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♯1092 IoTとプライバシー

2018年06月14日 | 日記・エッセイ・コラム


 お掃除ロボットとして日本で最も利用者が多い(そして我が家でもしばしば活躍している)「ルンバ」ですが、その製造元であるiRobotは販売したルンバが収集した個々の家庭のマップ情報を、スマートデバイスを手掛けるメーカーに販売する計画があるとロイターが伝えています。

 ルンバは、搭載したカメラとフロアトラッキングセンサを使って室内の環境を正確に把握し、家具の下や椅子の脚周りなども掃除残しがないのを特徴としています。当然、その機能上、動き回ることによって得られた室内の間取りや家具の配置などを必然的に収集しマッピングをしています。

 ロイターによれば、iRobotのCEO Colin Angle氏は、ルンバの持つマッピング技術により収集されたマップデータを、今後数年以内にAmazon、Google、Appleのいずれか一社に販売する可能性があると話したということです。

 iRobotによれば、ルンバが収集したマップデータを販売することで、スマートデバイスが効率的な空調や音響などを調整し生活空間をより便利に快適にできる可能性が生まれるということです。しかし、利用者側からすれば、それは自宅の見取り図が第三者に売り渡されることを意味しています。

 Angle氏は顧客の承諾なくデータを販売することはないとしているようですが、(当たり前のことですが)そこにプライバシーの問題が生まれてくるのは言うまでもありません。持ち主がそれと知らないままに、生活情報の一部を外部に垂れ流しているとすれば、セキュリティの上からも看過できない事態と考えられます。

 同じような懸念は、(実は)最近流行のスマートスピーカー利用者の間にも生まれつつあるようです。

 スマートスピーカーは、スピーカーとして音楽やラジオなどさまざまな音声情報を再生できるだけでなく、マイクと人工知能(AI)を活用した音声認識機能を備える音声アシスタントデバイスです。

 気軽に会話を楽しむ感覚で話しかけるだけで、好みの音楽の再生してくれたり、ニュースや天気予報の読み上げてくれたり、今日のスケジュールを教えたりしてくれます。

 そのため、スマートスピーカーは持ち主の生活の中の会話に常時耳をそばだてながら、必要に応じ持ち主の要求にコミットしていくことを機能としているわけですが、一方で、例えばスマートスピーカーが収集し、webを通じてクラウドに蓄積されていく様々な情報の中には、他の人に知られたくないプライベートな情報が当然たくさん含まれることでしょう。

 例えば、その家に何人が暮らしていて家族構成はどうなのか、それぞれの人間関係はどうなっていて生活レベルはどうなのか…こうした様々なプライベートな情報が、スマートスピーカーから(ネットを通じて集約され)ダダ洩れになる可能性があるということです。

 (株)ジャストシステムが今年の2月に15歳~69歳の男女1,100名を対象に行った調査において、「スマートスピーカー経由による、会話以外の個人情報の漏洩」について聞いたところ、58.4%の人が個人情報の漏洩に危機意識を持っていたということです。

 また、IoTの普及などによる、外部からのハッキングによる家電などの不正操作(乗っ取り)」などに対しても、64.0%の人が危機意識を持っていると回答したとされています。

 もっとも、(どうやらスマートスピーカーに限らず)Webにつながるすべてのスマート家電、IoT機器の利用者は(本人がそれとは気付かないうちに)こうした危険にさらされる可能性があることを十分以上に意識する必要がありそうです。

 例えば、ソニーが開発した新型aiboには高性能のカメラやセンサーがいくつも組み込まれており、飼い主の言葉だけではなく表情や仕草、周囲の環境や人の数までを把握することが可能です。

 さらにaiboは(電源が入っている限り)自分の足で部屋中を動き回れるわけですから、(「愛犬」の目や耳を通じて)クラウドに蓄積される飼い主や住居のそれこそ多様な情報から、本人さえ気づかない習慣や人に知られたくない嗜好までが白日の下にさらされてしまう危険性もあるということです。

 IoTの最も危険な部分は、消費者のデータがどのような経路で集められどのように利用されているかがわからないことにあります。本人がそれと気付かないうちに、少しずつ個人情報がさらけ出されてしまっている可能性は決して低くはありません。

 そういう意味では、IoTによって収集されたデータをどのように利用するかについての企業の透明性の向上は急を要する課題です。

 業界の自主規制に頼るばかりでなく、政府などの公的機関によるガイドラインを設け、各企業がデータを収集する前に消費者から十分な情報提供に基づいた同意を得なければならないようにすることが強く求められていると考える所以です。


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