男達はなぜ山を目指すのか。
高みに登っていく行為のどこに命を落としてもいいとまで思わせるものがあるのか。
私は登山らしい登山を知らない。一番高くてせいぜい1000メートルちょっとの山に登った経験しかない。
登山の用具、装備を知らない。
登山技術も知らない。
高山病になる高さを知らない。
凍傷で手足の指を失う寒さも知らない。
なのにこの「神々の山嶺」の中の山に魅せられた男達の物語に圧倒されました。
伝説のクライマー羽生丈二という山に憑かれた男がすさまじいオーラを発して私の横にいる思いさえする小説でした。
羽生丈二の息づかいがきこえていたような気がします。
読み終わってすぐにまた読みたいと思わせる本にはなかなか出会えるものではないと思うのですが、この小説はそんなふうに思わせてくれました。
ストーリーもただただ山に登ると言うのではなくミステリーのようなのです。1924年世界初のエベレスト登頂を目指して頂上の目前で行方不明になったイギリス人登山家ジョージ・マロリーが絡んでくるのですから。
作家は夢枕獏さん。作家自信が「これだけの山岳小説は、もう、おそらくでないであろう。」と書いています。
ほんとに傑作でした。