モジリア

74歳のブロガー。ギネスを目指す!(^^)!
おじさんが読む「赤毛のアン」

豆本小説 ミニーの死

2013年03月06日 | 豆本

ー ミニーの死  ー 

 茉子ちゃんはミニーが死んだときのことを思い出しました。

悦ちゃんの小母さんから生まれて間もない

ビーグル系の赤ちゃん犬を貰ったのです。

ある朝のことでした。

ミニーに餌を上げようと玄関のドアーを開けると、

いつもだったら千切れるほど尻尾を強く振って、

「早く!早く!」と催促するように待ち構えているミニーがいません。

 

「ミニー!ミニー!」と呼んでも返事がありません。

茉子ちゃんは庭に出て家の裏の方を探すと、

そこにミニーが横たわっているのです。

「ミニー!」大きな声で呼びました。

ミニーが死んでいるのです。

「ミニー!ミニー!」と叫びながら、お腹の辺りをさすりました。

冷たく、少し強張っているのです。

「ミニーは死んだのだ!」と思いました。

 

街外れを流れる谷地川の辺りはミニーと散歩した道です。

大きな駐車場があって、その先は広々と葦が茂っています。

その先は林、林の向こう側を市川霊園から、船橋方面へ向かう通りがあります。

 

 悲しくて、悲しくてたまらなくなって、

茉子ちゃんはその大きな駐車場の一番奥の所で、

「ミニー!ミニー!」と叫びました。

そして今度は少しゆっくりと、

「ミーニー!ミーニー!」と叫びました。

 

元気なミニーと一緒にいるような気がしました。

 

2回3回と繰り返しているうちに、

遠くの、遠くの方にいるミニーに呼びかけているような気がしました。

 

ミニーは遠くの方で時々立ち止まって頭だけ振り向きます。

そして又遠くの方へ進んでゆくのです。

ミニーはどこか遠くの方へ行く途中なのです。

呼び戻してはいけない気がしました。

 

茉子ちゃんは思い切って、

「ミニー!さようなら!ミーニー!さようなら!」と叫んで

別れを告げたのです。そして、

「ミニー!ありがとう!ありがとう!ミニー沢山、沢山ありがとう!」と

心からミニーお礼を言いました。すると、不思議なんです、

ミニーはこちらを向いて、ワンワン!と吠えました。

もう一度ワンワ~ンと吠えました。

茉子ちゃんの方に向かってお辞儀をしました。

そして、くるりと向こうの方に向きを変えて、歩き去ったのです。

谷地川のサラサラ、サラサラッと流れる音が聞こえました。  

青い空にスーッと一筋の雲が流れていました。

 (おわり)