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なぜX線や電波は観測できないのか? 赤外線だけが検出される初めての中性子星を観測

2018年10月02日 | 宇宙 space
ある中性子星の周囲の領域から、なぜか赤外線のみが検出されたんですねー

ハッブル宇宙望遠鏡の観測で分かったことは、この赤外線は300億キロにわたって広がっていること。

なぜ、赤外線だけが検出されたのでしょうか?

中性子星がチリの円盤に取り囲まれていることや、パルサー星雲が赤外線だけで見える特異なケースであることが、可能性として考えられているようです。


中性子星の周囲300億キロに広がる赤外線放射

大質量星が超新星爆発を起こして一生を終えた後に残される超高密度の天体が“中性子星”です。

中性子星は、高速で自転することで周期的に明るくなったり暗くなったりするので、パルサーとも呼ばれています。
  パルサーは一般的に電波や高エネルギーのX線などで観測、研究されている。

今回、ペンシルバニア州立大学の研究チームが観測したのは、とも座の方向約800光年彼方に位置する11秒周期のパルサー“RX J0806.4-4123”。

ハッブル宇宙望遠鏡を用いた赤外線波長での観測では、パルサーの周囲に300億キロにわたって広がる赤外線放射が検出されたんですねー

ただ、同じ領域からのX線や電波は観測されていないので、このパルサーは周囲から赤外線だけが検出された初めての観測例になります。


さらに詳しく調べるにはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に期待

広がった赤外線が検出された理由として2つの可能性が考えられています。

1つ目はパルサーの周囲をチリの円盤が取り囲んでいるというもの。
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中性子星“RX J0806.4-4123”と、その周囲を取り巻く赤外線を放射する円盤。
中性子星の元になった大質量星の物質が、超新星爆発後に中性子星の周囲に戻ってきて集まった“フォールバック・ディスク”という円盤が存在し、それが赤外線で見えているのかもしれません。

ただ、“フォールバック・ディスク”であることが確認されれば、中性子星の進化に対する理解が変わることになってしまいます。

2つ目の可能性は、赤外線はパルサー星雲から放射されているというもの。

強い磁場を持ち高速自転する中性子星が生み出す磁場内で、粒子が加速されると発生するのが“パルサー風”です。

そして、中性子星が音速をはるかに超える速度で星間物質内を通過する際に、星間物質と“パルサー風”との相互作用でパルサー星雲ができます。

通常パルサー星雲はX線の波長で観測されるので、赤外線のみを放射するパルサー星雲は、とても変わっている天体といえるんですねー
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パルサー星雲(イメージ図)
そこで期待されるのが、NASAが2021年に打ち上げを予定しているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。

この望遠鏡を使った観測で、赤外線を放射する領域をさらに詳しく調べることができれば広がった赤外線の謎が解明でき、さらに中性子星の進化の理解が進むのかもしれませんね。


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