MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2270 あなたが知らないサーモンの世界

2022年10月03日 | うんちく・小ネタ

 全国で640店舗以上の回転ずしチェーンを展開している「スシロー」が行った、「一番好きな「にぎり寿司」はどれなのか」についてのアンケート調査。3位は大衆的な「はまち」で、2位は最近人気急上昇中の「えびアボカド」。そして、栄えある1位は(大方の予想どおり)子供たちも大好きな「サーモン」という結果に終わりました。

 脂がのっていて、しかも安価で食べやすいと人気の「サーモン」。スシローでは、ノルウェーやチリから仕入れたサーモンのにぎりを数多く提供しているほか、最近では青森産など国産サーモンの使用にも力を入れているということです。

 因みに、水産大手のマルハニチロが今年の3月に発表した「回転寿司に関する消費者実態調査」でも、サーモンが栄光の第1位。実はサーモンは、11年連続で握りずしの好感度トップに輝いているということです。

 しかし、こうして人気のサーモンも、今年に入り仕入れ価格が急上昇していると報じられています。

 日本での寿司ネタ用サーモンの一番人気はノルウェー産。これまで、ノルウェー産のサーモンは、陸路などで隣国フィンランドへ輸送した後、直行便で日本へ空輸されていたとのこと。しかし、現在は、ロシアのウクライナ侵攻の影響でロシア領空を飛ぶ飛行機は軒並み運休。そのため、UAEなどを経由して(南周りで)空輸されているということです。

 これでは燃料費などのコストがかさむうえ、円安の影響もあって仕入れ価格が上昇。豊洲などでも品薄が続き、販売休止を余儀なくされている回転すし店も多いとされています。

 さらに、北欧の国ノルウェーは環境大国。サーモンは水産物のなかでも、環境に配慮した商品づくりが進む商品で、持続可能な開発目標(SDGs)への関心が高まる中、欧米を中心に需要を集めており、高値でも引き合いが弱まらないということです。

 こうした状況を受け、青森、岩手、宮城など、国内でもサーモンの養殖が活発化しており、市場の評価も高いと聞きます。味覚や鮮度、そしてSDGsも重視する消費者の需要をいかに取り込めるか、水産事業者の一層の努力が期待されるところです。

 さて、とはいっても、私が子供の頃は、握りずしのネタに「サーモン」という名を見かけることはありませんでした。当時、サケやマスは基本的に生で食べるものではなく、寄生虫を避けるため過熱して食べるものというのが「常識」でした。

 それでは、そんな魚を子供などに生で食べさせて大丈夫なのか。実は、店頭に並ぶ「サーモン」と「鮭」は別の魚。回転寿司で回っているサーモンは通称「トラウトサーモン」と呼ばれるもので、その正体は(スーパーにも塩焼き用などとして出回っている)「ニジマス」だということです。

 正確に言えば、トラウトサーモンはニジマスを海水で養殖し成長させたもの。アニサキスなどの寄生虫を持つオキアミを食べる天然の鮭とは異なり、人工餌などで完全養殖するため生で食べても問題がないとされています。

 因みに、養殖されている個体のほとんどは、性成熟しない代わりに巨大になるように染色体操作された3倍体のニジマスとのこと。味が落ちる産卵期を迎えないので出荷調整が効き、年間を通じ入手することが出来るのが特徴とされています。

 ノルウェーでは、1959年にこうした日本向けトラウト(ニジマス)の海面養殖を開始し、1970年頃から「ジャパンプロジェクト」と称してアトランティックサーモンの養殖事業も本格化。養殖環境等に関する厳しい基準を作り、基準をクリアしたものだけに与えるノルディックサーモンというブランドを確立させ、現在では世界中に輸出しているということです。

 その後、トラウトサーモンの養殖技術は、日本の水産事業者の手によって南米のチリにもたらされ、現在では供給体制の一角をなすまでに成長しています。

ノルウェー産に比べて安価であることなどから急成長を遂げ、現在では世界の水揚げ高をノルウェーと折半するほどにまでになったチリ産の養殖事業。しかし、養殖時に使用されている薬品の管理や環境汚染等の面で、(ノルウェー産との比較で)問題を指摘されているのも事実のようです。

 現在、日本で輸入されるアトランティックサーモンの約70%がノルウェー産のものと言われています。今後、そこにどれだけ国産サーモンが食い込めるか。価格やコストばかりでなく、品質や安全性、環境への影響の低減など、越えなければならないハードルはまだまだ高いと言えそうです。

 



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