MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1192 SDGsとは何か?

2018年10月15日 | 社会・経済


 「SDGs」(エス・ディー・ジーズ:Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)という言葉を最近よく耳にするようになりました。

 SDGsは、2015年9月の国連サミットにおいて世界各国が目指すべき「目標」として提案され、2016年~2030年の15年間で達成するものとして国連加盟193か国により採択されています。

 SDGsは、先進国、発展途上国を問わず、経済・社会・環境にかかわる広範囲な課題に、行政・企業・市民などのすべてのステークホルダーが統合的に取り組むべき17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。

 勿論、日本も先進国の一員としてその趣旨に賛同し、政府は2016年5月に安倍首相を本部長にすべての国務大臣がメンバーとなる「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」を立ち上げ、「持続可能な開発目標実施指針」を決定しています。

 また、国連のSDGs関連事業に9億ドルの支援を行うとともに、30億ドルの取り組み、日本円にして合計約4000億円を投資するとしたところです。

 2017年7月には、ニューヨークの国連本部で数値目標の進捗をモニタリングしていく「ハイレベル政策フォーラム」が行われ、日本も参加しました。

 世界で人気を博した「ピコ太郎」がその会場でPPAP のSDGsバージョンを披露し、CNNなどを通じ広く世界に報じられたのも記憶に新しいところです。

 さて、そう言われても「アジェンダ」だとか「議定書」だとか「枠組」だとかと同様、(いかにも国連や欧米の「インテリ」が好みそうなこととして)難解さをはらむ手法になかなか具体的なイメージをもてない日本人も多いかもしれません。

 SGDsに掲げられた目標は、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「3.すべての人に健康と福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「6.安全な水とトイレを世界中に」から「16.平和と公正をすべての人に」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」まで、大きいものから小さいものまで(まるで小学校の掲示板に吊るされた目標のように)多種多様に掲げられています。

 確かにひとつひとつの目標を見る限り、それぞれが(それはそれで)大切な行動規範であることはよくわかります。しかし、エネルギーの話から働きがいや経済成長の話、まちづくりの話に人権や気候変動まで加わって、何ともとらえどころがないという感想を抱く人も多いかもしれません、

 さらに、アピールのされ方で言えば、17の目標をそれぞれイメージしたカラフルなアイコンばかりが目立つため、(問題を掘り下げればそれなりに深刻なものが多いだけに)どうにも「きれいごと」のように映り多少の違和感を禁じ得ないのは私だけではないでしょう。

 一方、このSGDsにおいて、17の目標をつなぐ基本理念は大きく二つあるとされています。ひとつは「誰ひとり取り残さない」こと。そしてもうひとつは「我々の世界を変革する」ことだということです。

 これを読み込めば、現場サイドの視点からボトムアップで目標達成に向けた取り組みを丁寧に積み重ね、これを世界規模の動きにスケールアップしていくことで世界の状況を変えていくということでしょうか。

 確かに、これまで国連を中心とした「国対国」の関係の中で、国際協力や国際協調を推進するメカニズムの中心的な役割を担ってきたのは、国際法の枠組みのもとで多様なルールがセットで提供される「国際レジューム」(International regimes=特定問題における国家間の調整の枠組み)の構築にあったことは間違いありません。

 こうした仕組みとしては、これまでも国際連合(UN)をはじめとして、核拡散防止条約(NPT)、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、世界保健機関(WHO)など、国際的なルールを分野ごとに調整する数多くのメカニズムが構築されてきました。

 しかし、例えば最近の地球環境問題や核問題に関する国際レジュームを見ても、(その多くが)ルール設定のための合意に多くの時間を必要とすることや(立場の違いによる)利害の調整機能の限界を超えられないなどの課題に直面しているのもまた事実です。

 そのような中でSDGsは、定期的な経過のモニタリングは行うもののそれ自体には法的な拘束力を持たせないという、これまでの「ルールによるガバナンス」とは違ったアプローチを採っていることが大きな特徴と言えるかもしれません。

 確かに「ルール」や「規制」よりもGOALSを重んじる「目標ベースのガバナンス」は、競争を前提とする成果主義に立脚する経済界などとの親和性が高いことも頷けます。実際、日本の経団連もSDGsに対応させるため「企業行動憲章」を改訂し、GOALSに示された社会問題の解決を目指す方針を打ち出しています。

 「一見クールに見えるけれど、どうもリアリティがね…」そう感じる人たちも多いかもしれない「SGDs的」な打ち出し方。

 そこに示されている(眩暈がしそうなくらい)あまりに簡単な言葉でくくられていている2030年の「ゴール」たちに、社会のどろどろした利害関係とか、社会に争いもたらすエネルギーとかはほとんど感じられません。

 しかしそこには、であればこその「成果」を追い求める、小学生でもわかりやすいストレートな姿勢があることを、私たちは改めて受け止める必要があるのかもしれません。




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