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♯1096 G7カナダ・シャルルボアサミット閉幕

2018年06月19日 | 国際・政治


 6月12日の各紙朝刊を飾ったG7(カナダ・シャルルボア)サミットの写真に思わず見入った人も多かったのではないでしょうか。

 腕組みして座るアメリカのトランプ大統領に詰め寄るドイツのメルケル首相。その傍らにはフランスのマクロン大統領やイギリスのメイ首相、イタリアのコンテ首相、そして開催国カナダのトルドー首相(議長)らが並び、トランプ氏を皆で説き伏せようとしている構図です。

 一方、日本の安倍首相の立ち位置はと言えば、(やや微妙なのですが)「ネオコン」と呼ばれるボルトン米大統領補佐官をはさんで、どちらかと言えばトランプ大統領の陣営に構えている印象です。(「この場をいかにしたものか」と)呆れ顔で腕組みしながら(エキサイトする)メルケル大統領に目をやり、その脇から(加計問題で話題の)柳瀬経産省審議官が心配そうにのぞいています。

 まるで米国を取り巻く西側先進国の情勢を描いた風刺画のようなこの写真は、ドイツ政府が会議開催のすぐ後にネット配信したもので、その臨場感から瞬く間に世界に拡散したとされています。

 報道によれば、この写真は、トランプ氏が首脳宣言に「イランがテロ支援国家である」との記載を盛り込むよう求めたのに対しメルケル氏が認められないと説き、産油国としてのイランとの関係を保ちたい日本の安倍首相がそれを困った顔で様子見しているという(タイミングの)ものだったようです。

 首脳会議では、懸案の貿易問題についても、鉄鋼やアルミニウムさらには自動車にまで追加関税を課そうとするトランプ氏に対し、欧州サイドはWTOルールの重視にこだわり溝は深まるばかりだったということです。

 最後には、音を上げたトランプ氏が「シンゾウの意見に従うから、後はまとめてくれ」と折れ、「ルールに基づく国際的貿易体制」を盛り込むことで決着したという経緯も(誠しやかにではありますが)伝えられています。

 実際、(一般には公開されていない)サミットの会議の席上における「トランプ節」には、遠慮のない失礼なものも相当含まれていたとされています。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルなどの報道によれば、ユンケル欧州委員長を「おまえは残忍な殺し屋だ」と数回にわたって罵ったり、フランスのマクロン大統領に「テロリストは皆、パリに暮らしているじゃないか」と名指ししたり、安倍首相にも「俺が2500万人のメキシコ人を日本に送れば、お前はすぐに退陣だ」と言い放ったりしたということです。

 これまで、(一昨年日本で行われた伊勢志摩サミットも含め)G7サミットの写真と言えば風光明媚なリゾート地などを背景に各首脳たちがにこやかに笑いながら肩を並べている(あの)光景ばかりが強調されてきました。

 首脳会議の内容はそこそこに、日本の首相が一番端っこだとか、日本の首相はくるくる替わるので「お前誰だ」と言われているようだとか、そんなことばかりが注目される(ある意味「形骸化」した)ものだったような気がします。

 しかし今回は、そうばかりも言っていられなかったということでしょう。首脳会議での主要な議題はトランプ政権のアメリカファーストな貿易政策への対応にあり、自由貿易を不変のテーマとするサミットの他の首脳たちが譲れるものではありません。

 また、米国と他国の間にはイランや北朝鮮の核問題への姿勢の違いや、さらにはトランプ大統領からの(突然の)ロシアのサミット復帰の提案などもあって、首脳たちの努力にもかかわらず最終的には首脳宣言をまとめることすら叶いませんでした。

 トランプ大統領は「米国はこれまで、皆に金を盗まれるpiggy bank(豚の形をした貯金箱)だった。もう、それは終わりにする。」と話しているということです。

 多国間協議には応じずにあくまで二国間のディールにこだわり、貿易を有利にするためには安全保障すら天秤にかけて譲らない(そうした)トランプ流のやり方に、今回のサミットではEUをはじめとした各国が「NO!」を突きつけ、G7諸国が対立する姿を世界に晒したことになりす。

 一方、混乱するG7サミットを尻目に、同時期、中国の習近平国家主席は、ロシアのプーチン大統領やイランのロウハニ大統領ほか、中央・南アジア6カ国の首脳を集めた「上海協力機構(SCO)首脳会議を開催しています。会議は、米国のイラン核合意離脱への批判や(皮肉にも)「保護主義の撤廃」を盛り込んだ「青島宣言」を採択し、そこではユーラシアの連携が強調されました。

 米欧は、7月11~12日の日程で北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議を迎えます。ここで、トランプ大統領が欧州諸国に対し国防予算をGDPの2パーセントの水準まで引き上げるように強引に迫るようなことがあれば、米欧同盟のきしみはさらに増すことが予想されているところです。

 写真に漂うリアルな空気感は、緊張する会議の雰囲気を否応なく伝えてくれます。西側諸国は、これまでの経緯をチャラにして子供のように振舞うトランプ大統領に、どこまでpatience(忍耐力)やfortitude(我慢強さ)を保つことができるのか。

 マンガ「ドラえもん」では、力が強くて横暴なジャイアンを、皆が力を合わせて言葉巧みに動かし問題を解決する姿がしばしば描かれます。果たして、サミットの空き地に集うスネ夫やのび太やしずかちゃんたちは、目立つことが大好きなジャイアン・トランプを(今回も)上手に手玉に取ることができるのか。

 隣町の子供たちを仕切る習金平やプーチンなどといった(腕っ節の強い)ガキ大将も、きっと土管の陰からその様子をじっと窺っていることでしょう。


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