ひこにゃん×ひこにゃん ブログ 彦根にひとつだけの花

ひこにゃん それは古城に住まう心清きみんなのねこ

いちファンの綴るレポート&おとぎばなしのブログです☆

インターミッション XXXVI

2011-02-11 16:35:13 | 彦根ノムコウ
昨日今日と“近江みちの国講座”で両国に来ているもちさん!
2日間お疲れ様でした

“【妄想】ひこにゃん”に捧げます。







井の国に咲く橘の花 ~千年絵巻謳~

第二章 援軍・過去と未来と現在の交錯















元亀4年(西暦1573年)1月
遠江国引佐郡 井伊谷 龍潭寺









「お待ちしておりましたぞ!」


お家元はまさかここで声が掛かるとは思っていなかったので耳を疑いました。
そしてタイガーしゃん、南渓も同時に声の方を向きました

その声の主は僧体の男性で南渓の倍ぐらいの年齢に見えます。
でも着ている僧衣は明らかに上位の者を示すものでした。
そしてその脇にはもう一人尼僧が立っています、年の頃は30代くらいでしょうか・・・




年配の僧も尼僧も初めて会う者達ですが、どこか見覚えのある顔に
感じないでもありません。


「まさかこのような日が本当に巡ってくるとはな・・・」


「聡明なぬこ殿がとても戸惑っておりまする(笑)
 こんなぬこ殿を見るのは初めてではありませぬか?老師様」


「確かに(笑)、だが無理もあるまい。
 こちらのぬこ殿達は井の国に来られたばかりのはずじゃからな」


この29年後の世界の男女はお家元が井の国に来たばかりなのを知っています。
でも二人の正体が誰なのかはお家元には分かりませんでした。

そのすぐ横で南渓が衝撃を受けているのにお家元は気付きました。
それは明らかに相手が誰か理解しつつあった顔つきです!
正確にいえば南渓がその正体に気付いたのは、年配の高僧の方だけですが。

おかしな話です。
三人の中で最も未来に縁遠い南渓が正体に気付いているのですから!
でも実の所、南渓はその者達の顔に見覚えがあった訳でも理論立てて正体に
気付いていた訳でもありません。

理解した理由は実に単純でした。
自分の本能がその正体を必死に訴えてくるからです。


「(この僧は自分だ!年老いた自分だ!
 何故そう思うのか自分でもわからない、だが間違いなく自分だ!)」


それは南渓の心が常識や理屈を超越して訴えてくる衝動のような答えでした!
南渓にしか解らず南渓だからこそ気付いた正体です。
そう、目の前に立っていたうちの一人は龍潭寺の住職になっていた
29年後の南渓自身に間違いありませんでした!


「・・・・祐圓よ、二十九年前の自分を見るというのは随分気恥ずかしいものじゃな(苦笑)」


「くすくす・・・無理もありませぬ(笑)
 今いらしたお若い南渓殿は私よりもいくつか年下なのですから。

 私よりも年下というのはほんに奇妙な感じが致しまする(笑)」


「おけ!(苦笑)」


これは「ほっとけ!」という意味です。
29年後の未来の南渓の横に立っているその尼僧が、お家元を優しく見つめて微笑んでいます




尼がお家元に向かって言いました。


「・・・もう幼い私とは会われましたか?ぬこ殿」


と言って一層相好を崩しました!


「あっ!」


その正体が誰なのかお家元はハッキリと悟りました。
1544年に着いた早々に出会った姫の将来の姿です!
そう、“次郎法師”なのです!!
年齢は40を越えているはずですが、とてもそうは見えない若さでした。


未来の南渓と祐圓尼(次郎法師)はどうやら事情に精通している様子が会話から窺えました。
「待っていた」と言ったのが何よりの証拠です。


「ぬこ殿、もう我らが誰かお分かりですよね。
 こちらの方は将来の南渓和尚様、私は祐圓尼(ゆうえんに)、次郎法師にございます。」


「あい・・・でもなぜ・・・」


「ふふふ、つい先程我らの元に今のぬこ殿がいらしたのですよ。

 もうすぐ焼失した境内に二十九年前の南渓殿と自分達が一時的にやって来るので
 どうか事情を説明して貰えないかと!」


「しょういう事でしゅか!」


思いつきでやった一か八かの“タイム・スリッパ”でしたが
未来の自分がしっかりフォローしてくれていました。
ピンチをチャンスに変えたお家元達の連携です。


未来の南渓が若い南渓に言いました。


「南渓、そなたも儂が誰か気付いておろう。
 儂は二十九年後のそなた自身に相違ない!

