つづりかた

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フェリックス・ヴァロットン 「ボール」

2012年08月27日 | 美術
ドニの事を調べていて、この絵に出会った。
2010年国立新美術館でのオルセー美術館展に出展していたらしい。


フェリックス=ヴァロットン 『ボール』





夢中でボールを追っていく少女。
少女は全速力で画面を駆け抜ける。
ボールをおいながら、自らも追いつかれる恐怖から逃れるように。
何から?
時間から。少女を成長させる全てから。


遠くでおしゃべりしている夫人は母親だろうか。
少女は少し夫人を気にしているが、
ボールを追う事に魅了され、自分を止める事が出来ない。

駆けて、息が切れるほど駆けて。

少女がもう母親の元へ帰れない事を観覧者は知っている。
少女も本能でそれに気づいている。
観る者と少女とで
ひそやかな秘密を共有する。共犯という名の甘美。



気がついた時には、少女も、観覧者も、
目論み通りに、
何処とも知れない場所にさ迷い込んでいる。