気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Stay With Me 22 最終話

2020-02-03 10:04:00 | ストーリー
Stay With Me 22  最終話






それから4ヶ月 ーー
季節は春


僕らが交際を始めて5年

理奈ちゃんは28歳
僕は44歳になった



今日は結婚式

明け方まで降っていた雨は夜明けと共にやんで明るい日差しが差し込んでいる

窓の外の初夏の木々が昨夜の雨露で光っていた


私の控え室を訪ねてきた行さんに
スタッフの女性が気をきかせてくれて

15分ほど席を外してくれた


「行さん、ありがと。」

ウェディングドレス姿の私と
タキシード姿の行さん


二人きりだとなんだか 照れくさいな


「困ったな(笑) 本当に綺麗だ。」
嬉しそうに顔にシワを作った

「行さんも素敵でドキドキしちゃう(笑) 」

「僕なんか君の引き立て役にすぎないよ(笑) 」



私を見つめる行さんの横顔が鏡に映っている

ほんと 行さんは長身でスタイルが良いからテレビから出てきた人みたい



「ちょっとだけ、抱き締めていい?」

セットした私の髪が崩れないよう軽くハグをした

いつもの行さんのフレグランスの香りで
少し緊張気味だった気分が落ち着いた


「行さん、今日までありがと(笑) 」

「これからだよ。これからもっと幸せになろうな(笑) 」


私の手が行さんの綺麗で大きな手で包まれ
優しく微笑む行さんのまつげに優しい日差しが当たっている



カシャッ!

シャッター音が聞こえた




「良い“画”だね(笑) 」



斉藤さんは約束通りカメラマンとして
今日の写真を撮ってくれることになった


「斎藤!理奈ちゃんとびきり綺麗だろう(笑) 」



いつもはラフな服で長身の斉藤さんも
今日は洒落たブラックフォーマル

いつもよりもっと格好良い


「ああ(笑)とても綺麗だ。結婚、おめでとう(笑)」

斎藤さんは私のことを
お亡くなりになった斎藤さんの妹のように思っていると行さんから聞いた


私に向けるこの眼差しには

妹さんを送りだす兄のような特別な想いが含まれているのかもしれない


「ありがとうございます。斎藤さん。」

「そうだ(笑) まだ俺の番号ちゃんと残してある?こいつに泣かされたらいつでも連絡しておいで(笑) 」


あははっ(笑)
前にも同じこと言ったね

本当にお兄ちゃんみたい



「またそんなことを!泣かせないから理奈ちゃんがお前に連絡することは絶対にないぞ。期待はするな。」

「はははっ(笑) 嬉しい報告はお前じゃなく理奈ちゃんから聞きたいもんだね(笑) 」


嬉しい報告?
あ、妊娠の報告とか?


「私から連絡します(笑) 」


本当に二人は親友なんだな
お互いに信頼し合ってる

笑顔で話す二人を
こっそりスマホで写真を撮った


ほんとに“良い画” ーー


スタッフさんが呼びに来て
最終の段取りの確認を聞いている私達を斉藤さんは写真に納めてくれていた


光がキラキラと差し込む厳かな教会のバージンロードを父と歩く

子供の頃からいつも仕事で不在にしていた父

私はお前に父親らしいことは何もしてやれなかった
本当にすまなかったと言った父の言葉


あんなに長年

父に対する不信感が
こんな 一瞬に晴れるなんて思いもしなかった

その父と歩く今のこの瞬間のことは
忘れられない思い出になるだろう


あんなに行さんに不満があった
あの兄も参列してくれた

兄は今 タイで親友と店を開き
そこそこ繁盛しているらしく


多忙の中 結婚式にかけつけてくれた

ウェディングドレス姿を見た兄は目を赤くして私に嬉しそうに微笑んだ


お兄ちゃんも 父親みたい(笑)



行さん側の親族参列席に人目を惹くほど綺麗な女性がいた

行さんの妹さん(お義姉さん)だと直ぐにわかった

その微笑んでいる表情が
本当に行さんによく似てる


私はあの時
お義姉さんを行さんの新しい彼女だと思いこんだ

こんなにもよく似ているのに



あの時の心がそう思わせたのかもしれない


父の手から彼の手に代わる

見上げると光輝いている彼が微笑んでいて



まるで夢の中にいるみたいな光景だった


ーーー



結婚式と披露宴が終わって新婚旅行

大きなイベントが終わって
私達はよくやく日常生活に戻った


休日は掃除機をかけて洗濯物を干す私と窓拭きとお風呂掃除をする行さん

分担すると終わるのが早いからと
半分 (もしかしたら半分以上?) 手伝ってくれる





“必ず娘さんを幸せにします”

私の両親にはそんなオーソドックスな言葉を言ってくれたけど


生真面目なくらい
その言葉通り有言実行してくれる

それが信頼できる誠実な人だなって
常々実感させてくれて

幸せを感じる


掃除が終わると一緒にスーパーマーケットで食材の買い物をして冷蔵庫に詰めた


「今 帰ってきたばかりなんだけど 天気も良いしちょっと出掛けないか。」

「どこに?」

「ちょっと、ね(笑)」



行さんがいつもよりオシャレな服を着るから私もそれに合わせたけど…



車を運転する行さんの横顔
前髪が風で揺れてる

チラッと視線を私に向けてまた前を向いた


「そんなに見ないでくれ(笑) 」


そういえば ずっと前も運転する行さんを見つめると同じことを言ってたことを思い出した


「どこ行くの?」

「前に行ったところ(笑) 」


実は
まだ行さんに話してないことがある


昨日 仕事の合間に産婦人科に行った


月のものが来なくて
また病気が再発したのかと心配になって行さんには内緒で受診した


“寺崎さん、良かったですね。おめでたですよ。”



信じられなかった

まさか… 私が子供を授かることができるなんて


本当は 諦めていたから



直ぐに行さんに電話をしようと思って電話をかけたけれど

まだ仕事中で電話は繋がらなかった



明日の休日 落ち着いて話をすることにした


行さんは どんな顔をするかな
きっと喜んでくれるだろうな



ゆっくりお店の駐車場に車を停車させた

あー!ここ!