 そなたはこのぬこ殿に連れられて時を超えたのじゃ!

 信じられぬだろうが信じよ!そしてこのぬこ殿の事も信じよ!
 余人ではない他ならぬ自分の言葉じゃ、これ以上ない証であろう」


若い南渓は言葉が出てきませんでした、無理もありません。
その言葉を補うように祐圓尼が言いました。


「初めまして、お若い南渓殿。
 私が誰かお分かりですか?」


若い南渓は首を振りました。
お家元と祐圓尼が交わしていた会話からだけでは情報が少なかったからです。


「私は姫です、お若い南渓殿」


「な、何!?、姫ですと?」


「はい」


「そんな莫迦な・・・それに姫が何故尼に・・・・・」


「この二十九年という刻は我ら井伊家に様々な事があった刻でした・・・
 それらはお若い南渓殿にとっては先々の世の事柄になります。

 先々の事柄の中には知ってはいけない物も数多くあります。
 それらを知ってしまうのは己の首を断つに等しき事」


「・・・仰る意味がよくわかりませぬが・・・」


「今は意味を解さずとも良いのです。
 それは追々そちらのぬこ殿が教えてくれる事になりましょう」


「この者らは一体・・・?」


「我らの掛けがえのない恩人達です!
 そして我らを導き標となる大切な御仁なのです!」


「この者達がですか・・・・?」


「そうです、お若い南渓殿。
 どうか我らの言葉をお信じ下さい、そしてこのぬこ殿の言葉も今後信じて下さりませ!

 何故ならこのぬこ殿達も必死なのです!
 お二人にとっても我らの命運がそのまま己の生き死にに関わっているのですから!」


「どういう意味でしょうか?」


「この方々は遥か世の果ての井伊家の末裔だからです!」


「つまり今の我らが道を誤れば、この者達は生まれる事すら
 無いやもしれぬという意味じゃ」


「お二人はこの者達がそうだと疑うておらぬのですか?」


「勿論です!」


祐圓尼は間髪入れずに答えました。
それを受けて若い南渓は口元に手をやって思案し始めました。


若い大叔父の慎重な様子に満足しながら、祐圓尼がお家元の前にしゃがみ
その細い指をお家元の頬に当てました。

お家元は触れた指が微かに震えているのを感じました。


「・・・・・ぬこ殿、井の国にようこそ。
 来てくれた事に本当に感謝致します。

 そなたが居なければ幼い私はきっと心折れ命を断っていたやもしれませぬ・・・
 重ねて礼を言います。

 そしてどうか幼い私を頼みます!あなただけが頼りなのです!」


祐圓尼は震えていただけではなく目に涙も浮かべていました。
この女性にこの日まで起こった出来事をお家元は資料からだけですが知っています。
でもそれは資料からは窺えない膨大な労苦の積み重ねのはずだと
お家元はちゃんと気付いていましたが、百も承知で宣言しました。


「ひこにゃんはその為に来たんでしゅ、ずっと支えましゅよ祐圓尼しゃん!」




その言葉を聞いた祐圓尼はお家元を抱き締め嗚咽を漏らしました。
それを眺めていた若い南渓は、この29年で一体何があったのか?と不安になりました。


「・・・・この寺は見ての通り焼け落ちてしまった。
 大事な本尊や仏像などは何とか運び出せたのだが、どうにも心がな・・・・

 この所我らは口を開くのも忘れておったが、そなた達が来てくれて
 久しぶりに笑った思いじゃ」


大事な寺が焼け落ちて平気な未来の二人ではありませんでした。
その傷はもちろんあったのです。


「先々まで井伊家に起こる出来事をあのぬこ殿は全て知っておる。
 だが何が起こるか聞いてはならぬぞ!
 知ってはいても話せぬ事が有ると知れ!

