MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#1968 政治への信頼はなぜ低い?

2021年09月17日 | 国際・政治


 電通総研と同志社大学の池田謙一研究室が延べ100以上の国と地域を対象に実施した「世界価値観調査2021」によると、「あなたの生活に政治は重要か」という質問に対し、「非常に重要」「やや重要」と答えた人の割合は日本では65%で、77カ国・地域中6位だったということです。

 調査結果を報じた8月19日の日本経済新聞(連載「チャートで読む政治」世論⑦)によれば、トップはフィリピンの77%、2位はスウェーデンの75%、そして3位のミャンマーの71%、4位のノルウェーの69%と続くということです。

 1980年代以降、民主化運動や政治体制の激変を経験したフィリピンや政情が揺れるミャンマーは言わずもがなで、高福祉高負担で知られ高い税金を集めて再分配する北欧の国々の政治の役割は大きいことから、こうした結果も郁子なるかなと感じるところです。

 一方、主要7カ国(G7)で日本より上位となったのは5位のドイツ(68%)だけで、日本の第6位を「意外に高いな」と感じたのは私だけではないでしょう。

 日本は(先進国の中では)「小さな政府」であるにもかかわらず、国民は案外政治を身近なものと感じている。政府の方針を「他人事」とは思っておらず、税金の使い道にも関心があるということでしょうか。

 しかしその一方で、8月18日の日本経済新聞(同特集「世論⑥」)は、米国のPR会社「エデルマン」が世界11カ国のおよそ1万3000人対象に実施した調査結果を踏まえ、日本は他国に比べて政府への信頼度が(群を抜いて)低い傾向があると報じています。

 調査によれば、政府を「全く信頼していない」を1、「大いに信頼している」を9として9段階で立場を選んでもらった結果、「政府を信頼している」と答えた人の割合は日本は37%。と11カ国のなかで最も低く、その上(10位)の米国よりもさらに5ポイント低かったということです。

 日本国内に暮らす我々としては、「まあ、そんなもんかな」とも感じるところですが、これが世の中(世界)的には断然低いというのは(こちらも)少し意外な結果です。因みに、信頼度が高いトップ3はサウジアラビアと中国の82%、インドの79%。以下、④ドイツ、⑤カナダ、⑥韓国、⑦フランス、⑧イギリス、⑨メキシコと続くそうです。

 記事によれば、中国やサウジ、インドなどが上位に並ぶこの結果を、(各国の政治体制を研究する)スウェーデンの調査機関V-Demは、「選挙を通じた独裁」によるものと分析しているということです。形ばかりの選挙は行うが、そこには情報の公開や言論の自由はない。そうした非民主主義的な国の方が、国民の政府への信頼も(少なくとも表向きは)厚いということでしょう。

 記事によれば、調査を実施したエデルマンは定期的に政府の信頼度を調査しているということです。新型コロナの感染が拡大する前に実施した2019年の調査と数値を比較すると、日本では政府への信頼度が6ポイントと大きく下がっており、これは「新型コロナ禍で低下した」と分析されているようです。

 一方、日本以外の10カ国のうち信頼度が上昇した国も6カ国あり、ドイツでは45%から59%に、フランスは35%から50%にそれぞれ10ポイント以上上がったとされています。これは(言わずもがなで)新型コロナへの政府の対応を、国民が支持していたかどうかに大きく関係しており、大きな被害は出たものの、ロックダウン、外出禁止などの厳しい措置をとった両国が信頼度を上げているということなのでしょう。

 片や、感染者数や死亡者数は少なく、政府も国民生活に直接大きな影響をもたらすような強い措置をとらなかった日本が大きく信頼を失っているのは、皮肉と言えば皮肉な結果です。被害の規模はともあれ、日本の政府は多くの国民が求めていたような決断をし、対応をとることができなかった。詰まるところ、政治は、大宗を占める民意に寄り添うことができなかった…数字だけ見ればそういうことになるのかもしれません。

 さらに、エデルマンは2020年4月の調査で、政府の信頼度を「地方政府」「中央政府」に分けて聞いています。そしてその結果、日本での信頼度は地方政府が50%、中央政府が35%と、生活に身近な地方自治体への信頼度の方が大きく高かったということです。

 日本と同様、(トランプ政権下で)連邦政府への信頼度が低かった米国でも、地方の方が中央より20ポイント高かったということについて、調査に当たったエデルマンは「政府への信頼度が低い国は、地方政府がギャップを埋めている」と分析しているとされています。

 これも「因みに…」なのですが、記事によれば、日本経済新聞社が2020年10~11月に実施した世論調査では、自衛隊を「信頼できる」と答えた人は59%に達しており、「信頼できない」と答えた人は(わずかに)5%しかいなかったということです。

 災害現場などで、危険を顧みず自ら汗を流す彼らの姿を見れば、誰もが「有難いな」と思うことでしょう。そのほかの行政機関の信頼感で言えば、裁判所は52%、警察は50%と比較的高い信頼度を得ていることがわかります。法と正義のために、体を張って頑張っているということなのでしょうか。

 一方、キャリア官僚がイメージされる国家公務員を信頼する人は28%と振るいません。テレビドラマなどで見せる悪役ぶりもさることながら、汚職やセクハラ、政治家への忖度などのスキャンダルが足を引っ張っているのでしょう。政治家の手足となって霞が関で泥のように働かされているエリートにもかかわらず、大多数の国民に評価されないのではあまりに浮かばれない。希望者が大きく減っているのもわからないではありません。

 そして、調査した中で最も低かったのは、国会議員の13%だったということです。国民自らが、選挙という(現在考える中でも最も)公正な手段で選んだにもかかわらず、この低い信頼感は何故なのでしょうか。

 思えば、日本人の政府(政治)への信頼度の低さは、ひとえに、この国会議員への信頼感の低さによるものと考えてよさそうです。現実を知らない、特別な、子供じみた人たち。イマドキの若者で政治家を目指すのは、家業が政治家の家系か、権力志向の目立ちたがり屋か、インテリを気取ったテレビタレントくらいのものだと考えている有権者も多いことでしょう。

 しかし、そうした彼らを選んでいるのもまた日本の有権者たちです。総選挙における投票率が50%台と低迷している昨今、政府への不平不満を漏らしながら投票所に足を運ばないのでは政治も変わりようがありません。政治への関心は決して低くない日本で、意識を行動に結びつけるにはどうしたらよいか。

 まずは、立候補したい人よりさせたい人。(米国の大統領候補者予備選ではありませんが)候補者選びの時点から政治に参加できるようなシステムづくり、風土づくりを、もっと真剣に考えていく必要があるということでしょうか。

 今回の自民党総裁選挙が巷で大きく話題を呼んでいるのは、日本もいよいよそうした時期に来ていることの表れなのかもしれません。


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