つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

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中国風信20 中国人は皆、自己主張が強い?(『粉体技術』8-4、2016.4より転載)

2017-09-19 00:09:31 | 日記
 昨年出た松原邦久著『チャイナハラスメント-中国にむしられる日本企業』(新潮新書)が、たいそう面白い。著者は自動車メーカー・スズキの中国との合弁会社の責任者として現地に長年駐在し、中国の発展に貢献した外国人として国家友誼奨も受賞した。同書は、中国でビジネスを展開する際に、如何に中国側が(日本人にとっての)非常識や無理難題を言うものであり、それに著者はどう対応してきたかを具体的に述べている。
 ここで紹介される「約束違反を自慢し、平気でウソをつく経営者」や「誠意ある対応をするとつけあがる」、「『すみません』と言ったら負け」などの例は、なかなかにリアルでえげつない。著者はその背景として、すべての人民に法律が平等に適用されるわけではなく、問題が起きれば交渉で解決するしかない社会であることを指摘する。法が自分を守ってくれない社会では、自分が属するグループに頼るしかなく、それを「内組織」という。「内組織」の中では、「人を騙してはいけない」とか「約束を守る」といった倫理が通用するが、それ以外の「外組織」に対してはこうした倫理は通用せず、ウソをつくのも交渉のうちだ。そして日本人ビジネスマンはいうまでもなく「外組織」の人間だから、騙して利益を得ても、騙される方が悪いということになるだけなのだ。
 それは、「法治」がなくて「人治」で動く中国社会とも表現できそうだし、筆者ら歴史学者が研究してきた伝統中国社会の特徴とも通じる。
 ビジネスの世界は利益を追求するのが目的であり、そのために駆け引きや自己主張をするのは当然だろう。なので、これから中国で仕事をしようというビジネスマンは、この本を熟読吟味して、彼らと渡り合う覚悟を充分固めて赴任されることをお勧めする。
 とはいえ、すべての中国人が、日本人は与しやすいから出来るだけむしり取ってやろう、と考えているわけではないと、筆者は思っている。
 ある研究は、日本社会から逃れられなくなった留学生の次のような言葉を紹介する。「日本では裕福ではなくても、真面目に、勉強し、仕事をすると、尊敬を受けて、安定した生活ができます。・・・中国ではあり得ません。皆、自分だけがよければいいと思っている。日本社会にいると、なんていうか、シルクでくるまれているような安心感があるんです。」(牧野篤「酒田短期大学、閉校す-日中留学生交流秘史」、『日中関係史1972-2012Ⅲ社会・文化』所収)彼らは日本社会の安心感を「まったり」と表現したりする。
 また、筆者の知人の中国人留学生は、日本へ来た理由をこう語った。「自分は他人と競争して人を蹴落としたり出来る性格ではない。それで、日本のことをよく知っていた父から、そんな性格では中国では生きていけないから日本へ行くとよい、と勧められた」と。彼女は名門大学院出身のとても優秀な人だが、現在は日本に定住している。
 これらのエピソードからわかるのは、中国社会は日本社会より競争が激しいことは確かだが、そのことに息苦しさを感じる中国人も少なからず存在する、ということだ。
 中国人にも(日本人と同じく)、自己主張の強い人もいれば、そうでない人もいる。どちらかというと争いごとは好まない人の方が多いと思うが、どの社会でも声の大きい人が目立つのは致し方ない。しかも中国では権利は主張しないと存在しなくなるので、必要な場面で自己主張することは、全ての人が学習せざるを得ない。
 しかしながら、生活者としての中国人が皆いつもそのような世界で生きているわけではなく、日本のような社会を好む人も多いのだ。近年、中国から日本への観光客が激増し、リピーターも増えているというが、「まったり」した日本社会への憧れが広まっているのではないかと、筆者は感じている。
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