野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

KTMの燃料噴射2サイクルエンジン登場

2017-05-17 06:25:42 | 二輪事業
去る3月、MotocrossActionネット誌が「RUMORS ARE TRUE! KTM ANNOUNCES TWO-STROKE FUEL INJECTION MODELS」を報道していたが、その続報が5月16日のMotocrossActionネット誌に「INSIDE LOOK AT THE 2018 KTM 250 FUEL-INJECTED TWO-STROKE ENGINE」として紹介されている。新エンジンは2018年モデル250XC-W TPIオフロードモデルの1台に搭載されるそうだ。
「TPI 」とは 「Transfer Port Injection」の略称で、2サイクルエンジンの掃気孔に燃料を噴射する機構だとある。TPIの燃料供給システムは、掃気孔壁に取り付けられた2個のインジェクターが左右の後方掃気孔(多分主掃気と副掃気があると思われる)夫々に燃料を噴射する。結果、燃料消費量を大幅に削減し、欧州の最新の排ガス規制である「新 Euro-4 emission standards」に合格すべく計画されているとも書いてある。
 

吸入空気と吸入圧、スロットル位置、オイル温度と水温を検知する5個のセンサーを読みこんで最適な点火時期と燃料制御をECUがコントロールする。シリンダー内の潤滑方式は、従来の燃料・オイル混合供給ではなく、別体の700㏄の潤滑油タンクから電気式オイル給油ポンプでエンジンに分離供給される。シリンダー排気口は排気タイミングを制御する排気バルブを装着し、外観から見ると排気バルブ固着対策も講じられている模様。また、TPIエンジンの電力供給用フライホイールはオルタネータの一部として機能する。


ごく最近、ホンダから2018年モデルの4スト450㏄モトクロッサー量産車がネット誌上に発表された。その改良点の一つにセルスタータが装備されている。4ストエンジンの欠陥の一つである暖気後のエンジン再始動の悪さは致命的で、しかもレースの勝敗を決する極めて重要な場面でエンジンがストールし、再始動に何度キックを繰り返すと益々再始動が困難となって、勝負に負けて涙を飲む場面をしばしば見ることがある。これがトップ走行中に発生するとライダーに責任がないだけに泣くに泣けない。この改良点としてセルスタータ装着は正解だろうが、2サイクルエンジンの再始動性は極めて良好なのでこのような問題はなかった。このように近年、モトクロス用エンジンが従来の主流であった2ストロークから4ストロークエンジンに代わり、2サイクルエンジンの持つ優位性だったものが、4スト化によってエンジンは複雑化し、それは重量増と繋がった。4ストエンジンの持つ欠点を解消するために、油圧クラッチ採用だ、セルスターター採用だとなると、それらは更にコストに跳ねかえり、結局ユーザー負担。これでは健全スポーツを志向するモトクロスファンが逃げていくような気がしてならなかった。加えて、AMAのSXレースの動画を見ていると、最近、著名なライダーの転倒シーンが頓に目立つようにもなっており、その転倒シーンを何度も繰り返し見ると、ライダーの意思とエンジンの挙動が必ずしも一致していないように思える場面が見えて気になっていた。

ところで、世界のモトクロスレース規則をみると、最近、オーストラリア、カナダ、デンマークそして米国のアマチュアレースに続いて、欧州を主戦勝とするEMX GPサポートシリーズが250㏄クラス(EMX250クラスはモトクロスグランプリレースのサポートレースで、欧州では最重要なクラス)を、従来の4ストローク250㏄エンジンに加え、2ストローク250㏄エンジンエンジンでの出場を許可する結論となった。従来は、このクラスに出場する2サイクルエンジンは排気量半分の125㏄のみが許可されていたが、排気量の差別化を撤廃すると言うもの。やっと、4ストエンジンが2ストエンジンと同等に競合できるレベルにまで競争力が向上したので、エンジンの差別化をする必要性が無くなった言う事だろう。ルールは企業のためにあるのでないのだから、やっとエンドユーザーの要求にルールが近づいる。

その理由の一つが2ストロークエンジンのメンテナンスの簡便さやコストパフォーマンスの優位性によるもので、末端ユーザーは2ストロークエンジンの利便性を評価し、2ストローク待望論が根強くあっただけに、至極自然な決定だと思う。10年ほど前のルールブックはエンジンストロークによる差別化はなかったが、4ストロークエンジンがモトクロスに適用される従い、性能的に劣っていた4ストロークエンジンを救済するためにエンジン排気量を差別化していた。やっと4ストロークエンジンのエンジン性能が2ストロークエンジンと同等に戦えるレベルになったので、エンジンストロークに排気量の差別をなくそうと言う動き、これはエンドユーザーの強い要求によるものだろう。そして、2ストロークエンジンの欠点の一つであった、燃料消費量や排ガス規制の課題が改良された250XC-W TPIエンジンの供給が現実化すれば、更に末端ユーザーの要求を満足させるもので歓迎されると思う。

KTMは欧州オーストリアの二輪企業だが、ここ数年、世界最高峰モトクロスレースである、世界モトクロス選手権や米国のスーパークロスレースでチャンピオンを獲得しつづけている、名実ともに世界のオフロード市場の頂点に立つ名門企業。しかもUSKTM「Orange Brigade」の草の根活動は、米国のアマチュアモトクロスユーザーを支援しつつ、更に戦闘力のある多くのミニバイクを開発提供しながら米国のオフロード市場においても絶対的な信頼性を構築してきた。更に言えば、ここ数年の本格的モトクロッサー450、250クラスの量産車分野においても、雑誌評価(Motocross Action 、Cycle News)によると日本車を完全に凌駕しており、常に最上位の評価を獲得し続けている。その名実とも世界トップに君臨するKTMが発表した「新2サイクルエンジン」には大いに興味がある。

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