 だが困った時はぬこ殿を頼って良い!あの方はきっと力になってくれるだろう」


将来の自分は揺るぎ無いほどこのぬこを信じており
姫と名乗った尼は狂おしいほどに慕っています。

自分だけが蚊帳の外にいるような疎外感を若い南渓は味わいました。


「・・・・・承知致しました、この者達は私の客人として迎えましょう。
 直盛殿や彦次郎(直満)達にはそう紹介して差し支えありませぬな?」


「充分じゃ」


「・・・今朝までは今日こんな出来事が巡ってくるなど夢にも思いませんでした・・・」


「では覚悟せよ、今後度々あるからのう」


ゲッ!という若い自分に未来の南渓はクックックッと笑いが堪え切れませんでした(笑)
これは和尚の戯れ言(冗談)で、若い南渓がお家元と一緒に“タイム・スリッパ”に
向かう事は以後ありませんでした。 






「では戻りましゅか、南渓しゃん」


「頼みまする」


「ひこにゃん達は天文13年に戻りましゅね。
 (未来の)南渓しゃん、祐圓尼しゃん、そりじゃあ!」




次の瞬間、三人は元の1544年の龍泰寺の庵に戻って来ました。
自分は夢を見ていただけなのでは・・・と南渓は思いましたが
僧衣や足の裏などが灰や煤で汚れていました。


「現実だったのだな・・・・」


南渓は深いため息をつきました。








しばらくしてようやく頭が整理されてきた時、南渓は数々の疑問が浮かびました。

最も気になったのが尼になっていた姫の姿でした。
1544年の現在では現当主・直盛には姫以外の子供が出来る気配がなかったので
一族で協議の結果、南渓の弟・彦次郎直満の息子・亀之丞を直盛の養子とし
姫と娶わせて跡継ぎに定める計画を進めていました。

もしその目論見が近い将来かたちに成ったのなら、29年後にはもう亀之丞は
死んでいる事になります。
尼になるという事は夫の菩提を弔うという事に他なりません。

これは当たらずも遠からずでした。

その姫は“祐圓尼”という尼号のほかに、“次郎法師”とも名乗っていました。
“次郎”とは井伊家の総領だけが代々名乗るその証とも言うべき名です。
姫の父・直盛もその名を冠していました。

更にはこのぬこがいなければ自害していたような事も言っていました・・・

そして龍泰寺は何故焼け落ちてしまったのか・・・

謎はいくつもありました。


「ぬこ殿」


「・・・あい」


南渓は質問が喉まで出かかっていましたが、そこで未来の自分が戒めた言葉を反芻しました。


「いや・・・聞いてはならぬのだったな、何でもない」


お家元は南渓が尋ねたかった質問に完璧な答えを持っていましたが
知ってはいても教えられない答えばかりでした。

もし事前に話してしまったら井伊家の歴史が崩壊する可能性があります。
その答えの中には井伊家にとっての慶事もありますが、もちろんその逆も然りです。

もし事前に凶事を聴いてしまったら人間がどうゆう行動をとるかは火を見るよりも明らかでした。
だが結果から言えばそんな不幸な出来事すらも井伊家にとって必要な歴史なのです。

未来の南渓と祐圓尼はそれに気付いてくれていたからこそ
お家元に代わって注意を促してくれたのでしょう。


「・・・ 恩に着ましゅ、南渓しゃん!」




お家元は聞かずにいてくれた南渓にお礼を言いました。









姫と亀之丞をがもう我慢出来ないとばかりに部屋に飛び込んで来ました。


「何を話されているのですか、南渓様?」


「うむ、どうやらこのぬこ殿と大河殿は拙僧の知り合いの肝煎りだったと聴いたところじゃ。
 今後度々井の国に来てくれる事と相なった。

 そなた達も見知って於くがよい」


「本当ですか!」


姫と亀之丞は二人と接したくて仕方がなかったようです。


「うむ、井の国をゆるりと案内(あない)して差し上げるがよい。
 直盛殿(姫の父)や直満(亀之丞の父)には儂から話しておく故」


二人は大変な喜びようでした。
お家元の愛くるしさとタイガーしゃんの精悍さは子供達には
堪まらない魅力でしたし、領主一族の跡取りに生まれたこの少女と少年には
お互い以外に同じ目線で遊べる友達がほとんどいなかったからです。

