野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

2019年のLoretta Lynn'sはどうなっている?

2019-08-12 06:31:00 | 二輪事業
2019年の米国Rocky Mountainで開催されたAMAアマチュアモトクロスナショナルレースで、カリフォルニア拠点にレース活動を続けてきた下田丈選手が大活躍していると、SNSにあったので調べると、「250 Pro Sport - Overall Finish Positions」では17位となっている。下田選手は1ヒート目が8位、2ヒート目が1位、3ヒート目がリタイヤでトータル17位。それにしても、有名なLoretta Lynn'sで日本人選手がヒートであれ優勝した事等は聞いたこともなく、全日本から脱出し米国を主戦場として戦う日本人選手が現れた事に些かびっくりしている。

さて、日本人の活躍はさておき、全米最大のアマチュアモトクロスレースの祭典、Rocky Mountain's Ranchにおけるレース結果「full results」があった。
アマチュアライダーの原点クラスは排気量”65cc”と”85cc”のミニモトクロスクラスが中心だが、このリザルト表を見てビックリした事がある。10才前後のアマチュアモトクロスライダーの出発点である、65や85ccクラスは「KTM」マシンが既に凌駕している。かろうじて、最近、65ccクラスに新モデルを投入したヤマハが善戦しているものもあるが、総体的にみれば、どのクラスもKTM車が上位にあり、特にモトクロスの原点で重要クラスは「KTM」が独占状態だ。
   「65㏄、10-11」
   「85㏄m10-12」

かって、日本メーカーがオフロード市場に進出する際、最も大事にした購買層はキッズ市場で、各社ともキャンペーンを組んでこの層のユーザーを大事に育ててきた。しかし、だいぶ昔の話しだが、アメリカの訴訟問題が加熱した時期に、訴訟問題を恐れた日本の二輪企業ヤマハ、スズキ、ホンダが全米のアマチュアライダー支援から全面撤退し、全米のアマチュアライダーを支援しづけてきたのは唯一カワサキの「Team Green」のみとなった。かくして「Team Green」はカワサキ車のみならず、カワサキ以外のユーザーまでを分け隔てることなく支援しつづけることで、アメリカのオフロード市場を底辺から支え続けてきた「Team Green」活動も今年で38年目に入る。

そして、数年ほど前から欧州のKTM社がアマチュアモトクロス分野の支援に参入した。KTMがアマチュアライダー支援を開始すると、「Team Green」が支援しきれていない分野を、それまでの日本メーカ以上の支援活動を実施するとともに、更に戦闘力のある多くのミニバイクを開発することで、絶対的にKTM車のマスが増加しつつあった。更に、5年ほど前だと思うが、日本二輪企業の中では最も多くのオフロード車の品揃えを提供しているメーカー、ヤマハがアマチュアライダー支援を開始した。多くのアマチュアライダーにとって、自分が購入したバイクメーカーが全面支援してくれる販売企業が増える事は、鬼に金棒だ。

爾来、日本各社が二輪市場支援活動から撤退もしくは縮小した間隙の中に、米国オフロード市場に参入してきたのが、前述したオーストリアの「KTM」社だが、その効果はてき面で、65cc、85cc市場はオレンジ色(KTMカラー)一色に変貌してきた。こうした傾向にあることを各メデイア情報で既に分かっていたが、これほどまでにKTMが独占状態に台頭しているとは思いもしなかった。この傾向はミニバイク市場だけかと言うと決してそうではなく、250cc、450ccプロクラスのチャンピオンはKTMが占め、しかも多くの米国モトクロスバイク専門誌が毎年実施しているバイク比較でもKTMが常に最上位に評価されているのを見るに、既にこの米国オフロード市場は「KTM」が独占する時代へと変わった。昔から米国でのモトクロスを筆頭とするオフロード市場は景気に左右されにくい安定市場で、米国民には昔から根強い人気がある。KTMはこの大市場の頂点に立った。
        
「KTM Ready to Race」単純明快なコンセプトが、アメリカのオフ市場を席巻する日が近い事を予感させると何度も当ブログにも書いてきた。世界のトップアマチュアが勝つために選ぶマシンがKTMだとすれば、彼らがオピニオンリーダーとなって市場を引っ張るので、日本の二輪企業は米国モトクロス市場から掃き出された感さえある。(別件だが、KTMの大株主はインドのバジャージ社。BMWの傘下にあった、ハスクバーナ社をKTM社のCEOが買収したので、KTMとハスクは兄弟)さて、これから日本の二輪各社が、KTMが占拠する市場に、如何に戦いを挑むかあるいは逃げるか、どのような動きをするか楽しみに観察してみるのも面白い。

と言うのは、全米には、多くの市民がオフロードを楽しむエリアが幾つもある。現地に行くと、そこには数台のキャンピングカーを中心に、父親と少年少女達がモータサイクルや四輪バギーVW改造車でビュンビュンと走リ回っている。側で、母親はキャンピングカーに張ったテントの下で昼食のサンドウィッチを準備をしていて、楽しそうな家族的な風景があった。どちらかと言えば、キャンピング地の近くは、リタイヤした老人達が余生を過ごす場所でもあるが、ホテルの食堂は家族が楽しむ場所でもあった。そこには、暴走族まがいの人達は一切おらず、あくまでも家族単位の行動で、アメリカの週末の過ごし方の一つを垣間見る事が出来た。アメリカ人は長い開拓移民時代に、家族が一つの単位となり、幌馬車に揺られて 新天地を求めて歩み、永住の地にたどり着いた歴史がある。その頃の開拓民にとっては「家族」が唯一の財産であった時代の名残が、いまも脈々と受け続けられているのだろうと思う。開拓時代の馬が現代は単にモトクロスマシンに替わっただけで、一家の宝である自分の子供が英雄になった、この瞬間瞬間を家族は大事にしていくのだろう。こうして見ると、この世界が息づいている米国白人社会では、モトクロスを中心とするオフロード車市場は伸びる事はあっても廃れるとは考えられない。


コメント
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