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『壁』(読書メモ)

安部公房『壁』新潮文庫

もう少し長生きしたらノーベル文学賞を取ったであろう、といわれる安部公房の初期の作品。

S・カルマ氏の犯罪(第一部)、バベルの塔の狸(第二部)、赤い繭(第三部)から構成されている。

第一部は、名前をなくした男(カルマ氏)が、不思議な国に入り込んでしまうという謎のストーリー。

第二部は、影を盗まれて透明人間になった詩人が、バベルの塔に連れていかれる話し。

第三部は、赤い繭、洪水、魔法のチョーク、事業からなる短編集

『砂の女』『箱男』の完成度が高かったのに対し、本書は粗削りで、かなり「いっちゃってる」作品。しかし、ここに安部公房の原点があるような気がした。

良かったのは「魔法のチョーク」。貧乏な画家アルゴン君はいつも腹ペコ。ある日、壁に絵を描くと実物が出てくる魔法のチョークを手に入れる。好きなものを手にれることができるようになったが、そこには落とし穴が…

本書を読み終わったときには「???」という感じだったが、思い返すと、普段は意識していない「肩書」「家」「仕事」「欲」の本質をブラックに描き出した鋭い小説である、と思った。











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