姫はお家元の手を引き、亀之丞はタイガーしゃんの身体に触れ
すぐにも行こうと急き立てました。


「そりじゃあ南渓しゃん、ちょこっと失礼しましゅ」


「うむ」


こうしてお家元とタイガーしゃんは姫と亀之丞に連れられて出掛けて行きました。








姫と亀之丞は井伊家の天地・井伊谷を案内してくれました。
龍泰寺を北側へと抜けて神宮寺川沿いに歩くと、左手に見えた山城が“井伊谷城”で
奥にある峻嶮な山が三岳山と云う名で、井伊家のいざという時の詰城があるんだと教えてくれました。


「大河殿のように勇猛で綺麗な獣を儂は見たことがありませぬ!」


「ははは・・・ありがとうございます」


「大河殿はぬこ殿を乗せて走られたりするのですか?」


「はい」


「あのう・・・・儂を乗せて走っては貰えませぬか?・・・」


タイガーしゃんはお家元の方を見ました。
タイガーしゃんはお家元以外を乗せるのは抵抗があるのですが相手は子供です。
お家元の判断を仰ぎました。

お家元はにっこり笑って了解してくれました。


「タイガーしゃんはひこにゃんの親友でしゅから鞍なんか付けましぇんよ!
 馬とも勝手が違いましゅ、亀之丞しゃんに乗りこなせましゅかね~?」


いたずらっぽくお家元は亀之丞をけしかけました(笑)


「ぬこ殿、妾にも乗らせて下さりませ!」


「順番にでしゅよ」


「大河殿、亀之丞殿、妾もーーー」




「(16世紀の井伊家伝説の当主二人が21世紀生まれのタイガーしゃんを取り合ってましゅ・・・
  不思議な光景でしゅね)」




その通りでした(笑)
そしてお家元の“親友”という言葉にタイガーしゃんが秘かに感激していたのは
誰も知りません。



子供達はタイガーしゃんの背に代わる代わる乗り、夢中になって走っています。
それを見ていたお家元の脇の侍女達が頬笑ましい口調で


「ほんに仲の良いお二人です事」


と囃していました。


「姫様も亀之丞様がお相手であれば幸せに御座いましょう」


この時代の武家の子ならば御互いが誰とも知らずに結婚させられるのが常ですから
侍女達が子供達の将来を喜んだのは無理もありません。

ですが歴史はそんな幸せを二人に与えてはくれません・・・・・








お家元はこの日、龍泰寺の南渓の元に泊まり
翌日姫と亀之丞に1ヶ月後にまた来ると告げて井伊谷を去りました。

去ったといってもどこか別の場所に行った訳ではなく
二人が次に目指したのは今予告した1ヶ月後の井伊谷でした。


“タイム・スリッパ”できっちり1ヶ月後の10月にお家元達は龍泰寺にやって来て
子供たちを喜ばせました。



同じ要領で更に繰り返した3回目の11月、お家元達は新たな方々に出会いました。

お家元達が御手洗の井の付近で遊んでいると、勢いよく馬を攻めて近づいて来る一団があり
その正体を亀之丞が教えてくれました。


「父上、叔父上!」


お家元はピンときました。


「そなたが兄者(南渓)の元に来ているというぬこ殿か!?」


「あい、ひこにゃんでしゅ、こっちはタイガーしゃんでしゅ。
 先代井伊直宗公の御舎弟、井伊直満しゃま、井伊直義しゃまとお見受けしましゅ!
 どうじょ良しなに」


「如何にも!
 噂は亀之丞から聴いておる、立派な虎を連れておるのう!
 どうじゃ、駿馬十頭で儂に譲らぬか?」

駿馬10頭、現代なら高級車10台といった所でしょうか。
お家元はニッコリ笑って答えました。


「タイガーしゃんは例え遠江一国でも譲れましぇん、お許し下しゃい!」


「ふふん、遠江一国とは大きく出たな!
 戯れ言じゃ、気にするな。
 それに儂は駿馬を十頭も抱えておらぬしな!

