曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

小説・駄菓子ロッカー(8)

2014年01月27日 | 連載小説
(8)
 
いつものように、朝、Fは新聞を開く。
国会が始まったし、本来であればやらなくていいはずの都議選も公示された。これからしばらく誌面は政治がらみが多くなり、ニュースもその手のものが増えることだろう。新聞なら破ればいいが、テレビはそうもいかない。その昔、映画の中で松田優作がむかつくテレビに鉄アレイを投げてぶっ壊していたが、もっともらしいことを話す政治家が映し出されるとあのシーンを思い出すことになろう。政治家の発言にいちいちテレビをぶっ壊していたら破産してしまうのでやらないが、しかし鼻をかんだあとのちり紙くらいは投げつけようとFは誓った。
 
名護市の選挙結果を見ると、まだまだゴタゴタすることになるだろうとFは思った。与党の中枢はいい気なものだ。どういうカタチであろうと「決定」というものをすればゴタゴタが起こると分かっているのに、選挙期間とお願いごと以外はそっぽを向いている。
 
沖縄に基地問題のほとんどを押し付けている罪滅ぼしに、どうだろう、全政党の本部と議員会館のすべての部屋に、軍用機の轟音をリアル受信するスピーカーを設置してみては。
同じように轟音で苦しんでもらえれば、沖縄県民だって少しは溜飲が下がるだろうに。よく飛行機のエンジン音を「ゴー」と書くが、軍用機の騒音というのはそれだけではない。「ヒューィ、ヒューィ」と空気を吸い込むような、通常の飛行機ではしない、神経を逆なでする音もたてる。ぜひともバッジを付けた偉ぁいセンセイがたにも味わっていただきたいものだ。Fは常々そう思う。
さすがに数百人もいれば中には良心的な人間だっているだろうから、轟音を実体験してもらえば、こりゃひどいと問題を真剣に考えてくれる議員も出てくるかもしれない。もっともその反対に、議員会館に来なくなる議員もいることだろう。
 
Fは食後のヨーグルトを食べ終え、新聞を引き裂いて立ち上がった。さて、仕入れに向かわないといけない。寒くて面倒だが、政治家に苦言を呈している以上、自分自身ちゃんと働いて税金を納めないといけない。
FはCDデッキのところに行き、政府を糾弾するジョー・ストラマーの歌声を止めると、仕入れに向かう支度を始めた。
 
(つづく)