンでは、素直に放射能への不安を語る洋子。
最後の幼稚園でのバトルでは、サキエと典子が、1mの至近距離
でやりあう後ろに美加、さらに後ろに”風邪理由”のマスク姿で
立ち、ときどきうなずく。ここで、私が考え込んでしまうのは、
心情的にはサエコに近いのに、実際にはサエコに脅威を与える側
になっている点。1対2と1対3というのは、やはり少し違う、
論理的でないバトルでは、数の優位性が、圧力にかわってくる。
自分もそんな立ち位置にいることは、結構あるのではないか?
とふと思ったりする。ちなみに、この方も私も京都出身。
「京都みなみ会館」で舞台挨拶されたとき、行きたかったなあ。

あと、気になったことを、つらつらと。

「アパート/マンション、ガス自殺」
映画のパンフをみると、主人公の住居を、アパートと書いている人
と、マンションと書いている人がいて、ちょっと気になりました。
その原因のひとつとして、最上階に住んでいるというに、エレベータ
が登場しなくって、元々着いてないのか、節電しているのかが不明
なとことあり。これも考えさせるところなのだろうか?郵便受けで
一番上のところから取っていたし、階段上りきった所のフロア
だったから間違いないと思うし、前の道路を見下ろす角度は、
1,2階ではなくおそらく3階か4階のはず。ただ、ベランダ間を
移動したシーンは、4階にしても3階にしてもちょっと危険、
撮影は1階でやったんじゃないの?それにガス自殺。
いまどきのガスコンロは火が消えるとガスもとまるはずでは?
ユカコが、幼稚園へ急いで自転車で行くときの方向が
サエコと逆なのも気になった。そういえば、冒頭の音声は
ラジオだったのか?テレビだったのか?後からガムテープ
ぐるぐる巻きのTVと、ラジオ付CD/MDコンポも映っていたけど、
地震のときどちらも落っこちてたよねえ。などなど、説明は
つくのかもしれないけれど、アレレというシーン多かったです。
まあご愛嬌?と思いましょう。

「天気もカメラも曇りの映像」
全般的に映像が暗め、省エネモード?でも、震災後の5月に東京に
行ったとき、まだまだあちこち暗くて、エレベータも動いてないと思って
いたら、近くにいくと動いたりと、そんなときのことを思い出しました。
また、焦点が浅くて、商店街を歩くシーンなんて、人に焦点合わせてて
後ろのお店がなんのお店かわかりませんでした。ただ、シャッターが
ほとんど降りているなあというくらい。おそらく、それも狙い通り
なんでしょう。歩く二人の会話に集中できたような気もしました。

「ラストシーン」
残るも地獄、去るのも地獄。結局、なにも解決していないし、問題は
より一層深刻化していくことも予期させる終わり方は、悪い意味での
「おだやかな日常」というタイトルにふさわしい。補足すると
映画ようなの激しいバトルは、実際にはあまりみられないもので、
怒りやストレスは、もっと底でくすぶって蔓延いるのが、現実。
それが、「おだやかな日常」ということと理解しました。
また、ある程度福島から離れた東京近郊という表面上おだやかに
過ごすことも可能な設定というのが、冴えていると思いました。
アントニオ猪木さんの「世の中もっと怒りが必要」というのにも、
通じるものを感じます。「おだやか」でいいのか?そのままでは
現状維持しようにもどんどん落ちてゆくかもしれないものに
しがみついていないか?自分のことだけ考えてないか?
監督は、この映画をとらないことには前へ進めないと
言ってられましたが、この映画は
『なにも考えず(或いは目先の利益だけ考えて)、
前へ進もうとしている人と国に対する警鐘』
と受け止めました。

最後に、内田伸輝監督作品は、はじめてみせていただきました。
前作『ふゆの獣』でも、本作と同じ、ユカコ、ノボル、サエコが登場。
見たらまた、それぞれの登場人物の意味が深くわかるかも。

ではまた。



コメント ( 2 ) | Trackback ( 2 )



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コメント
 
 
 
Unknown (starfield)
2013-02-01 21:59:36
とてもわかりやすい内容です。
これを観たくなりました。
 
 
 
Thank you (もっきぃ)
2013-02-11 01:33:54
コメントありがとうございます。
どちらにお住まいかは存じませんが、
東京・渋谷のアップリンクでは今週も11、
13,14と上映後に、舞台挨拶やトークショーがあります。こういうのって、やっぱ東京いいですねえ。
 
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