 行くぞ、直義!」


「応っ!」


供揃えの家人達を置き去りにするかのように激しく馬を駆けさせて
二人は去って行きました、まるで嵐のようです。


「今の方が亀之丞しゃんのお父しゃんの井伊直満(いいなおみつ)しゃんと
 その弟の井伊直義(いいなおよし)しゃんなんでしゅね」


「はい!」


亀之丞は胸を張って応えました。


「戦場ではさぞ頼もしい働きをしゃれるんでしょうね」


「はい、父上(直盛)もお二人の事はとても頼りにしております」


尊大で豪放磊落、戦場では鑓の名手として名高い自慢の父であり大叔父でした。
身内にとってはさぞ頼りになる方々なのでしょう。
それ故にお家元は二人の危うい部分にも気付いていました。

それはこの二人の運命を知っていたからではありません。



去って行く直満と直義を一同が見守っていた中、タイガーしゃんだけは
別の方向を見ていました。




二町(220m)ほど離れた場所で静かにこちらを見ている一組の主従がいました。
激しく馬を攻めていた直満・直義とは対照的な者達です。

馬に乗った主人らしき者がこちらを見ながら厳しい顔つきをしています。
あさっての方向を見ていたタイガーしゃんに姫が気付きました。


「大河殿、どうしたのですか?

 ・・・あれは小野殿・・・」


その名に一番敏感だったのはお家元でした!


小野和泉守道高(おのいずみのかみみちたか)、井伊谷井伊家の筆頭家老です。


運命的な者達を同時に目にした事にお家元は少々驚きました。
これは偶然だったのか・・・
もしくは以前から燻っていたからこそ目にした光景だったのか・・・

そしてタイガーしゃんは小野和泉の眉間に深く刻まれていたシワまで見えていましたが
それは誰にも言いませんでした。






そしてさらに一ヶ月後の師走(12月)初旬、4回目に井伊谷を訪れたお家元達は
とうとう井伊谷城に招かれ井伊家の現在の当主・井伊信濃守直盛に目通りしました。

直盛は快く迎えてくれて、お家元とタイガーしゃんは畏まって何度も頭を下げて
城をあとにしました。
お家元達が4回目の井伊谷から離れようとした時も、姫、亀之丞、南渓の三人が
いつものように見送りに来てくれました。
お家元はその中から亀之丞を掴まえて抱き締めました。


「あはは、どうしたんですか?ぬこ殿」




「わ、妾も!」


お家元は二人を抱き締めました。


「・・・・・ひこにゃんはしばらく来れましぇんけど
 二人とも強く強く心を持って下しゃいね・・・」


「???」


「南渓しゃん、二人を頼みましゅ!
 何が起こっても二人を護って下しゃいね!」




子供達はしばらく会えないからお家元が感傷的になっているんだと思って
そのもふもふした感触を楽しんでいましたが、南渓は別の思いに囚われていました。


「(・・・何かが起こるのだ・・・
  この子らの身に何かが・・・・・・)

 ・・・分かった、ぬこ殿」


何が起こるかなど勿論解かりもしませんが、南渓は身構えました。
気持ちだけは伝わった事にお家元は小さく安堵し
タイガーしゃんと共に井伊谷の彼方へと消えて行きました。






その月の23日、
井伊家が臣従している今川家の当主・今川義元から出頭を命じられて駿府に向かった
井伊直満と井伊直義の兄弟はそのまま帰らぬ人となりました。

その件はそれだけに止まらず、今川家からは“嫡子・亀之丞も引き渡すべし”と
更なる要求が突きつけられたのです。








       つ づ く










次回予告 )


家中の柱石を亡くし跡継ぎと定めていた亀之丞も消えてしまった井伊家。

火が消えたような井伊谷で数年の時が流れ

自暴自棄になって明日の見えなくなっていた姫の運命や如何に!?




