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♯1491 ラグビーワールドカップと英国連邦

2019年11月13日 | 日記・エッセイ・コラム


 日本中を「にわかファン」で一杯にしたラグビーワールドカップ日本大会は、日本代表チームが予選を4戦全勝としグループ1位で8強入りを決めるというご褒美もあり、まさに盛り上がりのうちに開催期間を終えました。

 日本代表が前回のイングランド大会以降大躍進してきた理由はいくつかあると思いますが、外国出身選手の活躍がその1つにあることに異論を挟む人は少ないでしょう。

 ラグビーワールドカップは出場選手に国籍要件を求めていません。このため、今回の日本代表も日本国籍を持つ海外出身者や外国籍の選手の混成チームです。

 そして、体格や容貌ばかりでなく、技術から根性まで鍛え抜かれた個性的な面々による群を抜く多様性がタフさをはぐくみ、今回の成績につながったのではないかと考える人も多いと思います。

 また、そうした中で、観衆の間にも桜のジャージを背負った(「日本人の」というより)「私たちの」チームを応援しようという、今までになかったような健全でさわやかな一体感やナショナリズムが生まれたような気がしているところです。

 11月11日の「東洋経済 ONLINE」ではそうした今回のラグビーワールドカップ大会に関連して、レノボ・ジャパン代表のカナダ人デビット・ベネット氏が「日本人が知らない英語圏内 意外な違いと誤解」と題する示唆に富んだ論考を寄せています。

 ラグビーの場合、ナショナルチームに入る資格がほかの競技に比べハードルが低いことはテレビの解説なども知られるようになったが、実はこのルール、ラグビー発祥の地がイギリスであることが関係しているとベネット氏はこの論考に記しています。

 指摘する人はあまり多くないが、実は、今回ラグビーW杯の決勝トーナメントに進出した8強のうち、イングランド、ウェールズ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、イギリス領北アイルランドの6カ国が英国連邦(Commonwealth of Nations)に加盟している。

 そして、予選敗退チームまで含めれば、スコットランド、カナダ、フィジー、サモア、トンガ、ナミビアも加くわり、実に出場16カ国中12カ国が英国連邦諸国だということです。

 現在50ほどの国または地域が参加している英国連邦は、特にイギリス王室を君主とする必要はなく、旧イギリス領を母体とした緩やかな国家連合だと氏は説明しています。なじみのあるところとしてはインドやシンガポール、反対にあまり知られていないところではジャマイカなども連邦加盟国だということです。

 第2次世界大戦後、イギリスの植民地の多くが独立しかつての「大英帝国」は消滅したが、(この英国連邦の国々を見ると)まだまだイギリスは世界に影響力を持ち続けていることがわかる。

 こうした連邦による緊密な国家間の関係は、イギリス以外の連邦で生まれ育ったイギリス国籍者、イギリスで長く生活している連邦国籍者など、実に多様な国籍と生活圏の組み合わせを生み出しているというのが氏の認識です。

 ラグビーの代表資格に話を戻せば、(そうした英国連邦の国々の中で)国籍にこだわらずいつも身近なチームでプレーして活躍している選手もその国の「仲間」として代表になってもらえるよう、現在のような緩やかな代表資格になったと氏は指摘しています。

 日本でも海外の人と生活をともにする機会が増えているが、ラグビーの世界ではさらに国籍を超えたメンバーの交流が広がっている。現時点でその多くは英国連邦の枠組みの中ではあるものの、こうした「仲間」の精神はほかの分野でも参考になるのではないかということです。

 また、ベネット氏はこの論考で、サッカーやラグビーのワールドカップで「イギリス(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland:UK)」という国としての参加はなく、ウエールズ、スコットランド、イングランド、英領北アイルランドといった「カントリー」単位で参加している理由についても解説しています。

 そもそも、当初、サッカーやラグビーの大会はUKのカントリー同士が戦う場として開催していたもの。それが国際大会に発展したという経緯があるので、今でもUKの4カ国だけは特例となっているということです。

 実はイギリスのこの4つのカントリーについては、それぞれに独自の文化を持ち、それぞれに英語以外の公用語もあったりと、かなり多様性を持ったまま1つの連合王国(UK)を構成していると氏は指摘しています。

 記憶に新しいところではスコットランドの独立問題やアイルランドの地域紛争など、カントリーの間には深刻な対立も起こっており、緊張感で言えば日本の県や、アメリカの州のような行政区分とはまったく違うものだということです。

 いずれにしても、英国王室やアングロサクソンの血統を基調としながらも人種や文化を超えて多様性を前提に協力連携しあうのが「英国流」の流儀というものなのでしょうか。

 英国連邦の結束と安定感の源を、ワールドカップの激戦を終えたラグビーの視点から読み解くベネット氏の論考を、私も大変興味深く読んだところです。
 


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