「初めてスイーツ巡りしようって言って来たお店だね(笑)」

「ん… (笑) 」

「私を太らせる作戦?(笑) 」

「それは考えてなかったな(笑)」


口元を手で覆ったから図星だろうなぁ(笑)

行さんはとても感情が分かりやすい人

本人は自覚はないけど(笑)


お店に入ると 前に座った席が空いていたからその席に同じ位置に座った

このお店のチーズケーキ
とても美味しかったんだった


チーズケーキと珈琲が運ばれてきた時の行さんの嬉しさを隠した口元や表情はあの時と同じだった


「本当に甘い物が好きだね。可愛い(笑)」



急に大人の男性の表情に変わった

「甘い物好きだよ。君も甘いんだよ?」



ん? それはどういう …

えっ!!



「 (そういうことは、ちょっと、、) 」

周囲を見渡した


「ん?そういうことって?(笑)」
爽やかに微笑んだ


「理奈ちゃんと一緒にいると本当に楽しいよ(笑) 久しぶりのデートだね(笑)」









“デート”


「久しぶりにスイーツデートだね(笑)」




「初めてデートに君を誘う時。凄く緊張したなぁ(笑) ふふっ(笑)」


頭を掻くこういう仕草は変わらない


“初めてのデート” という言葉で
お互いに出会った頃の事を思い出したのか

行さんは当時のことを話し始めた



私が同じマンションに引っ越ししてきた日

修二くんが引っ越しを手伝ってくれた

行さんはその引っ越し作業をしている男(修二くん)を見かけたという

その若い男が引っ越してきたと思い
その後は忘れていたようで


エレベーターで初めて会った時のことは私は全然覚えていないけれど

行さんはちゃんと覚えていた

毎朝同じ時間に家を出る私に合わせて行さんも家を出ていたこととか


「なんか、あらためて話すと僕ってヤバい行動を取ってないか? ストーカーじゃないからね(笑)」


今さらそんなことわかってると笑うと彼も笑った


この人は出会った頃から今と比べると
見た感じはすっかり変わったけれど

私に対する想いはずっと変わらないでいてくれている


「行さん。今までありがとう。 これからもその想いは変わらないまま 一緒に変わっていこうね。

赤ちゃんができてもデートしてくれる?」


少し驚いた表情をして また微笑んだ



「もちろん(笑)もし子供ができてもね。

その時は母さんに頼むよ。喜んで見てくれるさ(笑)」



「赤ちゃん、欲しい?」


私のその言葉に 行さんは一瞬答えるのをためらった


「できなくても僕は全然構わないよ。君さえいれば。」



あなたはずっと
そんな風に私に気を遣ってきた



「来年ね。 赤ちゃんができるよ。」



「…え?」キョトンとした



報告することにドキドキする ーー


深呼吸した



「私。妊娠してた(笑) 」



その瞬間

行さんの目は飛び出しそうなくらい
大きく見開いた



「 ーー ほんとに?」




「昨日病院に行って、先生に確認してもらってきた(笑)」



私が話し終わらない内にいきなり立ち上がった


その椅子の音に周囲にいた女性客が一斉に行さんの方に視線を移した




「 ーーできたのか… ? 」


私が頷くといきなり行さんは叫んだ



「 ぅおぉーっ!(笑) 」



大きな声で人目もはばからず喜ぶ行さんに驚いた


周囲の女性は驚きながらも
微笑ましい眼差しで私達を見ていた




「座って、ちょっと、座って、行さん(笑)」




座り直すと食いぎみに

「で!? で!? どっちなんだ!」



男の子なのか女の子なのか性別を聞いてきたから
そんなのまだわからないよと微笑むと

元気ならどちらでもいい!とまだ興奮気味に喜んでいた


やっぱり
本当は凄く子供が欲しかったんだね


きっと この人は子煩悩な父親になるんだろうな



「なんだか… 幸せ過ぎて恐いなぁ(笑)」

「良いことがあると次は悪いことが起きると思ってるならそれは違うよ、理奈ちゃん。

そんな風に思ってしまうのは過去のトラウマ?そりゃこれから苦難はあるかもしれないけど大丈夫。

その時は僕も一緒だから。一緒に乗り越えていこうよ。

幸せなことはこれからもっと沢山あるよ(笑)」



あぁ… この人は
こういう人だったなぁ ーー




「ありがとう」

「変わらず ずっと一緒にね」



私の手を握った行さんの手が感じたことのないくらい大きく暖かく感じた ーー




「子供ができて家族が増えても

いつまでも僕は君の“男”でありたいと思ってる。

それに君はいつまでも僕の“愛する女”であることも変わらない。

だからこれからもこうしてデートしよう(笑)」



行さん…


「 (そういうことここで言う?恥ずかしいよ(笑)) 」

「 (聞かせてるんだ(笑)) 」



もう、バカっプルみたいじゃない(笑)


そういう言葉を口にする真っ直ぐな彼にいつも戸惑うけど


「ありがとう。家族が増えて
もっと幸せになるねーー 」


「もちろんさ。これからも毎日楽しいよ(笑)」




私は この人にこれからもずっと恋をしてるだろう








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