曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

慈光寺探訪(5)

2011年01月29日 | 彷徨う
 
観音堂に着く。駐車場はずっと下だ。
 
今まで通ってきた施設より観音堂は大きく、その敷地も広い。山に張り付く場所で、この平地の広さはなかなかのものだ。
 
年配の女性の団体がいたが、駐車場へと直に向かえる急な階段を降りていった。
 
私は観音堂の前に立った。こんな場所に住んだら、いろんなわずらわしさから解放されてのんびりできるかもしれない。でも果たして、それが何日もつだろうかという気にもなる。酒も肴も手に入りにくいだろうし。と、こう考えてしまう時点でここに住む資格などないだろう。
 
それにしても、久々に目にする雄大な景観だ。東京に住んでいると、タワーか高層ビルにでも上らないとなかなか目にすることはできないし、それすらも住宅地の俯瞰で、自然の眺めからは一段落ちる。
 
こういったところで残念なのは山の中腹のゴルフ場で、妙に緑が目立って景観にアンバランスな感じを生じさせる。プレイしている方だって難コースだろうに。でも料金は安いのだろうな、とも思う。
 
 
冷えないように足踏みしたり歩き回ったりしていたが、寒さが体の心にまで入り込んできた。私は駐車場に帰ることにした。
 
再び石段を通る。猫はまだ日向ぼっこの最中で、さっき一度見た顔だからか、一瞥するとすぐに顔を埋めた。
 
 
一時間もいなかったのに、車の中は冷えていた。私はコートを着たまま車に乗り、山道をゆっくりと下って行った。
 
 
(おわり)
 

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