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犬の功と人の功

2005-10-20 06:24:10 | 十八史略を読む Ⅱ
十八史略を読むⅡ-68 漢帝国の成立-7 犬の功と人の功

「十八史略Ⅱ 権力の構図:徳間書店、市川宏、竹内良雄訳、1986年12月七刷」から

漢の論功行賞で領地の配分が行われ、“さん候”に封ぜられた蕭何がずば抜けて広い領地をもらった。他の功臣たちは、口を揃えて不平を言った。

「我々は体を張って第一線に立って、多いものは百数十回の戦闘に参加し、少ないものでも数十回は戦ってきました。しかるに、蕭何どのは一度も戦場で走り回ったことがなく、やったことはと言えば、書類いじりや議論だけではありませんか。それが我々以上とはどうしてなのでしょう」

高祖は言った。「いいか、おまえたちは狩りというものを知っておろうが、獲物を追って仕止めるのは犬だが、その犬の縄をほどいて指図するのは人であろう。いわばおまえたちは、逃げ回る獲物を仕留めただけのことで、手柄といっても、犬の手柄だ。そこへいくと蕭何の手柄は“人間”の手柄なのだ」

臣下たちは、それ以上何も言えなくなった。

*この例えは厳しすぎるような感じがしますが、それだけ論功行賞に値する人が多かったので、こうとでも言わなければ、おさまりがつかなかったのでしょう。

注釈でかつての中国には「良い鉄は釘とならない。良い人間は兵隊にならない」ということわざがあったくらい、文官優位で軍人は重きを置かれなかったようです。

高祖の判断も中国伝統の初期的な例とも言えると記述されています。