小川の小路でピアノの音

ピアノ、音楽を通して感じたことを綴っています。

本物のチェンバロを聴いて

2018-03-03 17:09:42 | ピアノ
都内の方でチェンバロの演奏会を聴きに行きました。場所は杉並区のベリエスタジオという所、住宅街の一角にあり一見普通の家でしたが入ると小さなサロンになっており風格漂うチェンバロが配置されていました。

近くに寄るとこんな感じになっています。曲によって、両端のレバーで上の鍵盤を手前に動かしたり奥にやったりして音量や響きを変えたり、鍵盤の上にあるレバー(模様で分かりづらいですが茶色のレバー)でハープ風の音色にしたりしていました。こんな操作を初めて目の当たりにし、興味津々で見てました🎵

今回の演奏はフランスものが若干多かったです。ラモーやクープラン、他フランスの作曲家の曲が半分以上を占め、スカルラッティ(イタリア)、ドイツものがちょこっと、バッハやイギリスものは1曲のみでした。「この先生はフランスびいきなのかな...」とレッスンの様子を思わず想像してしまいました。

私が知っている曲はバッハの「イタリア協奏曲」のみでした。知らない曲ばかりの中で唯一懐かしい曲を聴いて安心感を感じました。
この曲が生まれた由来を一つ、バッハが当時遣えていた宮廷の王様がオランダに行った帰りにバッハへお土産を持ってきてくれました。それは音楽最先端の位置にいたイタリアの偉大な作曲家たちの様々な楽譜でした。印刷技術が優れたオランダにはそのような楽譜がたくさんあり、バッハが目を通した事によって新たな試みが生まれます。当時「協奏曲」という形式が大いに流行っていたイタリア、バッハは全ての様々な楽器が鍵盤楽器一つに集約出来るように曲作りを始めました。この「イタリア協奏曲」もその過程の中で作られた曲です。

そしてもう一つ、素敵だなと思った曲、それはイギリスの作曲家トマス・モーリーの「パヴァーヌ、ガリアルド」です。イギリスの曲は、フランスやドイツやイタリアとはまた違う独特の雰囲気があります。日本と同じ島国だからこそ周りの国の影響も程よく受けながら、独自の音楽文化を築いていけたのだと思います。連続3度、6度の進行を初めて取り入れたのもイギリス、そして「対斜」といってコードの中の同音を片方だけ半音ずらす手法、これはイギリスだけの響きです。

ダンスタブル、バードなどの偉大ななイギリスの作曲家に比べたらモーリーは無名に近いのかもしれない、でもイギリスの雰囲気たっぷりの、爽やかで余裕を感じさせる素敵な曲で私は曲の世界に引き込まれました。

この作曲家の年代をみると、ちょうどエリザベス1世の時代、イギリスでは政治や経済が豊かになるとともに音楽の文化も発展し、ヴァージナルという楽器が大流行した時代でもあります。
ヴァージナルはチェンバロの仲間ではありますが、微妙に違います。チェンバロは今のグランドピアノを少し小さくした形ですが、ヴァージナルは長方形の箱形で、音色はチェンバロよりも音量は小さく野太い音がします。きっとチェンバロではなくてヴァージナルで17世紀のイギリス音楽を聴けば、より当時の響きが再現される、ヴァージナルでも聴いてみたいなと、新たな欲が出てしまいました。

そんな感じでチェンバロの演奏を堪能してきました🎵