第三章 “誕生・次郎法師”



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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして (たま)
2011-02-12 02:08:25
昨年からお伺いさせて頂いていましたが、初めてご挨拶させて頂きます。
昨年ひこにゃんのファンとなった新参者です。
ひこにゃんの可愛さに、日々癒され、なごまされ、関連するブログを探している中、こちらに出会いました。

管理人様の描かれるイラストの、その絶妙な可愛らしさと、歴史をたどる真実味あふれる作品に、すっかり虜となり何度も繰り返し、繰り返し、拝読させていただいては、その都度、
泣いたり笑ったりの繰り返しです。

そして今回の次郎法師様、こちらで拝見するまでそのお名前すら、全く存じ上げませんでした。
しかし、俄然興味関心がわき、先日図書館で
次郎法師様の本を借りてきました。

いつかは彦根城に参上して、本拠地でのひこにゃんに会ってみたいな、とおもっています。

こちらのサイトに出会えたこと、本当に幸せと感謝しております。
お忙しい毎日だとは思いますが、おとぎ話の更新を心待ちにしております!
訂正お願いできますか (トミー)
2011-02-12 02:56:26
先程「たま」のHNで、初めましてのご挨拶をさせて頂いた者です。
すでに「多摩川のたま」さんがご訪問されていることを失念しておりました。
HNが微妙にかぶってしまいますので、可能であれば、HNを「たま」から「トミー」に変えさせて頂ければと思います・・・
事前の調査不足、申し訳ありませんでした。
いよいよ・・・ (どら)
2011-02-12 07:45:35
>ずっと支えましゅよ祐圓尼しゃん!

ええ言葉や…祐圓尼さんの心にス~と沁み込んだことでしょう。お家元と祐圓尼さんの邂逅
場面は感動的ですね。お家元にふんわり包み込まれたら、張りつめていたもの溶けて行くだろうな、と想像は容易です。

亀之丞さんと亀之丞さんを慕う幼い姫さまの想いの行方を考えると少々胸が詰まりました

両国遠征の動画を満喫☆ (管理人)
2011-02-12 10:35:27
>はじめましてトミーさん、ひこ×ひこ管理人です!

どんなお店か眺めていただけじゃなく、勇気を出して入って来てくれて
ありがとうございます!www

ウチが陳列してる閲覧品は100%“もちさん”の専門店です!出入りは自由ですからw
たくさんたくさん感激してくれて嬉しいです♪
でも手書きのイラストを無謀に曝してるなんてココぐらいだと思うので
そこまで言われるのは恥ずかしくもあります(苦笑)

私が知る限り、次郎法師しゃんが一冊を占領している本は一冊だけなんですけど
もしかしてトミーさんが借りられたのは梓澤要著の
“女にこそあれ次郎法師”でしょうか?


もちさんに逢うのはこれからなんですね!
それは大変楽しみなイベントが残されていますねw
動画でどんなに見倒しても絶対絶っーー対びっくりしますよwww




>流石どらさんはイイところに目をつけてくれますね!

みつにゃんやにゃんぶの時には有り得なかった、着いて早々の出来事でした。
祐圓尼しゃんの心情はどらさんが表現した通りの機微だったのは間違いありません!

その祐圓尼しゃんが何故ここまでの想いを抱くに至ったのかは
次回そのルーツを書く予定です。
今回祐圓尼しゃんが言っていた“今のぬこ殿”も実は人知れず大働きをした直後なんです!

