曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

小説・つなちゃん (1)

2013年01月30日 | 連載小説
《大学時代に出会った、或る大酒呑みの男の小説》
 
 
(1)
 
 
バイトは決めるまでがかったるい。大学1年の夏休み、ぼくはせっかく時間があるのだから働かないと、とは思いながらも、しばらくダラダラしてしまった。
それでもバイトを決めないといつまで経ってもカネが入ってこない。遊びにも行けないし、生活も追い詰められる。そこでぼくは、とりあえずなんでもいいやと新聞広告から適当に決めて、さらには面接にちゃんと行くよう、友人2人もまるめ込んだのだった。
向かったのは建築資材を作っている工場で、人手不足なのですぐに採用となった。もちろん3人とも。
夜間の勤務で、17時から22時。さっそく今晩から来て欲しいということで、押し付けられるように作業服を渡された。
夕方出直すと、17時の、一応退勤時間に20人ほどの作業員の前で紹介され、残業時間に組み込まれて社員と一緒に働きだした。
ぼくたち3人の入ったのはプレスの棟で、10人弱の作業員がいた。3人が社員で、あとはぼくたちと同じアルバイトだった。
そこにいる一人一人からあいさつされた。その中につなちゃんもいたのだけど、その時点では印象に残らなかった。