MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2322 なぜタワマンを選ぶのか

2022年12月24日 | 社会・経済

 政府・与党(税制調査会)は、「タワマン節税」とも呼ばれる行き過ぎた節税を防ぐため、高層マンション(タワーマンション)の相続税評価額を見直す方針を固めたと11月30日の読売新聞が伝えています。

 人気の高いタワーマンション(の、特に高層階の)物件は、実際の取引価格よりも税金の算定基礎となる評価額が大幅に低く算定されるケースがあり、節税対策として使われているとのこと。このため、評価額を実勢価格に近づけられるよう路線価の算定方法の見直しを図るということです。

 都内でも2000年代の規制緩和によって急激に増えだした高層マンションですが、所得や資産の多寡により2極化が進む昨今では、(この相続税対策もあってでしょうか)特に富裕層のタワマン人気は相当のもの。気が付けば仕事などでよく使う(地下鉄南北線の)白金高輪駅付近なども(ここは武蔵小杉か?と思わせるような)タワーマンション群に囲まれ、セレブ感漂う若い親子連れやカップルなどが闊歩している様子がうかがわれます。

 一方、私自身は高い場所があまり好きでないこともあり、旅先でホテルの高層階などに宿泊すると何やらどうも落ち着きません。部屋を出てロビーに向かうエレベータがなかなか来なかったりするのも気になったりして、「タワマン?ちょっとな…」と二の足を踏んでしまう一人です。

 そうした折、11月30日の「夕刊フジ」(online)に住宅ジャーナリスト榊淳司(さかき・あつし)氏が『タワマン低層階に住む意味がない理由』と題する(専門家ならではの)興味深い一文を寄せていたので、参考までにその一部を残しておきたいと思います。

 タワーマンションの人気はいまだ衰えを知らず、新築の場合、市場はほぼほぼ「売り出せば完売できる」状況だと榊氏はこの論考に綴っています。上層階=物件価格が高い=お金持ち…というイメージもあって、それだけ世の中には「タワマンに住みたい」という願望を抱いている方が多いのだろうということです。

 しかし、冷静に考えてどうだろう。「私が見る限り、(タワマンの)唯一のメリットは高層階からの眺望であり、それ以外にはあまりメリットを見いだせない。」というのが専門家としての氏の見解です。

 デメリットならいくらでも指摘できるのに、不思議なのは、その高層階からの眺望が得られないタワマンの低層階にもきちんと買い手がついていること。一体、彼らはどういうつもりで低層階を買うのだろうと氏は話しています。

 タワマンには「高いところに住む方がエライ」と、無邪気に思いこんでいる人が大勢住んでいると氏は言います。彼らはいわゆる「階層ヒエラルキー」の信者たちで、住宅にお金を掛けられる=ハイクラスだと思っている。

 小さな子供がいる家庭は、地域のコミュニティーと関わらざるを得ない。低層階に住んでいると、どうしてもそういった「階層ヒエラルキー」信者と接触することになる。そしてそうした場合、少なくない確率で不愉快な目に遭ってしまうということです。

 それはさておいても、そもそもタワマンは通常の盤上型マンションと比べ、管理費や修繕積立金が割高だという特徴がある。そういったコストの設定基準は基本的に住戸面積なので、低層階住戸の所有者はあまり使いもしないエレベーターや最上階付近のビューラウンジの維持費を、管理費等の名目で負担させられると氏はしています。

 もちろん、大規模修繕工事の費用も高い。通常タイプの2倍はかかるのが普通で、そうした費用は月々の修繕積立金にオンされていることを忘れてはならないということです。

 さらに言えば、(最近では割合知られるようになったが)タワマンの戸境壁には鉄筋もコンクリートも入っていない、ちょっと厚めのパーテーションだと思えば間違いない。だから、掃除機の振動音はもちろん、施工精度が悪いと隣人のくしゃみまで聞こえてくると氏は言います。

 これが通常型のマンションだと、戸境壁はおおむね鉄筋コンクリートでできているので、そういった生活音の漏れは大幅に軽減される。つまり、タワマンの低層階に住むのなら、近くの通常型マンションの同じ階に住む方が、日常のコスト面でも快適性でも、大幅に優れているというのが氏の指摘するところです。

 しかし、それでもタワマンの低層階を購入して住む人がいる。「タワマンに住んでいる」ということに何の意味を見いだしているのだろうかと氏はこの論考の最後に綴っています。

 さて、韓国や中国では既に不動産バブルが崩壊しているとされていますが、そんなニュースを伝える記事には、必ずと言ってよいほどタワマンが林立している写真が添えられています。まあ、それだけタワマンは(いわゆる)「バブル」の象徴として認識されており、「理想の暮らし」のイメージに乗った虚像にすぎないということなのでしょう。

 それでもやはりタワマンはタワマン。頑張った私の「成功の証」。きっと、ハイクラス入りしたことを証明するトロフィーのようなものとしてとらえられているのだろうなと想像しているところです。

 



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