そして祐圓尼しゃんとお家元の最期の最期の場面ももうしっかり出来ています。

それと亀之丞しゃんを抱きしめるカットをさらに追加しました。
見直してくれたら嬉しいです

更新されましたよ!と (はっすい)
2011-02-12 11:46:45
某つぶやきサイトでの書き込みを見つけ早速一気に読みました。
さまざま人物が出来事に交ざりこみ、お家元・タイガーさんの任務が今までよりレベル高しというのが
段々とわかってまいりました。
昔の自分なら間違いなくここまて熟読していない歴史上のお話。

井伊谷に花粉が飛ばないうちに行こうかと最近検討中です。
我が町からは彦根より遠い(切符有効が二日間になります)浜松。
タイムスリッパの痕跡を探しに。

和むな~ (どら)
2011-02-12 14:08:27
見ました!ひこにゃんの、いえお家元の
「亀ちゃんハグ」亀ちゃんとお家元の
キャッキャとじゃれあう声が聞こえて来ま
した!

11年後かぁ。 (ちゅるふ)
2011-02-12 14:09:12
 おぉ、今回のタイガーしゃんは凛々しゅうございますなぁ。

 来年の干支が寅だったら、年賀状に使いたいところですよ。
 それとも、辰だからということで、「竜虎相搏つ」とかで使えるかな?

 人間ドラマに関しましては、カーテンフォールを待ちたいと思います。

 ではでは。
 
Unknown (トミー)
2011-02-12 20:04:56
こんばんは。図書館で借りてきた本は、おっしゃる通り「女にこそあれ次郎法師」です。
作品中に、お家元の気配を探しつつ読んでしまいそうです(笑)

今はまだ旅の目途がたっていないため、もっぱら、彦根城観光案内のイラストの地図をながめつつ、
“ここと、ここにひこにゃんが登場するんだな~”と
想いを馳せています♪

お伽噺の続きも楽しみにしております☆
肉眼でしか得られない感動があります! (管理人)
2011-02-13 07:45:59
>お忙しい中いつも気に留めてくれてありがとうございます、はっすいさん!
次回お家元は勿論ですが、タイガーしゃんも目覚ましい能力を発揮します!

入りやすい取っ掛かりがあると学ぶ姿勢がガラリと変わりますよね人間てw
私もスギ花粉には毎年ひどくヤラレているクチなので辛さ分かります、あまり急がずに。
はっすいさんのタイミングで井の国に行かれた時が来たら
ブログで紹介して下さい、楽しみにしていますから♪




>見直すの早っ、どらさん!www

はい、その様子に見ていた姫様も堪らず仲間に入れて!となりましたw

どらさんはこの後の歴史をご存じのようですから、この時の子供達の様子が
一層微笑ましく見えているんだと感じましたよ。




>タイガーしゃんがシベリアに帰る頃からお顔を描くのに慣れてきた感じがしました。

って遅っ、私!

ちゅるふさんは前にコメントタイトルで使われていたように
鬼が喜ぶような話題が豊富ですよねwww

少しでも完成度を高くしてラストに向かえるように頑張りますから!



>“女にこそあれ次郎法師”は作者の梓澤要さんがとても丁寧に調べて書かれている
黎明期の井伊家の専門書のような時代小説だと思います。

うちの本棚にもあるんですトミーさん


まだもちさんにお会いしていないからこそ楽しめる前段階の贅沢な喜びですね♪
逆に羨ましいなぁって思います!

繰り返し言っちゃいますけど、実物は本当にビックリしますよ!
これ大げさじゃないんですから!
どんな写真や動画を見てから行っても肉眼で見た時の違いは
どんなデジタルな映像でも映し出せていなかったんだ!って思います!
可愛さ余って過大評価しているようにしか聞こえませんよね、きっと。
そうじゃなかったんだ!といつかその身で味わって下さいwww

もふもふした感触^-^ (ひかる)
2011-02-14 22:23:03
時を越えてなお、もちさんのもふもふした感触は人々を魅了しますね^-^
もちろん、ただもふもふというだけではく、その包容力あるれるぬこがらあってこそなんでしょうね^-^

私自身、歴史に疎いので、井伊家について皆さんのように明るいわけではないのですが、あえてこのまま、お家元やタイガーしゃんたちと共にタイムスリッパしていこうと思います^-^

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